【幻想物語 第7章 第11話】 | 毎日きびきび

毎日きびきび

遂に大学生。
気を引き締めていきたいですね。

これまで出会えた全ての人に感謝を。
これから出会っていくであろう全ての人に感謝を。

ラストバトル、開戦・・・!!


人間VS神官、運命の最終決戦!!





覚醒のイディンVS死皇帝タナトス。



遂にパルドの力をモノにしたイディン。

劉角宝剣(ヴルピラ・オブ・パルド)、それが、イディンの、パルドの、チカラ。


大槌のディーガ、杖のマリア、鎌のタナトス。

フルートのアスカ、両手剣のバレット。



残るは、ライナ、アポロン、そして・・・。





幻想物語


第7章 第11


-雷帝、駆ける。死神、舞う-



辺りには、一瞬の沈黙と、刹那の嵐が吹き荒れていた。

遂に力を手に入れた、イディン。


意味深なセリフをイディンに残し、力を託した、パルド。

その心情が如何なるものか、イディンには窺い知ることができなかった。


だが、そんな些細なこと、今は関係ない。


ガイアを、流星を、アスカを、バレットを、そしてマリアを。

仲間を傷つけたタナトスに向けて、彼は叫んだ。



  ヴルピラ・オブ・パルド

「劉角宝剣!!」


と。


一瞬遅れた暴風が、タナトスを襲う。



圧倒的なまでに猛威を振るう、イディンの魔力(ディーガ)。


にもかかわらず、それらはガイアと流星を襲ってはいない。


それはイディンの優しさか、はたまた偶然か。

イディン以外それを知る者はいない。



魔力(ディーガ)の圧殺を受けてか、彼が感じるはずもない恐怖を覚えてか、タナトスは後方へと飛び退いた。



その距離、イディンの目測で70m。



暴風冷めやらぬ中、彼はタナトスへ声を投げかける。

冷静で、落ち着いた声で、ゆっくりと。


「今、逃げたね?」


そう、問いかけた。




「あァ?」



タナトスが負けじと反論の意志を示す。

逃げの意志がないと、はっきりと、短い言葉で、表してみせた。


「『恐怖なき者は死す者。怯えなき者は泣きし者。無謀な者は、弱き者。怖じることは恥ではない。時として、強者に対して恐怖することが必要だ』。ボクは、昔そう教わった。今の君の判断は懸命だよ、タナトス。自らが、得体の知れない者に恐怖する。生き物としては、強者としては、至極当然さ。けど、それを考慮して尚、ボクの方が、強い」



そのセリフは、遠回しに、そして真っすぐに、タナトスを嘲笑っていた。

若干13歳の発するセリフではない。

恐ろしいほど大人びている。

しかし、このギャップ故、イディンは今まで“友”と言うべき存在がなかったのかもしれない。


常人より遥かな高みから見下す、イディン。


同時に、自身からすれば生まれて間もない若造に、ここまで言われてタナトスが黙っているはずがない。



「随分なもの言いだな、餓鬼。んなに言うなら、さっさと姿を見せろよ。俺に勝てるって言うなら、今すぐ俺と刃を交えろ、クソ餓鬼ッ!!!!!」


頭に血を上らせ、激情する。



「『刃を交える』?悪いけど、君の希望には答えられそうにないよ。だってボクの『宝剣』は・・・」


直後、吹き荒れていた嵐がピタリと止み、その中からイディンが、姿を現した。



その姿態は、アスカの、バレットの、マリアの、ディーガの、タナトスの、“それ”とは違った姿をしている。




右手に握られた、西洋風の、手首までをすっぽり覆う、純白の槍。

両手から、両肘までを、がっしりと護る、荘厳で黄金の、鎧。


両耳から、口を完全に覆い隠す、これまた黄金の、仮面。


そして何より、髪色の変化。薄黄色だった“それ”は、鎧と仮面と同じ、黄金へと変化を遂げていた。


それに心なしか、目の色も、黄金へ近づいているように、見える。




「・・・無限に進化するんだから」







「なっ・・・」

「あれが、イディン君・・・・・・?」




ガイアと流星は、ほぼ同時に言葉を失った。



今の今まで― それこそ、タナトスへ挑む際も―、イディンは子供だと思っていた。


18歳(流星は17歳だが)の彼らからすれば、5歳も年下の彼は、最早、同じ戦士ではなく、“護るべき弟”だった。


とてもではないが、最前線で戦わせるわけにはいかない。

だからこそ、ガイアやライナが、常に前を歩んでいたのだ。



しかし、今やイディンは“護られるべき少年”ではない。


彼の顔つきは、“少年”から一人の“大人”になっていた。





「おもしれぇ・・・!!俺のチカラの前で、テメェは朽ち殺す!!!」


「あまり『殺す』なんて連呼しないでよね。“弱く見える”からさ」


黄金色に輝く髪が、僅かに揺れる―――。



2人が飛び出したのは、刹那の出来事だった。



一瞬の内に、互いの距離はゼロになる。


といえど、イディンの槍は、リーチにして1m以上あり、正確な意味での“ゼロ”ではない。



目に止まらぬ槍撃が、タナトスへと飛ぶ。


タナトスもこれに応じ、瞬時に鎌の刃を合わせる。


槍と鎌。


相性的には、双方ともに最悪の武器に違いない。


刃が大きく湾曲している鎌と、相手との接触面が小さい槍。



防御する側にとって、これほどやり辛い相手はいないだろう。


だがしかし、そんなハンデなど最初からなかったかのように、2人は互いを攻撃し続ける。


突き、突き、突き上げる。


切り裂き、切り上げ、断ち切る。


烈火の如き、乱舞の嵐が、一瞬のうちに吹き荒れる。



2人は最早、お互いしか見えていない。



如何なる傷を負おうとも、ただただ己の宝剣を振るい続ける。



「いいぜいいぜ!!最高だ、クソ餓鬼!!だが、もっとだ!!もっともっと、俺を楽しませろ!!」


至上の笑みを浮かべ、漆黒の鎌を振るう。



ギャイン!!


一際大きく、衝突音がこだまする。



その次の瞬間だった。




陶器を砕くような音が、火花に混じり、ガイア達の間を駆け巡る。



“パリン”とも“パーン”とも違った、妙な音だ。



その音の発生元は、劉角宝剣(ヴルピラ・オブ・パルド)・・・。



堕骨宝剣(リリール・オブ・タナトス)との接触箇所から、イディンの宝剣が、崩れゆく・・・。


光の粒子となって、イディンの手にしたチカラが、無惨にも、散りゆく。





「クハハハハハ!!!!!無様だな、クソ餓鬼!!やっとの思いで手にしたチカラも、俺の前じゃただの塵だ!!!」


狂乱の声を上げ、鬼の如き形相で、せせら笑う。



この弱者め、と。


だが、砕け散った槍を眺めるイディンの表情には、驚きや、悔しさは現れない。

そこにあるのは、タナトスを見下す、憐れみの感情。


眉の端を下げ、目を細めた、悲しげな表情。



「幸せ者だね、タナトス・・・。“たかがこの程度”でボクの宝剣を潰した気でいるなんてさ・・・」




「あァ!?何言って――」

負け惜しみなんざほざいてんじゃねぇ!!!


恐らく彼は、そのようなことを言おうとしたのだろう。


しかし、彼は、自分でその口を閉じた。


否、閉じざるをえなかった。



目の前で、にわかには信じられない出来事が起こっていたのだから・・・。



砕け、塵となったはずの、劉角宝剣(ヴルピラ・オブ・パルド)。


光の粒となって宙を舞っていた、彼の剣。



その粒子が、凄まじい勢いでイディンの体の周りを渦巻いているのだ。


その勢い、まさしく竜巻。



フォオオオオオオオォォォォォォオォオォ。



静かに咆哮を上げる、宝剣だったモノ。



「なんだ・・・それは・・・・・・!?」

当然タナトスは、驚きの色を隠せない。


震える声を絞り出すタナトスに対し、イディンは、至極当然のように答える。


「これかい?決まってるだろ?劉角宝剣(ヴルピラ・オブ・パルド)だよ」



「ハッ!とんだ茶番だな!そんな砂粒の集まりみてぇなのが宝剣だと!?笑わせんじゃねぇよ」



「茶番かどうか、自分の目で確かめれば?」




直後、光の粒子達が、動いた。


ちょうど中央で二分され、それぞれが、イディンの腕に収束される。


粒子が回転し、あっという間にイディンの両腕は見えなくなった。


光に満ちる両腕。


「さぁ、その目で存分に確かめてよ」




そして、その光がようやく収まったとき、腕を覆っていた装甲は、全く違った変化を遂げていた。





各指を覆い、伸びる爪。

一撃の威力を上げるため、分厚くなった手甲。

黒色の紋様が刻まれた、黄金色の、腕甲。

肩をがっしりと包み、そこから突き出る、太い角。



先程の、槍の付属品として出現したモノとは、まるで違う。



それこそ、接近戦での超速戦闘のみに特化された装甲。



「これで分かった?ボクの宝剣の、チカラをさ」



その光景を見ていたガイアと流星だったが、まるで見当がつかない。



今までの宝剣は、全て固定化された姿をしていた。


ディーガは大槌、マリアは杖、タナトスは鎌、バレットは両手剣、アスカはフルート、といった具合に。



だが、その定義が、イディンには通じない。


最初は、槍。



だが今は、腕を覆う、鎧。




「さぁ、いくよ―――!!」



瞬間、速力が、跳ね上がった。



体感速度だとか、瞬間速度だとか、超加速だとか、そんな次元の話ではない。



それこそ、“消えた”のだ。タナトスの、目の前から、いきなり。



ワープか何かと錯覚するが、そんな“非現実的なこと”が、この世で起きるはずがない。


紛れもなく、イディンは、他の人間が行うように、移動しただけなのだ。




刹那、タナトスは、自身の集中力の問題かと、考えを張り巡らせた。


だがしかし、それがすぐに徒労だということに気付く。


あれこれ難しく数式を考えた挙句、それが単純な問題であった時のように、タナトスは、一種の落胆に襲われた。

『あァ、なんだ。そういうことか』と。




種も、仕掛けも、何もない。



ただ単に、イディンの自力が跳ね上がったに過ぎない。



一瞬の内に、イディンは、タナトスの眼前に現れた。

――否、移動した。


そのあまりに瞬間の出来事に、タナトスは、最初の挙動が僅かに遅れた。

しかし、その“僅か”は、今のイディンにとっては巨大な隙でしかない。



ゴッ。



肌の感触が、装甲越しにイディンに伝わってくる。


即座に、その腕を、振り切る。


一瞬のうちに、タナトスは、遥か後方へと吹き飛ばされた。




人間が、死淵神タナトスへ加えた、最初の、巨大な一撃。


顔面へとヒットした腕は、まだヒリヒリと熱を持っている。




「がっ・・・くそっ・・・!!」


彼の口から、ぽたぽたと流れ落ちる、赤い液体。


腫れた頬に、痺れるような痛みが走る。



下等種人間に負わされた、大きな傷。


それは体だけでなく、彼のプライドも大きく傷つけた。



「人間風情がぁ・・・!!てめぇらはどれだけ俺達神人(カミビト)を愚弄する気だ・・・!!!?」



「神人(カミビト)?知らないね、“そんな奴”。ボク達はただ、大切な人を守りたいだけだ!!!!」

決意を叫びに変えたイディンの体から、夥しい魔力(ディーガ)が噴き出る。


バチバチと雷鳴を輝かせ、ゴロゴロと雷雲を巻き起こす。


『イディン』と戦ったときよりも、遥かに力が増している。


努力だとか、才能だとか、単純な言葉では表せない。


異常、それがもっとも適する語だ。


僅か3ヶ月の努力では、ここまでの力の上昇はあり得ない。

いくら才能があろうとも、ここまでの力の上昇はあり得ない。


“人智を超えた”力以外の何物でもない。



「さぁ、タナトス、終焉だよ―――!!!」



再び超速で移動するのかと思いきや、イディンはその場で力を溜める。



直後、タナトスとの乱打の応酬でボロボロになった手甲が崩れ、再び光の粒子となった。



「な・・・に・・・・・・!?」

目を見開き、自身の正気を疑う。


だが、肉体も、精神も、至って普通だ。



イディンは、なおも進化を続ける。




光の粒子は、その数を増大させながら、イディンの姿を覆い隠す。



荒れていた呼吸を整え、タナトスは宙を蹴った。


何度も何度も、隙を見せる彼ではない。



堕骨宝剣(リリール・オブ・タナトス)を構え、怒号を飛ばす。



「ああああァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!」



光の中へ、鎌を切っ先を滑り込ませ、一気に振り抜く。



ザシュッ。


キャベツを切るような、快音が響く。



手応えは、あった。



だが、そこにいつもの笑みは生まれない。



あるのは、疑念の意志のみ――。



粒子の切れ目から、イディンの声が漏れ出す。


「無駄さ、タナトス。もうボクに、君の剣は届かない・・・!!」




粒子が収束し、イディンの体に纏われる。



そして再び、タナトスの前に姿を現した。




その姿は、またも先ほどと違った姿をしていた。



腕、胸、腰、脚、頭。


つまり、全身を覆う甲冑の形で、劉角宝剣(ヴルピラ・オブ・パルド)は進化を遂げたのだ。


胸の中央にはエメラルドに輝く宝石が埋まり、神々しい光を発している。


黄金色の鎧は、イディンを守り、同時に、タナトスへ威圧感を与えていた。



両肩から飛び出した角、額から後方へ伸びる一対の角。


そして、左腕に握られた、槍。


先ほどよりも重量と大きさが増し、荘厳さが光っている。

黄金色はより強くなり、黒き紋様はその濃さが増している。



「なんだ・・・それは・・・!?」

タナトスは、震える声でイディンに問いかけ、彼を凝視する。


「これかい?これが、“現時点での”劉角宝剣(ヴルピラ・オブ・パルド)の最強の姿さ。その名は・・・」



イディンは、そこで敢えて言葉を切った。


そしてすぐに、その続きを紡ぐ。


   ヴルピラ・アルガドーネ

「劉角・神皇」



「悪いけど、勝たせてもらうよ」


脚甲がギシッと鳴り、イディンの姿が、消えた。



「な・・・めるなッ!!!!!」


堕骨宝剣(リリール・オブ・タナトス)を握る手から、怯えが、消えた。


それとほぼ同時に、宙を蹴る。

タナトスの姿が、消えた。



「えっ・・・?」

「消え・・・た・・・・・・?」


ガイアと流星はほぼ同時に驚嘆の声を上げた。

いや、むしろ、上げざるをえなかった。



それもそのはずだ。

今の今まで目の前で戦っていた二人が、双方とも姿を消したのだから。



その眼で、必死になって2人の位置を探す。


だが、それは徒労でしかなく、2人の姿はどこにも見られない。




しかし、次の瞬間、ガイアは全てを理解した。


目の前の至る場所で飛び散る火花によって――。




ギャイン。




バチッ。




ドゴッ。



闇に閉ざされた宇宙空間に、いくつもの音が響き、火花が散る。



だが、2人の姿は、いっこうに見つからない。



要は、こういうことだ。


2人は、誰の目にも止まらぬ超々速度で乱打を繰り返している。



時速300㎞で走る新幹線は余裕で目で追えるが、2人は、違う。


それ以上の速度で、戦っているのだ。



天才ガイアでさえ、踏み入ることができない領域で――――。



「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

「ああああああァァァァァァァ!!!!!!」


一瞬のうちに、いくつもの箇所で火花と衝突音が鳴る。


「す、すごい・・・」



それしか、口から出てこない。



ただただ、成り行きを見守るしか、ガイアにはできない。




そうこうしているうちに、突如、音が止んだ。



その直後、ガイアはようやっと2人の姿を視界の中に収めることができた。




肩を僅かに上下させ、傷付いた鎧を纏う、イディン。

ところどころに穴が開いた黒衣を纏う、タナトス。



既に2人の精神力は、極限の域にまで達していた。




「やるね・・・タナトス・・・」


「テメェもな、“イディン・ウルス”・・・」


そのセリフに、誰よりもタナトスが一番驚いていた。


見下していた人間の名を呼ぶことなど、あり得るはずがなかった。



どういう心境の変化が、彼の中で起こったのだろうか。


イディンを同格と認めたのか、はたまた何か別の要因か。


タナトスですら、それは分からない。




「なら、次で終わりだ・・・!!」




  ファイズ・サンディライザー

「雷雷雷雷雷・・・」




イディンの体から、5本の稲妻が迸り(ほとばしり)、回転しながら宙を舞う。




「・・・」



そして、それらの稲妻は回転しながらゆっくりと、イディンの体に憑依した。




イディンの、黄金色の鎧が、青白い光を放つ―――。



「これは、本来なら攻撃用の魔法だ。けど、雷属性だけは、応用が可能なんだ。一時的に肉体を媒介にすることで、本来の力以上の力を引き出せる―――!!!」



鎧全体を包んでいた青白い雷光は、いつの間にか、イディンの左手に握られた槍へと移動していた。



バチバチバチ!!!!!!



爆ぜんばかりの雷光が、槍全体から溢れ出す。



「おもしれぇ!!決着といこうじゃねぇか、イディン!!!」


  ラギアルド・グレイン

「終焉ノ礫!!!」


堕骨宝剣(リリール・オブ・タナトス)が、どす黒く瞬く。



イディンと同じく、物体強化魔法。



断ち切り裂いたものを更に裁断する、惨殺魔法。



ランクは不明だが、恐らく9か10。




2人の声が、一つになる――――。



(ぜ)!!!ァ!!!!!!」




ドン!!!!!












刹那、無音の時が、流れた―――。












ぐっ・・・・ガハッ!!!!




口から血が溢れ、ゴボゴボと滝のように流れ落ちる。


胸の傷からも同じ液体が溢れ出し、止まらない。



意識が薄れ、感覚が鈍り、視界がぼやける・・・。



体中が、迫る死の瞬間を、明確に暗示していた。











無情にも崩れ落ちたのは・・・


















「くそったれ・・・!!人間・・・如きに、この・・・・・・俺がっ・・・!!」




タナトス。




「ありがとう、タナトス。君のおかげで、ボクはまた一つ進化できた」


劉角・神皇(ヴルピラ・アルガドーネ)を解除したイディンが、フッと、微笑を零した。



そこに立つのは、いつもと変わらない、イディンの姿。





絶望的な状況の中で、光明の道を見つけたイディンが勝ち取った、確かな勝利。



それが、彼の手の中に、確かにあった・・・。





「あ・・・あァ・・・。オ・・・レも・・・久々にゾク・・・ゾクした・・・



言葉が、途切れ途切れになる。


最期の時が、着実に近づいているのだ。



死神に近寄る、死の瞬間。



死神の、最期。




「ま、マリ・・ア・・・」


薄れゆく意識の中、タナトスは、懸命に言葉を紡ぐ。



「・・・何・・・?」


崩心ノ闇(リティアル・ダルグ)の呪縛から放たれたマリアが、それに応じる。




「お前・・・・・・いい“仲間”に・・・出逢っ・・・た・・・・・・な・・・」


「えぇ。私は、アポロン様を、止めるわ」



「あぁ。“任・・・せた”ぜ・・・マリ・・・ア・・・」


「分かってるわよ、そんなこと」




「俺も・・・もう少し・・・早く・・・・・・イディン・・・・みたいな仲間ァ・・・欲しかったなァ・・・」





笑みを浮かべ、涙を流し、タナトスは、散った・・・。




最後の最後で、“何か”を掴んだ、死神―――いや、タナトス。




その笑みには、その涙には、一体、どんな想いが込められていたのだろうか。






それは、誰にも、分からない。








第7章  第11話   完





・・・終結です。



VS神官戦、これにて完全終幕!!




次号、遂に舞い降りる、絶対の神。



ライナは、その存在に、どう立ち向かうのか。



乞うご期待です。




~次回予告~


遂にベールを脱ぐ、太陽神。


創造主、アポロンのチカラとは、一体・・・?


相見える、ライナと、アポロン。



第1部終結戦、開幕・・・!!



第7章第12話

-アポロン-





「得られる喜びが大きいほど、失う悲しみは計り知れない。登る崖の高さに応じて、負う傷が変わるように・・・」




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