~ファイナルファンタジーⅩⅣ(FFⅩⅣ)~
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『小説-FFⅩⅣ(ナルシャ編)』・設定。
ナルシャ視点
お姉ちゃんはすっかり元気になっていた。
そして、交渉の結果帝国から正式に異界ヴォイドからの脅威を打ち破るよう、第二位妖魔討伐依頼が来たみたい。
その上…。
「初めまして、ブレイド様。お目にかかれて光栄です。」
「こ、光栄です、ブレイド様!」
お姉ちゃんに頭を下げる二人の帝国兵。
長身で巨大な剣を背中に収めている女性はイーテナ。
もう一人は新米軍人の少女、ミーン。
ゼンの目論見通り、彼女達を始めとした黒衣森の帝国兵が協力してくれることに。
「畏まらなくていいわ。敬語も不要よ。」
「…わかった。」
凄く強そうな軍人に頭を下げさせた…って、お姉ちゃんって本当にどれだけ偉い立場なの…?
「協力内容は予めお伝えした通りよ。」
「承知。普通ではない妖魔を見かけ次第連絡する。また、妖魔討伐が実行される時は声をかけてくれ。私とミーンが力になる。…実戦経験が浅いが、実力は私が保証する。」
「が、頑張ります!」
「ありがとう。助かるわ。」
イーテナって人強そうだもんね。
どうやら光の戦士達と引き分けたみたいだし。
…もしかして、ゼンやお姉ちゃんよりも強いのかも?
イーテナ達と別れ、グリダニアに戻ってきた私達。
「馬鹿じゃないの!?」
お姉ちゃんの提案に対し、思わず叫んでしまった。
だって、その内容が…。
「グリダニアの長に帝国のヴォイド調査について容認してもらうなんて無理!絶対に無理だよ!」
「無断で行動するよりはいいと思うわ。」
「でも、そんなの自殺行為だよ!」
私達は帝国人。
敵国の人間が領地内にいることを許してくれるわけが無いと思う。
「それでも、よ。」
お姉ちゃんは笑む。
その表情を見て…何も答えられなかった。
グリダニアの長…カヌ・エ・センナは忙しい身だと聞いていた。
だから、まさか会うと決めたその日に謁見出来るとは思っていなかった。
「お初にお目にかかります、カヌ・エ・センナ様。」
右手に白の杖を持つ女性…カヌ・エ・センナに頭を下げるお姉ちゃん。
お姉ちゃんの傍らにはゼンと戦ったあの光の戦士の二人もいた。
「頭をお上げください。」
「はい。」
頭を上げるお姉ちゃん。
その表情には焦り等は見えなかった。
堂々していた。
武器も没収されてるのに。
「話は大方聞きました。ゼン、あなたが不死の妖魔を退治しているのですね。身に宿る妖魔の力を以て。」
「はい。妖異十二階位…その第二位に当たるであろう妖魔、アーファ撃破に向けて活動しています。」
「突如として現れた不死の妖魔はグリダニアにとって大きな問題でした。あなたがいなければ今頃多大な犠牲者が生まれていたことでしょう。感謝しております。」
「勿体無き御言葉です。」
一礼するゼン。
何となく私も頭を下げた。
「…ブレイド、あなたは帝国の者でありながら何故グリダニアの問題を解決しようと考えているのでしょうか?」
「無論、世界の為です。不死身の妖魔が世界中に広まれば世界の終わりです。そう、これはグリダニアだけの問題ではありません。…確かに私達帝国はあなた方から見れば敵であることに違いはありません。ですが、今回の問題の前にそんなことはとても小さく…言葉が悪いですが、下らないことであると考えています。…あなた様が不審に思うのは当然のことでしょう。帝国が不死身の妖魔を利用しようとしているのではないか、そう危惧しているのではないでしょうか?」
「…その通りです。私達はあなた方帝国から民を護る為であれば今ここであなたと…そちらにいるナルシャという少女の命を頂くことも躊躇致しません。」
…えぇっ!?
帝国人ってばれてる!?
「私の命は捧げましょう。ですが、あなた様の慈悲を以て私の願いを二つ聞いていただきたいのです。一つ、ナルシャは民間人であり、軍人ではありません。見逃してください。二つ、帝国の調査に協力して欲しい、までとは望みませんが、黙認していただきたいのです。必要であれば監視を付けていただいて構いません。」
お姉ちゃん、何を言って…!?
「…再度お聞きします。何故、命を捧げてまで今回の件に関わろうとするのですか?」
「私一人の命と世界の存亡…私にとっては死ぬのが早いか遅いかの違いしかありません。ならば、より有効的に使用した方がいいでしょう?」
「死を恐れないのですか?」
「ナルシャを失うことの方が怖い。」
お姉ちゃんのその発言で場が妙な雰囲気に包まれた。
ゼンは私を見てにやにやしてるし。
「カヌ・エ・センナ様、彼女は帝国内でも屈指の実力者です。彼女の願いを聞いたとしても、その命を奪えるのであれば安い代償かと。」
「代償?グリダニアに代償なんて無いようなものでは?」
双蛇党の人にゼンが食いかかった。
提案した男性に睨まれたゼン。
でも、彼女は不敵に笑んだだけ。
「…最後にお聞かせください。私を試しているおつもりでしょうが、何の為ですか?」
「私の命を授けるに値するか否か。」
「恐ろしい若者ですね。」
センナは一度、大きく溜め息を吐いた。
「答えましょう。双蛇党は帝国軍の調査に協力、及び監視致します。また、ブレイド及びナルシャに対する処分は保留に致します。しかし、ブレイドは命を賭して妖魔討伐に望みなさい。これは義務であり、あなた自らの意思で放棄するのであれば…ナルシャを処刑致します。心に留めておいてください」
…あれ?
つまりこれって…。
「あなた様の心遣い、心より感謝致します。」
一礼するお姉ちゃん。
凄い、幻術皇との交渉に勝った…!?
「…申し訳ございません。先程最後と言いましたが、もう一つ質問をよろしいでしょうか?」
「何でしょう?」
「以前、私達はお会いしたことがありませんでしょうか?」
幻術皇とお姉ちゃんが…?
「流石はカヌ・エ・センナ様ですね。初と言いましたが、かつて私はあなた様に命を救われました。」
「よく覚えております。女性でありながらブレイドと名付けられた帝国の少女。十歳でありながら一人で蛮神ガルーダを討滅したことは非常に驚かされました。…そんなあなたが大きくなって…本当に立派になって…。」
幻術皇はお姉ちゃんに近付き…抱き締めた。
「…私達は敵国同士。この様な形でしか恩返し出来ないことをお許しください。」
「あなたの元気な姿を見られた…それだけでも充分です。」
命の恩人との再会…。
やばい…何かうるっと…。
「って、ちょっと待って!お姉ちゃん、死にかけたってどういうこと!?」
「…力を持つ者だからこその宿命…いえ、呪いにも等しいのかもしれません。」
幻術皇はお姉ちゃんから離れ、私を見た。
「彼女には才能があり、超える力まであるのです。帝国にとって若くとも大変利用価値のある人材…いえ、兵器なのかもしれません。」
兵器…対蛮神用の兵器…?
「その上、人質がいる為扱い易いのでしょう。」
「…人質…?」
「…あなたです、ナルシャさん。」
!?
「…私…。」
「任務に失敗すればあなたの命が危うい。だから必ず任務を成功させる。そして、あなたとの将来を想うからこそ必ず生き延びて戻ってくる…少女の恋心を利用した極めて卑劣な行為です。そうでなければ…十歳の少女が命を落としかけてまで蛮神討滅などしないでしょう。」
「…ば、馬鹿じゃないの!私なんかの命で死にかけるなんて!」
「それだけあなたのことが大切なのです。」
「私は頼んでない!私のせいでお姉ちゃんが死ぬなんて頼んでない!」
「…そうね。だから、ナルシャは気にしなくていいのよ。全て私が勝手に行っていることなのだから。ナルシャがいてもいなくても上のお偉い様方は私を動かす方法を考えるわ。」
お姉ちゃんは私の目の前まで来た。
「っ…だったら、私のことを好きだなんて言わないでよ!何で…私を巻き込んだの!?勝手に巻き込まないでよ!」
「ナルシャさん、ブレイドは…。」
「いいんです。」
お姉ちゃんは私を抱き締めた。
「…お姉ちゃんが死ぬなんて耐えられないよ…。簡単に…死ぬだなんて言わないでよ…。」
私、泣いてる…?
「…わかったわ。命を軽率に扱わないようにするから。約束する。私は絶対にナルシャの元へ戻ってくるって。」
優しく囁くお姉ちゃん。
でも、私は泣き止むことが出来なかった。
宿屋に戻ってきた私達。
その頃には私も落ち着いていた。
泣いた理由は自分でもよくわからなかった。
「交渉は上手くいった。全部想定通りか?」
「いえ、想定外よ。命を渡すつもりだったのだから。…ナルシャに罵倒されたのが一番の想定外。私のこと、嫌いなのでしょう?」
「…本当に嫌いだと思ってるの?」
嫌なところも無いことも無いけど、大切な人なのは間違い無かった。
…ゼンがにやにやしているのが腹立つ。
「…私が人質だったんだよね?じゃあ、私がここにいるなら帝国から逃げられるんじゃない?」
「無理よ。次は私達の家族の命が危ないわ。」
あ、そっか…。
帝国は私達の国。
でも、擁護出来ないぐらい酷い国だと思う。
「人質を取っている理由としてこうも考えられる。強き力は自分達にとっても脅威であると。『ブレードダンサー』が叛逆でもすれば付いて来る人間は少なくはないだろう。」
「…勘違いしないで。私は帝国を嫌ってなどいない。素敵な国なのよ。…その国を一部の権力者が歪めてしまっているわ。それは許せないことよ。」
そう言ったお姉ちゃんを何だか冷たいと感じ、恐怖からか鳥肌が立った。
「私は帝国人ではないし、帝国のことはよくわからないが…悪党退治であれば力を貸そう。その時が来たら呼んでくれ。」
「ありがとう、ゼン。あなたの協力を得られるのはとても心強いわ。」
ゼンは戦闘狂だから戦ってみたいだけなんだろうけど。
「お姉ちゃん、私は何かの役に立てる?」
戦闘に関して私は足手纏いに等しいと思う。
「出来ればナルシャには戦って欲しくはないわ。でもね、あなたの技術力は軍も狙っているとのことよ。ナルシャにはそれだけの実力があるようね。…私はナルシャを軍人なんかにはさせたくない。けれども…誰かの為に使うことが可能であれば能力を生かせるべきだと思う。出来れば…そう、私の為に使ってくれると嬉しい。」
お姉ちゃんの為…。
お姉ちゃんは強い。
でも、それは常に死と隣り合わせだったんだと思う。
先日、治療の際にお姉ちゃんの身体を見てよくわかった。
女の子なのに身体は傷だらけだった。
「…わかった。任せて!」
私も護られてばかりじゃダメだもんね。
私がお姉ちゃんを護ってあげないと。
双蛇党と帝国の対妖魔部隊が動き出して二週間。
アーファ因子に感染した妖魔は現れていない。
でも、わかったこともある。
「メルナがアーファと戦い、逃げ…痛っ!」
宿屋で会議中、ゼンを小突くメルナ。
アーファから逃げたつもりはないみたいなので禁句になってる。
「…こちらの世界に来た場所がここ。」
ゼンがグリダニアの地図に印を付ける。
黒衣森の一角。
「不死の妖魔達の出現位置はここ。」
いくつか印を付けていくゼン。
「メルナを囲むように出現しているように見える。つまり、メルナがアーファを狙っていると同様にメルナを狙っている可能性が高い。理由はメルナを喰らって力を得ることと…ただ単純に勝てなかったメルナを倒したいだけかもしれない。」
第一位の力が手に入るなら執着するのも納得。
「それと、謎の光の力の反応が残っていた。アーファの光だと考えている。また、この光は黒衣森中に点々として存在している。理由はわからないが不死の妖魔が出現した位置以外にも存在している為、何かしらの意味を持つと思う。」
謎の光、か…。
光が怖いと思うことなんて無いと思ってたけど、光は正義でも何でもない。
光が原因で滅んだ世界もあるんだから。
「私からも報告があるわ。グリダニア以外にはアーファの光や不死の妖魔の出現が一切無いとのことよ。」
「ってことはやっぱりメルナ狙い?」
「それもあるかもしれないけれども、グリダニアにしかヴォイドゲートを繋げられないのかもしれない。何が原因かはわからない。ヴォイドゲートに距離等という制約が存在するかはわからないけれど、もしかしたらアーファに最も近い場所がこちらの世界ではグリダニアなのかもしれないわね。」
「…じゃあ、ヴォイドゲート…もしくは似たような物を開くことが出来れば…?」
「アーファに会えるかもしれないわ。」
アーファ本体に会える…!
「ゲートなら妾が開こう。尤も、今はまだ力は戻っておらぬ。飛空挺の修理もまだだったはずよね?」
「うん。でも、もう少しだよ。」
パーツは全て完成して機体に組み込み済み。
後は最終チェックと試運転、修正が必要だと思う。
「手が空いたら一点、妾からお願いがある。」
メルナは真っ黒な石を取り出した。
光の反射が無い。
光を飲み込んでる石ってこと?
「この石は光を喰らう性質を持つヴォイドの石。この石を上手く役立たせる方法を考えて欲しい。」
「石を?」
石を渡された。
不思議な石だった。
見ているだけで吸い込まれてしまいそうな感覚。
「メルナ、ヴォイド産の石と言ったが、人間が持っても大丈夫なのか?」
「その実験も兼ねておる。」
慌てて石から手を離した。
手は…何ともなかった。
落としてしまった石も傷一つ無い。
「ちょっ、ちょっと!?」
「大丈夫。予め人間には影響が無い成分で構成されていることは確認済み。」
「…全く害が無いとは言い難いわね。」
お姉ちゃんは右手の人差し指で触れた。
同時に、じゅっ、と音が聞こえた。
「お、お姉ちゃん!?」
「どうやら、ハイデリンの加護を受けている者には扱うことが無理なようね。」
メルナがお姉ちゃんの指に回復魔法を施す。
「光の加護を受けた者には毒、か…。」
「メルナ、悪用しようとしてない?」
「光の戦士がヴォイド侵略を企てた時の対処法には利用する可能性はある。妾等も妾等を護る必要がある故に。尤も、ヴォイドでも稀少な石。利用するにも数が足りない。」
「でも、お姉ちゃんには使わないでよ?」
「無論。…しかし、汝よ。最近は随分と姉と慕う彼女と仲が良いように見える。」
えっ!?
「べ、別に元々仲悪いわけじゃないし…とにかく!これは没収!」
石を拾う。
光を喰らう石。
ハイデリンの祝福を受けた者に害を齎す石。
…悪用しようとしているのは私かもしれない。
この石があれば…帝国の敵であるエオルゼアの英雄も倒せるだろうから。
いずれ、お姉ちゃんの敵になるかもしれないならその時は…。
光喰らいの石は加工し、首飾りにした。
私とゼン、そしてお姉ちゃんの分。
でも、案の定…。
「この小ささでも効力は絶大ね…。」
お姉ちゃんが首飾りを身に付けた瞬間倒れた。
指一本動かせないみたい。
慌てて首飾りを外す。
「超越者であることが足枷、か…。生命力まで奪っていれば最早毒に等しい。」
「!?お、お姉ちゃん、大丈夫!?」
「大丈夫…と言いたいけれども、頭がくらくらするわ。」
「無理はしないで休んでて。」
お姉ちゃんをベッドまで誘導する。
「…何よ?」
ゼンはいい笑顔だった。
「仲が良いのは実に良いことだ。」
「う、煩い!」
この人は…!
私とお姉ちゃんをくっつけようとしてるのは何となくわかってるけど…からかわれているから何か嫌だった。
アーファの調査…結構進んでいるように思えてあまり進んでいない。
そんな中、調査結果の一つが今回の議題になった。
「グリダニアにはぐれ妖魔が増えている、か…。」
不死身の妖魔は出なくなった。
でも、妖魔の数自体は不死身の妖魔が発生する前と比べて十数倍になっていた。
昨日だけでも数体退治したらしい。
勿論、今までそこまでしっかりとした調査をしていなかっただけで、実際には増えていないのかもしれない。
でも、退治された多くの妖魔には共通点があった。
理性を持っているように見えず、凶暴だったと。
「やっぱり、アーファ因子?」
「不適合だったのか意図的なのかはわからないが可能性はある。一体捕らえることが出来、帝国の施設で調査中だ。」
「もし、アーファ因子だとしたら…やっぱり、アーファはメルナを諦めてないってこと?」
「それは好都合。妾を標的にしている間は逃げられることも無いだろうから。」
逆を言えば、メルナがグリダニアにいる限り、この森は妖魔に狙われ続けることになる。
「早く倒さないと、だよね。」
でも、まだ時間がかかるみたいアーファを倒すには異界ヴォイドに行かないといけない。
準備をしっかりしてからじゃないと全滅するだけ。
「…妾もそろそろか。」
メルナが呟いた。
そろそろって何だろう?
でも、もしかしたらもう決戦は近いのかもしれない。
そう思うと…緊張と不安を感じてしまった。
『少女と守護心』・終わり
後書き
準備編。
次回も準備編。
恐らく残り五話か六話になると思います。
その前に色々と整理とかもしたいところですけれども。