鏡の背面には、中央にある紐を中心にそれぞれ形態を異にする4棟の建物が表されたもの。
━━それらは、竪穴の建物(A棟)・平屋建ての建物(B棟)、高床の建物(C棟)、高床の倉庫らしき建物(D棟)である。
◎A棟
住居と見られる竪穴建物で、入口の扉は支え棒で持ちあげられ、そこにC棟と同じ露台と蓋(きぬがさ)がみえる。A棟は他の3棟よりも大きな床面積を持って表現されている。日常生活の場を表すたものと見られる。このA棟と類似の竪穴建物が奈良県天理市の東大寺山古墳から出土した鉄刀の柄の環頭に表されている。
◎B棟
入母屋形の屋根を持つ平屋建ての建物で、観音開きを思わせるような壁があり、基壇の上に建てられているところから大陸風な建築の影響を受けたと見られている。
◎C棟
高床で入母屋型の屋根を持つ建物で、一方の妻側に手すりをつけた梯子が、他方の妻側には露台が見られ、身分の高い人の建物であることを示す蓋がさしかけられている。また、屋根の左右には稲妻形模様(いわゆる雷文の一種)が描かれ、その模様の中に人物像が配置されている。祭祀儀礼や政治を行う中心になる建物であったろうと考えられる。このC棟によく似た家形埴輪が大阪府八尾市の美園古墳の周濠から出土している。
◎D棟
高床の切り妻型屋根を持つ建物で、一方に梯子がある。高床の下は蓆様の仕切りが壁をつくり、収納空間をつくっている。
このうち平屋建ての建物(B)と、高床の建物(D)には、その左右に木の表現があるのは神木と考えられる。他の2軒はりっぱな建物だが、神木がない。そのかわり、身分の高い人の建物を示す入り口に立てかけられた日覆いの傘(蓋)がある。A棟を除く3棟の上には、それぞれ二羽の鳥が表されている。
家屋文と類似する家形埴輪が各地から出土している。埴輪では千葉県山武郡芝山町の殿部田(とのべた)1号墳や鳥取県東伯郡湯梨浜町の馬ノ山古墳群中の長瀬高浜遺跡から古墳時代中期の様々なスタイルをした家形埴輪が、大阪府八尾市の美園古墳の周濠からA棟によく似た家形埴輪が、群馬県伊勢崎市赤堀町の赤堀茶臼山古墳から多種多様な8棟の家形埴輪が出土している━━









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