辛国神社 (東大寺境内)


大和国添上郡
奈良市雑司町406-1
(近隣コインP等利用)

■祭神
(不明)


東大寺大仏殿の東側、鐘楼の手前に鎮座する社。「猫段」という石段を登ったすぐ左手奥に位置します。
◎創建由緒は不詳ながら東大寺創建に関わった社と考えられています。石灯籠の刻名から明治二十四年に「天狗社」から「辛国社」に変わったとのこと。阿字万字町(あざまめちょう)の人々の間では「辛国神社」で通っているようです。阿字万字町は「ならまち」の一角。遡られるのは「天狗社」とある嘉吉三年(1443年)まで。
◎当社には「天狗伝説」と「辛国伝説」、「韓国(からくに)伝説」と異なる3通りの伝承があるようです。
◎天狗伝説については、「東大寺諸伽藍略録」という書には東大寺建立の際にさまざまな障害を加える天狗を、(東大寺を開山した)良弁という僧侶が改心させたとあるようです。そして当社が造られると「大法会執行の時には、必ず此社向って正法護持を祈る」とされていたとか。これは現在にも続いているらしく、「蜂起の儀」として大湯屋に集会し境内を巡察しているようです。中世には「強訴(ごうそ)」(僧侶の武装化)の際に「蜂起の儀」が行われていたと伝わります。
◎「辛国伝説」については、良弁という僧侶と「辛国」という行者とが力比べを行ったとされ、いつの間にか辛国行者が「天狗伝説」と結びつき「辛国神社」となったというもの。
◎「韓国伝説」については、東大寺建立にあたり韓国からの職能技術集団が大いに活躍。その渡来人たちを讃えるための社であるというもの。当社ご祭神を「韓国翁」とする古書もみられるようです。


こちらが「猫段」。左端に少し見える鳥居が当社のもの。


手前の左右の提灯に描かれる赤い模様は、天狗のうちわであるとのこと(冒頭写真の方が大きく写っています)。