春うららの日曜日
桜はもう散ってしまったけど
去年、熊本に一緒に行った
従兄弟や叔母たち8人で
久万高原町まで
お花見名目で蕎麦を食べに行った
熊本には行けなかったけど
今回は夫も参加できた
外は汗ばむ陽気でも
中に入るとひんやりと涼しい
築100年の古民家
配膳はご近所のおじさん達
暖炉の前でコーヒー飲みながら
ゆる〜くお手伝いしている
ピック病の従兄弟は
相変わらず同じ話ばかり繰り返す(笑)
この日私は
ランチの後
76歳になるこの従兄弟と
キャッチボールをしてあげて欲しいと
夫に頼んでいた
夫は
息子からグローブを借りて
自分のグローブと硬式ボールを持って
久万高原に向かった
正直
歩くのが精一杯の従兄弟に
キャッチボールは無理かもしれないと
思っていた
それでも
かつての甲子園球児だ
50年ぶりにグローブをはめて
硬球を手にしたら
気持ちだけでもワクワクするんじゃないか
そうなればいいなぁと
期待して準備した
蕎麦食べながら
後でキャッチボールしようと誘ったら
嬉しくて泣いてしまった
そして
蕎麦屋を出て15分ほどの
スキー場の駐車場で
女子6人に“やいのやいの”と野次られて
キャッチボールは始まった
最初2〜3球取り損なった従兄弟に
「○○腰が高い‼️」と
私は監督のように活を入れた(笑)
すると
「はい!」とすぐに体は反応して
この姿勢
これはキャッチボールではなく
ノックを受ける姿勢だと思うけど
ま、ええか
大きな声で名前を呼ばれて
カツを入れられて
一瞬で
高校生に戻った
この単純さが可愛くもある
彼は今甲子園の
サードの守備についているのだ(笑)
時々
『四番サード○○君〜〜』と
ウグイス嬢のアナウンスまで入る
少し慣れてきたら
少々の球なら落とすこともなく
グラブさばきで対応しているし
返球には
ステップまで踏んでいる
そう、体が覚えていて
勝手に反応しているのだ
10分ほど続いたので
私は夫に
「ゴロを投げて」と言ったけど
さすがに夫に拒否られた
怪我をさせてはいけない
時間にして15分〜20分だけど
おおいに盛り上がった
脳も体も不思議だなぁと
しみじみと感じた
キャッチボールに誘っただけで
顔はイキイキと明るくなり
体も見違えるように動く
誰にでもある“昔とった杵づか”は
元気スイッチだ
次は秋
バッティングセンターに
行く約束をして別れた
そして昨夜
従兄弟の奥さん(75歳)から電話が入った
去年皆んなで熊本に行った後から
人が変わったように
穏やかになったと言う
ピック病や鬱、パニックの発作など
ひとりで抱えるには荷が重い従兄弟との暮らし
今回も
私たち姉妹や叔母たちと
過ごしたことで
ご機嫌さんになり
穏やかな日が続いていて
キャッチボールが楽しかったと
耳タコらしい(笑)
時々こんな時間を作って欲しいと言われた
もちのロンだよお安い御用だ
そして私には
いつも優しくて明るいところは
死んだ父にそっくりだと
何度も何度も褒めてくれた
優しくはないけど
明るいのは事実かもしれない
それしか取り柄はない
笑えない日が多いけど
私達と会うとゲラゲラ笑ってしまう
そう言ってくれた
私が小学生の時に
嫁いで来た
優しくてきれいだったお姉さんは
50年経って
色んなことを語り合える
大人の関係になった
父が亡くなって36年も経つのに
こうして父方の親戚と
旅行に行ったり
食事に行ったりできるのは
父が繋いでくれている気がする
私も元気スイッチを探そう
そんなことを考えた
春の一日だった