皆さん、こんにちは。
佐伯恵太です。
先ほど、録画していた番組、
又吉直樹のヘウレーカ!「なぜネコは人をメロメロにするのか?」
を観ました
番組の中で、麻布大学の特別研究員、高木佐保先生の研究が取り上げられていました
この研究の内容自体がとっても面白かったのですが、僕は25歳まで生物学研究をやっていた身でもありますので、研究者視点も加えながらこの研究や生物学の未来について考えていきたいと思います
高木先生の研究では、猫の認知能力を調べるためにこんな実験をされていました。
※イラストはイメージです
猫の前に4つの皿があります。色違いで、猫がそれぞれの皿を見分けられるようになっています。
それぞれの皿の中身はこちらです。
①エサが入っている
②エサが入っている(①と同じ量)
③ヘアピン(ネコは興味を示さない)が入っている
④何も入っていない
まず最初にネコに①のエサを食べてもらいます。そして②〜④は、皿の中を見せるだけ。つまり、②にもエサが入っていることを
認識させつつも、食べさせていない状況を作ります。
次に、ネコに別の部屋に移ってもらい、その隙にそれぞれの皿の中身を取り、匂いも残らないよう拭き取ります。そして、15分後にネコを皿のある部屋に戻した時、ネコはどの皿に対してどういう行動をとるのか、という実験です。
ネコがエサのことを覚えているなら、①か②に行くはずですよね。
①の方はもう食べたから、②にしかエサは残っていない、というところまでわかっていれば、②に行くはずです。
この実験を30個体以上で行ったところ、
まだエサが残っていたはずの皿(②)を最も多く探索する
という結果が出たそうです
ネコはそこまでわかっているんですね〜
この実験そのものも面白いのですが、生物学研究として進んでいるなぁと感心しました。
先生も番組内で仰っていたことですが、この実験、ネコにエサのことを覚えさせるということを「1度しか」行っていないのです。過去の多くの動物の研究では、このような記憶、認知能力などの研究をする際は「何度も教え込む」実験が主流でした。
この何度も教え込む、ということをやれば、例えば僕が研究していたキイロショウジョウバエにも、記憶する能力はある、ということが見えてきたりします。
一度きりの経験をちゃんと覚えているっていうのはすごいですし、シンプルな実験ながら、あまり動物の実験で行われてこなかったことにチャレンジされているのもすごいと感じました。
ちょっと別の話になりますが、僕がそのキイロショウジョウバエの研究をしていた時は、同じ実験を、たくさんのハエで繰り返し行い、そのデータの平均値を取って統計的に検証する、ということを行っていました。
ところが、近くの研究室でイカの研究をされていた先輩は、イカの行動の平均値、ではなくイカの行動の個性を研究している、というお話をチラッと聞いたことがありました。
もうそれは8年くらい前の話になりますが、その時、生物学は大量に実験して、平均値を取って、統計して、というスタイルだけじゃなくなっていくのかなぁなんて感じたことも、思い出しました。
何度も教えるのではなく、一度で覚えられるかの実験。
平均をとるのではなく、個性を見る実験。
生物学(動物)研究の広がりを感じます
今の時代、AI化が進む現代において、人間ってなんなんだろう。という問いに対して、あらゆる視点から研究が進んでいくと思いますが、特にそういった人間の研究にこそ、個性を見るという観点や、従来の研究手法に縛られない柔軟な研究が求められているように思います。
ネコの実験から、そんなことも少し、考えたのでした