(前回からのつづき)

 

次は、ALPSと呼ばれる「多核種除去設備」の建屋をバスから見学。

汚染水に含まれるセシウム、ストロンチウムなどを低減する装置。既設ALPS、増設ALPS、高性能ALPSの3つがありました。

 

(GoogleEarthより引用)

 

「汚染水を処理して海に放出しなくても、そのまままた冷却水として再利用すればよいのでは?」

見学すると、当然出る疑問です。

 

実はもちろん再利用しています。

しかしそれ以上に地下水や雨水などが流入し、汚染水となってしまう。約80m3/日。

これがどんどんタンクが増えてしまう原因です。

GoogleEarthで見てもわかる通り、敷地内は本当にタンクだらけでした。

 

雨水ができるだけ流入しないよう、敷地内はモルタルでフェーシングされていました。

 

(東京電力バーチャルツアーより引用)

 

もとは緑の芝生で綺麗に整えられていたであろうところが、灰色の無機質な斜面になっています。徹底しています。

 

次に、「グリーンデッキ」にやってきました。

ここからは5号機・6号機の原子炉建屋と、ALPS処理水の放水設備を見ることができます。

 

(GoogleEarthより引用)

 

(東京電力バーチャルツアーより引用)

 

海が綺麗に見える見晴らしのいい高台です。

5号機・6号機は、無事です(しかし廃炉予定)。6号機のディーゼル発電機のみがたまたま高いところにあり、津波を免れました。このディーゼル発電機を5号機と共用することで、両方とも冷却ができたとのこと。

 

聞いた話では、実は1~4号機でも非常用ディーゼル発電機はさらに予備があり、浸水を免れていたと。しかし残念なことに配電盤が低い位置にあり浸水。結局機能しませんでした。

どこまで想定していたかわかりませんが、もし配電盤が浸水対策されていれば・・・と思わずにはいられません。

 

ALPS処理水の放水設備は、そこで放水しているわけではなく、海底トンネルを掘って1km先の海で放出していました。そのトンネル工事に使われたシールドマシンもグリーンデッキに展示されていました。

 

(東京電力バーチャルツアーより引用)

 

このあと敷地内のタンクなどを見ながら、また入退域管理棟に戻りました。

退場時は、ホールボディ・カウンタと呼ばれる大型の装置に1人ずつ入り、内部被ばく検査されます(もちろん問題ありませんでした)。

渡されていた線量計には数値表示などはありませんでしたが、返却時に数値を教えてもらえました。私のこの日の被ばく量は 0.01mSvでした。レントゲン撮影1回分程度。

 

このようにして、視察は終了。

いただいた資料とボールペン。

 

 

 

東日本大震災を経験した身として、もともとこの原発事故に興味がありました。映画「Fukushima50」やドラマ「THE DAYS」などをよく見ていました。

さらに、福島第一原発の作業員が描いた漫画「いちえふ」も読みました。

 

 

「いちえふ(1F)」とは、福島第一原発の通称です。

マスコミでは「フクイチ」と言ったりしていますが、関係者や現地で「フクイチ」という人は誰もいない。いただいた東京電力の資料にも1Fと書いてありました。

 

この漫画では実にリアルな作業員の日常が描かれており、読むだけで廃炉作業がどんなものかをうかがい知ることができました。

ぜひその現場をこの目で見てみたい。

その夢が叶った一日でした。

 

原発事故は二度と起こしてはならないし、日本のような地震国には原発は設置するべきではないと思っています。

しかし起きてしまった事故を収束するため、廃炉作業に日々努力されている皆さんには心から敬意を表します。この廃炉作業は今後何十年も続きます。

今後も、廃炉作業に注目していきたいと思っています。

 

<訪問日:2024年5月>