昭和日常博物館(愛知県北名古屋市)。
昭和レトロの博物館というと、昔の茶の間や街並みを再現して、テレビや黒電話、ちゃぶ台などを並べた展示を思い浮かべます。
昭和日常博物館にも、もちろんそうした再現展示があります。
でも、ここはそれだけではありません。
私が特に面白いと思ったのが、昭和の日用品を、とにかく集めて、分類して、比較できるように展示していること。
時計なら時計、飲料なら飲料、ラジオならラジオ。
しかも一つ二つではなく、かなりの数です。
同じものでも、こんなに種類があったのか。
時代によってこんなに変わっているのか。
そういうところが見えてきます。
3階に上がると、いきなり昭和レトロな光景がお出迎え。
ダイハツの三輪自動車、郵便ポスト、ホーロー看板、赤電話などなど・・・
ショーケースには昔のタバコ。
このあたりまでは、昭和レトロの施設として想像していた通りです。
しかし、昭和日常博物館はここからが違う。
たとえば、このホーロー看板。
ただいろいろな看板を並べているのではなく、お菓子ならお菓子でまとめてあります。
別の場所では、飲料、ビール、ウイスキー。
種類ごとに集めて並べてある。
これをやろうと思ったら、一枚や二枚持っているだけではできません。
比較できるほど大量に集めているところがすごい。
展示室も同じです。
昭和レトロ展示では「昭和のリビングを再現して、そこに昔の家電や日用品を置く」という見せ方をよく見ます。
しかしここでは、博物館の資料として分類・整理し、ケースに入れて並べています。
たとえば時計。
昔の時計というと、まず振り子の壁時計を思い浮かべます。
でも当然、実際の家庭にあった時計は一種類ではありません。
壁時計もあれば置時計もある。
デザインも全然違う。
それを一つのケースにずらっと並べると、「昔の時計」という一言では片づけられない多様さが見えてきます。
こちらはビール、ウイスキー。
こういう展示を見ていると、物だけでなく自分の記憶まで引っ張り出されます。
うちの父親はキリンラガー派でした。
キリンラガーはいまでもよく似たデザインで売っているので、それほど「昭和レトロ」という感じがしません。
でも父親の影響なのか、私もビールというと、ついキリンラガーを買ってしまいます。
特に味が一番好き、というわけでもないのに。
子供の頃から見慣れていた物の影響というのは、けっこう大きいんですね。
昭和の日用品というのは、単なる古い物ではなく、見る人それぞれの記憶までくっついているのかもしれません。
飲料もいろいろ。
ラムネ瓶、コーラ、カルピスなどが種類ごとに整理されています。
そして、私の大好きなラジオ類。
真空管ラジオだけではありません。
トランジスタラジオまで、かなりの数。
一台だけなら「古いラジオだな」で終わります。
でもこれだけ並ぶと、形、大きさ、材質、デザインがどんどん変わっていくのが分かります。
大量に集めること自体が、展示になるわけです。
店頭に置かれていたマスコット類もあります。
ケロヨンやサトちゃんは有名ですが、日立のポンパ君や東芝のマスコットまで。
よくこれだけ残っていたものです。
そして今回、特別展示として行われていたのが、
「”全力” 扇風機展」
です。
これが本当に「全力」でした。
一室まるごと扇風機。
古いものから新しいものまで、年代を追ってずらっと並んでいます。
ここまで並べると、単に「昔の扇風機はこんな形だった」という話ではなくなります。
古い扇風機は落ち着いた色が多かったのが、だんだんカラフルになっていく。
そして、初期のものではかなりスカスカだった羽根のガードも、安全性を考えて細かな網状になっていく。
並べて初めて、扇風機そのものの進化が見えてきます。
羽根だけを並べた展示もありました。
同じ「扇風機の羽根」でも形が変化し、より効率よく風を送れるよう進化してきたんですね。
これは知りませんでした。
そして、この特別展には他にも面白い展示がありました。
・コードでつながった「有線リモコン」付き扇風機。
・購入後の収納まで考えて作られていた、昔の扇風機の外箱。
この2つは特に面白かったので、別の記事で詳しく紹介します。
こうした細かい部分まで集めて比較できるのも、この博物館ならではだと思います。
さて、特別展から通常展示に戻ります。
奥には、昭和の街並みを再現したスペースもあります。
当時の電器屋さんにはラジオ。
ちゃんと箱に入っているのがポイント高いです。
そして最後に知って驚いたこと。
昭和日常博物館の展示の取り組みは、1990年代から続いているそうです。
1997年というと、現在のような「昭和レトロブーム」が本格化するよりずっと前。
私はてっきり、最近の昭和レトロブームに乗って作られた博物館なのだと思っていました。
すみません。
そんな時代から、昭和の日用品を集め、分類し、保存してきた。
だからこそ、これだけの展示ができるのでしょう。
単に「昭和の風景を再現しました」だけではなく、ちゃんと博物館として資料を集め、分類して、展示を行う。
これは博物館としては当たり前なのかもしれませんが、昭和レトロの切り口ではこういう見せ方は意外と少ない気がします。
ありきたりな昭和レトロにちょっと食傷気味の方にも、おすすめしたい博物館です。
<訪問日:2026年8月>





















