皆さん、こんにちは。

佐伯恵太です。

 

本日は、映画『森のムラブリ』を観てきました。いやはや、衝撃的でした。

おそらく「衝撃的」という言葉から連想するソレとは真逆の意味で。

 

 

と、いきなり語り出してしまっていますが、映画のあらすじ的なものは、ぜひこちらの動画をご覧ください。

 

映画『森のムラブリ』予告編(特報)

 

ちなみにこの後はネタバレを多分に含みますのでご注意ください。と言いつつ、個人的には前情報を入れてから観てもお楽しみいただけるのではないかと思っています。

 

ステレオタイプ

 

狩猟採集生活って聞くと、眼光鋭い屈強な戦士たちが槍のような武器を片手に野生動物を追いかけ、危険と隣り合わせの狩りをする、みたいなイメージがありませんか?寝る時もいつ何時動物に襲われるかわからないから、ローテーションで見張り番をしながら浅くて短い睡眠で済ませて常に気を張っているというような。

 

ところがですね、ムラブリの人たちは、もうびっくりするくらいイメージと違っていて。

 

まぁ考えてみれば、日本人がいまだにサムライの姿で表現されていたら「いつの時代だよ!」って思うし、メガネに七三分けで勤勉なのが日本人でしょ?とか言われても「そんなの人によるわ!考えたらわかるだろ!」って思うわけで。立場が入れ替わった途端に極端に想像力が欠如するこれ、何なんでしょうね。

 

とにかくそんなわけで、巨大なワニや、いきり立ったイノシシとの手に汗握る死闘などは観られなかったのですが、代わりにムラブリの人々のリアルが、暮らしの息遣いが、そこにはありました。

 

予想と違ったのは、狩猟採集生活の部分だけではありません。ムラブリの人々は食べ物をみんなでシェアする、たとえ少ない食料でも家族や周りの人にあげるのだということを事前に映画の関連記事で読んでいたので、そうか。ムラブリの人たちはとても優しくて思いやりがある、素晴らしい人たちなんだな、と思っていました。

 

もちろんそういう側面はあるのですが、けっこう緊張感なくダラダラしているようにも見えますし、途中で出てくる夫婦喧嘩のようなシーンがあって、その喧嘩の理由が本当にくだらないというか人間らしいというか、つまるところ人間は人間であって、菩薩ではないんだなと。

 

人はそれぞれ自分のフィルターで世界を見ているし、そのフィルターは往々にして本人は透明だと思っているけれど、実はそれぞれまるで違った色がついている。しかしこの映画を観ている時だけは、本当に透明のフィルターで観ることができた気がします。監督の、演出しない演出のおかげで。

 

価値観

 

現代の日本人の生活と、映画の中でのムラブリの人たちの生活が何から何まで違うので、ムラブリの人たちはこういう価値観で生きているのか、なんてことは映画を観た後でもわかりませんでした。

 

同程度の文明の具合で、同じような語彙があり、時に交流があったりするような間柄だからこそ、わかるものなんだと思いました。

 

「ありがとう」と「ごめんなさい」が言えることが大切であると、おそらく多くの方はそのような教育を受けていることと思います。ところが、ムラブリ語には「ありがとう」と「ごめんなさい」にあたる言葉がそもそも無いそうです。それらの言葉があるのに言わないのであれば、「失礼」「思いやりがない」など大雑把に判断していけますが、そういう言葉は無い、と言われると判断に困ります。ムラブリの人たちには、世界が、目の前の相手が、どんな風に見えていて、日々何を感じているのでしょうか。

 

何から何まで違っているからこそ、ムラブリの人たちの笑顔や嬉しそうに歌を歌う姿、欲に純粋な様子などは観ていて安心感があり、おそらくそれは普遍的なものであると信じることができました。

 

こんな方にオススメ

 

とまあ色々小難しく書いてみたものの、言語学や文化人類学に興味があるという方はもちろん「そういえば、世界ウルルン滞在記、好きだったなー」みたいな方も、お楽しみいただけることと思います!映画の出演、現地コーディネーターと字幕翻訳など担当されている言語学者の伊藤雄馬さんも、世界ウルルン滞在記に影響を受けたそうですし。

 

作品を楽しむのに意識の高さも高尚な理由も必要ないと思います。ここでしか観られない貴重な映像の宝庫だよ!みんな、観よう!

 

トークセッション

 

映画観賞後は、監督と伊藤さんによる舞台挨拶があり(監督のお話、もっと聞きたかった!)、その後は会場を移動して、伊藤さんと尹雄大さんによるトークセッションに参加しました。

 

伊藤さんのフィールド言語学研究の内容や目的について知ることのできる、大変興味深いお話でした。尹雄大さんは聞き手でわかりやすくお話を整理される役なのかなと思ったら尹さんも興味深いお話をぶっ込まれるので、二人の掛け合いが静かにスパークして頭が追いつきませんでしたが、とても楽しいひとときでした。

 

おそらく伊藤さんは言語学者の中で異端児なのだとは思うのですが、だとしても、自分の中で言語学というものの見方が変わりました。そもそも言語とは何なのか、言語は何のためにあるのか。皆さんの答えは、何ですか?

 

 

伊藤さんとコラボトークします

 

さて。ここまでは映画やトークセッションの感想を述べてまいりましたが、実は私、3月28日(月)に伊藤さんとコラボトークイベントを開催させていただきます!

 

 

>>イベント詳細<<

 

伊藤さんが京都大学大学院文学研究科、そして僕が京都大学大学院理学研究科出身なのですがそこでは出会っておらず、最近になって思わぬご縁で出会いました。真相はイベントにて。

 

本日の伊藤さんと尹さんのトークセッションに参加された方は、伊藤さんの言語学の捉え方、研究への考え方、ムラブリへの想い、そして伊藤さんの生き方に、興味が止まらなかったのではないでしょうか。まだまだ伊藤さんのお話を聞きたい!という方は、伊藤さんのお話だけでも十分価値を感じていただけることと思います。これだけ伊藤さんを連呼するあたり、僕も虜になっております。

 

しかしそうは言っても、せっかくのコラボイベントですので、自分の俳優視点もブレンドして、このコラボトークならではの時間を作り出していければと思います。言語と体、言語と運動というところも、おそらく深堀りしていくことになりそうです。

 

このブログで僕のことを知ってくださった方はぜひ、こちらの記事をご覧いただけましたら嬉しいです。佐伯恵太はこんな人間です。

 

今日映画を観て、トークセッションに参加して、28日のコラボトークが面白いイベントになることを確信しました!あとは、お一人でも多くの方とそのひとときを分かち合いたいです。映画館もトークイベント会場も渋谷ですので、当日17時半から映画をご覧いただけましたら、上映後徒歩移動でギリギリ間に合う設計になっております!

 

 

会場はミヤシタパーク。森の暮らしをその目に焼き付けた直後に大都会東京の象徴的な建物内でのイベントというのもまた一興。

オンライン参加あり!アーカイブ視聴あり!学割ありです!

 

 

最後に改めて、映画『森のムラブリ』、必見です!!

 

何にでもすぐ「意味」を見出そうとするみんな、この映画を観て、その価値観を一度ぶち壊されてみるが良い!!(自戒を込めて)