~ファンタシースターポータブル2(PSPo2)~
この二つを参照。
設定『魔法協会』。
『過去にいた魔法使い』。
もう数十年も昔の話。
魔法協会の歴史は古く、故に世界に貢献してきた者もいれば、その優秀な能力を悪用しようとした者もいた。
力ありし者は制する心が無ければ力に飲まれる。
自らが持つ力に溺れる者は魔法協会においても少なくは無かった。
かつて所属していたビーストの男でメルフという男がいた。
『戒律』と称され、才能と力に恵まれた男。
彼もまた、力によって道を違えた者である。
「…我を追放し、敵に回した愚考、思い知るがいい。」
魔法協会本部の建物を見上げるメルフと数名の者。
先でも述べた通り、メルフは優秀なフォースであった。
次期協会長を狙える程に。
しかし、彼には邪な考えがあった。
それは魔法協会を使い、世界を牛耳ること。
無謀なことにも聞こえるが、彼には確実な作戦と魔法協会にはその力があったのだろう。
事実、魔法協会には社会的にも強力な力を持つ者は少なくはない。
しかし、その野望は魔法協会に知られてしまい、彼は魔法協会を強制的に脱会させられてしまった。
以来、魔法協会に復讐しようと考えたのだろう。
また、魔法協会には強者も多い。
彼の野望の大きな障害にもなる程に強き者が。
計画を実行する前に排除する…そんな魂胆があったのだろう。
「いかにも悪役って感じの語りだね。つまんないよ。弱そうでつまんない。」
道を妨げるかのように協会の建物の前に立ち塞がったのは、ヒューマンとニューマンのハーフである一人の少女。
髪と瞳、全身の服装さえ黒一色。
誰もが嫌でも彼女が黒だという印象を付けられる。
「カルファーノ家の餓鬼か。死にに来たのか?」
少女はまだ幼い。
外見では十代半ばに見えるだろう。
「その台詞も赤点。もっと気の利いた表現は出来ないわけ?」
「必要の無いことだ。…女子とて排除させてもらう。」
一本のロッドを取り出したメルフ。
自作であり、自分専用のロッドである。
自身の実力を最大限に発揮する為に、自分にあったロッドを作る者は少なくはない。
自らの道の為ならば女子供の命を奪うことも厭わない…それがメルフという男である。
「正直、協会なんてどうでもいいんだよ。潰すならどうぞ御勝手に。ただね…。」
瞬間、少女の雰囲気が一転し、彼女の周囲にはどこからともなく溢れ出てきた闇が蠢く。
「何っ…!?」
メルフは異質な少女の気配に気圧され、無意識に数歩後退した。
常人であれば失神してもおかしくはないのかもしれない。
それ程不気味な闇。
「あんたが気に入らない。戦う理由なんてそれだけで充分。」
「気に入らぬとはまた随分と簡素な理由ではないか。」
「戦争の発端なんて皆そんなもん。あんたはね、悪役には適さない。悪役やるなら一人で攻め込んできて、一人で敵を全滅出来るぐらいじゃないと。あんたなんかじゃ、精々三、四人仕留めて終わりじゃないの?」
年上の男性を見下すように見、笑う少女。
「…悪を演ずるつもりなど端から無いが、我も貴様のことは嫌いだ。なる程、確かに戦う理由などこの程度で構わんか。」
一度は気圧されたメルフだが、落ち着きを取り戻した。
普段の彼はあまり同様する男ではない。
冷静を取り戻せば異質な存在が目の前にいようとも、もう乱れることは無いだろう。
「ちょっとはいい顔になったね。楽しませてくれなきゃ嫌だよ?」
少女は狂気に満ちた笑みを浮かべ、右手に白銀の短剣を持つ。
「『魔女の短剣』か。(天才…いや、鬼才にして問題児とされ、協会からも恐れられる理由がよくわかる。末恐ろしい子だ。早々に始末しておかねば後程大きな障害になるだろう。)」
部下に指示するメルフ。
彼の後ろに待機していた魔法使い達はその合図で一斉にテクニックを放った。
「邪魔。用無しは去って。」
少女はつまらなさそうに短剣を横に振るった。
テクニックが発動し、彼女の前方に発生した大きな闇の球体。
そして、部下達が放った全てのテクニック攻撃を喰らった。
「ラ・メギドなのか…?」
ラ・メギドは闇属性の上級テクニック。
少女の放ったテクニックは通常のそれと全く規模が違い、別のテクニックと言っても過言ではない。
「手下に戦わせるだけ時間の無駄じゃない?」
メルフが用意した部下は部下と言えどもそれぞれが非常に有能な魔法使い達。
魔法協会に所属し、彼を慕っている者達である。
「逃げるなら今のうち。痛い目に遭いたいなら刃向かってくればいいから。掛け金は…そうだね、両手両足。」
物騒なことを笑いながら言う。
「彼女の言葉は脅しではないだろう。去りたい者は去れ。責めはしない。」
部下達に提案したメルフ。
しかし、誰一人として逃げようとする者はいない。
「意外と慕われてるんだね。びっくり。」
「貴様とは違う。」
「だね。そもそも、仲間なんていらないんだけど。…とにかく、あれだね。自らの過ちを後悔しないとだよ。」
マレフ達に短剣の剣先を向けた少女。
同時に少女の周囲には強大な闇が渦巻く。
「餌の時間だよ、『万頭』。」
少女がそう呟いた直後…世界は一転した。
風景は変わり、見えるのは光無き闇だけ。
光の欠片さえ見ることは出来ない。
武器のフォトンの発光さえも。
「無詠唱で結界魔法だと…?」
何も見えない闇の世界。
「気配も上手く誤魔化している、か。小賢しい魔法だ。」
と、何かが潰れ、砕ける音が響く。
その直後に叫びのような悲鳴。
「言ったからね。掛け金は手足だからって。」
闇の中を響き渡る少女の狂った笑い声と魔法使い達の悲鳴。
悲鳴が次々と大きくなっていく。
「っ…狂人め…!」
「何?まともな人が相手だと思ってたの?それはお生憎様だね。この私が普通なわけないじゃん。」
「やはり、我の認識も甘かったようだ。」
ロッドを地面に突き刺し、メルフは何かの魔法を発動させる。
しかし…何も起こらない。
「残念。あんたの力、確か法を操るんだよね?物理とか何でも。凄い力だとは思うけど、所詮はその程度。私の前じゃ無力に等しい。」
メルフが編み出した特殊魔法は法を操るというもの。
非常に強力な魔法故、恐れていたフォースも少なくはない。
また、この魔法は彼しか使用が出来ないらしい。
「だが、語りは負けを生む。」
メルフは少女の声がした方向にロッドの先を向け、光属性のテクニックであるダム・グランツを放つ。
ロッドの先から一直線上に光が走り、周囲を照らしながら突き進む。
「この闇の中ではちっぽけな光。全く意味の無い光。」
光の先には少女の姿。
光はそのまま彼女を飲み込む。
しかし、それだけ。
光が弾け飛び、無傷な少女が姿を現した。
「…これは…。」
弾けた光の粒子が辺りを照らし出している。
闇に紛れ、存在していたのは何かの生物の頭。
存在しない生物達の頭である。
「見ちゃった?可哀想に。見なければもっと楽だったのに。結果は変わらないけれどね。」
「…ぐっ…!う、腕が…!」
メルフから何かが砕けた音がし、彼は悲鳴を上げた。
大の男が大声で叫ぶ…それ程の苦痛なのだろう。
「ファントムペイン…存在無き痛みに死ぬまで苦しむがいいわ。」
悲鳴の合唱が響き渡る中、一つだけ楽しそうな笑い声が闇の中を谺する。
結界魔法による闇が晴れ、顕わになったのは幼い少女と少女に見下ろされているフォース達。
全員倒れており、立とうとする者はいない。
正確には…立つことが出来ない。
彼らは全員、付け根から手足が無いのだから。
出血はしていないが傷跡から無理矢理引き千切られたことが容易に想像出来る。
少女が使用した結界魔法…『絶対領域/万頭』。
相手の力を封じ、闇に潜む何かにその対象の身体を餌として喰らわせる。
彼らの手足は喰い千切られた。
「っ…何故殺さぬ…!」
痛みを堪えながら、悪魔のような少女を睨み付けるメルフ。
万頭による傷は出血しない。
一瞬にして傷口だけは癒えるようになっている。
よって、手足を引き千切られたという大怪我をしたとしても出血死することも無い。
「私には犯罪者を裁く権利は無いから。だから、捕縛するだけ。…それに、死を与えるなんて生温い。死ぬよりも手足無くして自由を奪われ、強制的に生かされる方が辛くない?仮に殺してくれ、と言うなら私はこう言うよ。嫌だね、って。」
這い蹲るメルフの頭を踏み付け、高らかに嘲笑う。
外見こそは少女。
しかし、心は悪魔と称されてもおかしくはない。
良くも悪くも彼女はまだ子供だった。
子供だったからこそ精神は幼い。
幼いからこそ、残忍な行いにも無垢だった。
今の行為にも少しも罪悪感を感じていないのかもしれない。
この少女こそが生まれながらにして狂い壊れた、後の大魔法使い…Z.I.E.K.。
闇を自由自在に操れることから『闇』と呼ばれているが、魔法協会の『病み』という皮肉が入った名称なのらしい。
それから数十年後、不治の病にて死去。
そして、彼女の力や技術を二人の女性が名と共に引き継いだ。
しかし、彼女が引き起こしてしまった大事故…これの目的は誰一人としてわかっていない。
彼女は一体何を想って何をしようとしていたのだろうか…?
彼女亡き今、それを知る術も無い。
『狂気』・終わり
後書き
初代ケイズことZ.I.E.K.は狂った感じでいいんじゃない、と言うことは随分と昔から決まっていました。
…ほぼ、強制的に(笑)
香奈の小説にケイズ(黒きキャスト)が出た辺りから決まっていた設定ですからね~。
実際、今回は私だけで書いたわけでもなかったり…(^_^;)
Z.I.E.K.の特殊アビリティ『闇』
効果
威力十倍。
ダメージカンスト無視。
ガード不可。
対象が闇属性の場合、対象は無属性として扱う。
対象が光属性の場合、対象を強制的に戦闘不能にさせる。
全ての闇属性テクニックの状態異常に戦闘不能Lv.5付加。
全ての闇属性テクニックの範囲などの強化。
条件
闇属性テクニック使用時。
最早、何が何だか…(^_^;)
Z.I.E.K.の特殊アビリティ『闇』
効果
光属性テクニックを受ける時、ダメージを0にする。
闇属性テクニックを受ける時、その分回復する。
全状態異常無効。
常時ガード状態。
常時アーマー。
オートメギバース。
条件
常時発動。
敢えて同名。
Z.I.E.K.の特殊アビリティ『絶対領域/万頭』
効果
視界を何も見えなくする。
ロックオン不可。
全てのアビリティを無効化する。
全ての特殊テクニックを発動無効にする。
一定時間ごとに割合ダメージ(HPの1/4)を与える。
条件
任意発動。
Z.I.E.K.の絶対領域は見えません。
Z.I.E.K.の特殊武器『魔女の短剣(解放)』
詳細
特殊武器。
(右手用片手武器、左手に同時装備不可、ガード可能)
Z.I.E.K.しか解放出来ない。
闇テクニック二つのみセット可能。
法撃力0。
PA200%。
消費PP10%。
無詠唱発動可能。
闇属性50%固定。
闇属性強化。
強化不可。
闇属性テクニックの範囲拡大&ヒット箇所+10&状態異常Lv.5化。
味方にもテクニックが当たるようになる。