今里のノゴト (一本木跡)


大和国葛下郡
奈良県大和高田市中今里町
(県道116号線沿い、「ローソン高田今里店」から北へ100mほど、「おがわでんきランド」の向かい、「一本木跡」は「おがわでんきランド」敷地内)
(P無し)

■祭神
(不明)


大和高田市「今里」地区の住宅密集地内に鎮座する社。瑞垣内に御神木一体と石灯籠、道路向かいにかつてあった御神木跡といった内わけ。
◎当社は稲作の守護神を祀るいわゆる「野神」の一社。「今里のノゴト(ノモト)」が「大和の野神行事」の一つとして、奈良県の無形民俗文化財に指定。当地は「葛城川」西岸に広がるかつての低湿地帯。現在は田畑らしきものはほとんど無くなっていますが。
◎毎年五月四日(大和盆地南部の多くの地区が田植え前の五月五日、大和盆地北部地区の多くが新暦の六月に行われる)、まず「一本木跡」に「御霊入れ」が行われた後、公民館へと場所を移し小型模造農耕具等が据えられた祭壇に向かって祝詞が奏上されるようです(神事の様子はネット情報より)。
◎どうやら御神木は平成九年の大型台風により倒木。場所を替え神事内容が変わりつつも存続させているようです。
古書には天文十年(1541年)の記録があることから、少なくともそれ以前から始まっていたと神事。いつまでも続けられることを願います。
◎「諸国風俗問状答」という文化・文政期(1804~1830年)頃のものには、以下のようにあるとのこと。
━━大和葛下郡今里村の野中に 古木の榎一本有之 野の神と称し来り 五月五日神事執行す 講中有之 當年の當屋より来年の當屋え渡し候に双方茶紙とて 茎交りに漉候紙を頭にもかぶり 身にもまとひ 出たる處の手足のさきを真黒にてぬり幣の受取渡しいたし候由 由縁未詳━━
◎手足を真黒に塗る理由については、「農事之由来」というものに、農神の行事(ノガミ神事)には餅と和布(ワカメ)を食べることが習わしとしていたが、この和布を焼く鍋を預かった者の顔に鍋墨がついたのを笑い喧嘩となったが、翌年から墨を塗るようになったと。
高市郡の人麿神社の「すすつけ祭り」との類似が興味深いところ。また和布を神饌とするのは大和盆地の中南部地域特有のもののようです。
◎その「農事之由来」には、当地の名主が「金剛山(高天山)」に月参りをしていた360回目に、夢に老翁が現れ、「領内の榎に我を移せ。祭礼の宮を設け五月五日に神事を定めれば農守護の神となる」とあるようです。




角に「セブンイレブン大和高田今里町店」のある「今里交差点」より南へ150mほど。「ローソン高田今里店」からは北へ100mほど。

斜めになってしまいましたが掲載しておきます。



道路向かいの「一本木跡」。