- 前ページ
- 次ページ
rainy canon
今日は降るな。そうこの鼻が確信しているにもかかわらずオレはここから動けない。早く動かしてほしいモノだ。また覗く顔がある。さびしげなにおいがする加齢臭だ。
「用がないならあっちいけ!」
するとどこからか走ってくる足音がする。
『わぁ犬だよー』
『可愛いねー』
年の頃はナっちゃんと同じくらいだろうか。ナっちゃんと言うのはオレの同居人でどこからかいつもオレのために飯を持ってきてくれる。オレの友達兼子分である。この小さい家に入れて連れて来た張本人でもある。
『なんて犬だろう』
『雑種じゃない?』
『そうだよねーじゃないと捨てないよねー』
二人で代わる代わる覗いてくる。
「誰でもいいから飯をくれ」
声をかけてみる。
『わぁ鳴いたよー』
『可愛いね』
ナっちゃんと違って飯はくれないようだ。
ポツリ
やっぱり降ってきた。
『わぁー雨だー』
『急いで帰ろうー』
二人は走って行った。そういえばナっちゃんとこに行った時もこんな雨の日だった。
「うわんっ」
オレの記憶が始まった頃は母親と兄弟が数人いたはずだ。父親はにおいもしなかった。目が開いた時にはもう母親も兄弟もいなかった。そしてこの籠に入って『じいさん』の家に行った。じいさんは人間に関わらずオレの言っていることを理解する数少ない人間だった。オレはそこで人間の言葉を覚えた。しかし半年もしたある日じいさんは目が覚めなかった。腹が減り三日三晩鳴き続けたある日じいさんと同じにおいのする男とそのつがいの女がやってきた。そしてたくさんの人間がやってきて、多くの菊の香りと煙のにおいがした。そしてナっちゃんの家に行った男と女が連れて行ってナっちゃんに会った。もう半月も前のことだろうか。
懐かしさに想いを馳せていたら先程の加齢臭の男が通りかかった。
「どこに行くんだ?」
声をかけてみた。
『寒くないか』
男は手に持った傘を籠の上に置いて走って行った。不思議な男だ。
雨はまだ止まない。オレはなんとなくナっちゃんとはもう会わない気がした。でもオレ一人では動けないしもう少し待つべきだろうか。吠えるのも腹が減るし。
『やっぱりここにいたか』
ほどなくして先ほどの男が来た。
「動けるわけないだろっ」
『まぁそう言うなよ』
「言葉が通じるのか」
『ケージってのは電車に乗せていいんだよなぁ』
「何のことだ?」
そう言うと男は籠を持ち上げた。
『飼うわけじゃないからな』
「飯をくれるのか?」
『ただ同居するだけだからな』
「何でもいいから食う物をくれ」
『返事だけはいいなぁ』
『でもあいつが見たら何て言うだろうか』
「誰のことだ?」
『私の時は飼ってくれなかったのにって怒るかな』
「何でもいいんじゃないか」
『まぁいいよな』
「そうそう早く飯にしようぜ」
じいさんみたいに会話が成立しているのか?オレにはどっちでもよかった。それよりも今夜の飯だ。多分オレはこれからこの男と暮らしていくのだろう。
雨の中での会話がいつの間にか月が観客になっていた。
今日は降るな。そうこの鼻が確信しているにもかかわらずオレはここから動けない。早く動かしてほしいモノだ。また覗く顔がある。さびしげなにおいがする加齢臭だ。
「用がないならあっちいけ!」
するとどこからか走ってくる足音がする。
『わぁ犬だよー』
『可愛いねー』
年の頃はナっちゃんと同じくらいだろうか。ナっちゃんと言うのはオレの同居人でどこからかいつもオレのために飯を持ってきてくれる。オレの友達兼子分である。この小さい家に入れて連れて来た張本人でもある。
『なんて犬だろう』
『雑種じゃない?』
『そうだよねーじゃないと捨てないよねー』
二人で代わる代わる覗いてくる。
「誰でもいいから飯をくれ」
声をかけてみる。
『わぁ鳴いたよー』
『可愛いね』
ナっちゃんと違って飯はくれないようだ。
ポツリ
やっぱり降ってきた。
『わぁー雨だー』
『急いで帰ろうー』
二人は走って行った。そういえばナっちゃんとこに行った時もこんな雨の日だった。
「うわんっ」
オレの記憶が始まった頃は母親と兄弟が数人いたはずだ。父親はにおいもしなかった。目が開いた時にはもう母親も兄弟もいなかった。そしてこの籠に入って『じいさん』の家に行った。じいさんは人間に関わらずオレの言っていることを理解する数少ない人間だった。オレはそこで人間の言葉を覚えた。しかし半年もしたある日じいさんは目が覚めなかった。腹が減り三日三晩鳴き続けたある日じいさんと同じにおいのする男とそのつがいの女がやってきた。そしてたくさんの人間がやってきて、多くの菊の香りと煙のにおいがした。そしてナっちゃんの家に行った男と女が連れて行ってナっちゃんに会った。もう半月も前のことだろうか。
懐かしさに想いを馳せていたら先程の加齢臭の男が通りかかった。
「どこに行くんだ?」
声をかけてみた。
『寒くないか』
男は手に持った傘を籠の上に置いて走って行った。不思議な男だ。
雨はまだ止まない。オレはなんとなくナっちゃんとはもう会わない気がした。でもオレ一人では動けないしもう少し待つべきだろうか。吠えるのも腹が減るし。
『やっぱりここにいたか』
ほどなくして先ほどの男が来た。
「動けるわけないだろっ」
『まぁそう言うなよ』
「言葉が通じるのか」
『ケージってのは電車に乗せていいんだよなぁ』
「何のことだ?」
そう言うと男は籠を持ち上げた。
『飼うわけじゃないからな』
「飯をくれるのか?」
『ただ同居するだけだからな』
「何でもいいから食う物をくれ」
『返事だけはいいなぁ』
『でもあいつが見たら何て言うだろうか』
「誰のことだ?」
『私の時は飼ってくれなかったのにって怒るかな』
「何でもいいんじゃないか」
『まぁいいよな』
「そうそう早く飯にしようぜ」
じいさんみたいに会話が成立しているのか?オレにはどっちでもよかった。それよりも今夜の飯だ。多分オレはこれからこの男と暮らしていくのだろう。
雨の中での会話がいつの間にか月が観客になっていた。