涙ソムリエの佐伯恵太です。

 

世の中には『泣ける映画』『泣ける音楽』などたくさんの感動作品、泣けると謳っている作品がありますが、一つ感じていることがあります。それは、どれだけ泣けるかを定量的に調べたり発表しているものは極端に少ないということ。

 

ある作品、例えばある映画を観たときにどれだけ泣けるというのは個人差があります。それぞれの人生経験や価値観、性格が違う以上、ある人にとっては泣ける映画もある人にとっては泣けないこともあります。日常的に涙を流しているか否かによっても違いますし、同じ人が観てもその時の体調、気分や時間帯、色々な要因によって、どれくらい泣けるかというのは変わってきます。

 

ただ今回の疑問は世の中の人の何割が泣けるか、平均するとどれくらい泣けるか、ということではなく「私はこれだけ泣けました」という個人の記録さえ、量として表している前例が殆どないということ。

 

 

そこで今回は、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』を鑑賞して、実際に涙が何粒出たかを測定してみました。

 

前提として、僕は既に2回この映画を観たことがあり、3回目鑑賞時の結果が今回の数字です。大好きな映画で、過去2回観た際も凄く泣けた記憶があり、今回はこの作品をチョイスしました。

 

 

早速その結果を発表します。

 

映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(2時間18分)を鑑賞して出た涙の量は、117粒でした。

 

※毎日涙活をして涙を流しまくっている人間の数字です

 

 

細かくみていけるよう涙が出たタイミングをシーン毎に区切ってみたところ、最低1粒以上涙が出たシーンは合計36シーンありました。どこからどこまでを同じシーン、どこからは違うシーンとするかについては今回は鑑賞中の印象で決めました。

 

それをグラフ化したものがこちらです。

 

 

5分毎などの時系列ではないのですが、左端の縦の棒が鑑賞開始後最初に涙が出たタイミング、右端が最後に涙が出たタイミングです。今思えば時間刻みで測定すれば良かったと思いつつ、あまり手の混んだことをやると映画を途中で止めることが必要になったり、鑑賞時の集中力が切れるので難しいところです。

 

同じシーンで5粒以上の涙が出たシーンが7ヶ所あり、そのうちのトップ3についてシーンについて説明したいと思います。

 

 

1位:朔太郎と亜紀がオーストラリア行きのため空港に行って、亜紀が倒れるシーン(15粒)

 

セカチューといえばこのシーンというくらい有名な、映画を観ていない人ですら知っている例のシーンです。測定する前から一番泣けるのは間違いなくこのシーンだろうとある意味多少身構えてしまっていたのですが、そんな心配は全てこのシーンに吹き飛ばされ、抜群に泣けました。予想通りではありますが、涙を基準に見てもやはりこの映画の一番象徴的なシーンであるようです。

 

 

 

2位:エンドロール 平井堅『瞳を閉じて』(8粒)

 

エンドロールの作品の余韻や、監督やスタッフ、俳優陣の名前が出てきた効果もありつつ一番は、やはり歌による感動。映画の内容とベストマッチの歌詞やあたたかく包み込むような曲調は本当にぐっときました。上のシーンよりも強くこみ上げてくるような感覚すらありましたが、終盤に泣けるシーンが多くて枯渇気味、というのは正しい表現かわかりませんが、少しそのような印象があり、少なくとも数字以上に感動はありました。

 

 

 

3位:朔太郎が亜紀の花嫁姿を見たシーン(7粒)

 

亜紀の花嫁姿を見てこみ上げるものがありたまらずトイレに駆け込んだ朔太郎を見ているとこちらもたまらず涙。最高に美しい花嫁姿なのに、結婚して本当にこの姿を見ることはもうできないんだな、なんて考えてしまうともう我慢できるわけがありません。階段を駆け下りていく朔太郎を見つめる「重じぃ」こと重蔵さんがさらに泣かせます。トップ3にこそ入りませんでしたが重じぃが涙活の上でも本当に重要な存在です。登場シーンでほぼ毎回泣かされました。

 

 

 

3位:朔太郎と律子が空港で会話するシーン(7粒)

 

律子が過去を振り返りながら想いを吐露するシーンです。律子は全体の尺からみると登場シーンが長くはないですが、映画版ではとても重要な人物です。クライマックスへと向かい貴重なシーン、尺もたっぷりめでしっかり泣けました。

 

 

 

今回は映画『世界の中心で、愛をさけぶ』を観て流した涙の数を調べてみました。今回の傾向としては、人物のセリフや状況だけでなく、絵として綺麗であったり象徴的なシーンや、音楽も凄く重要であったことがわかりました。ただ、おそらくもう一度やってみると次回はまた全然違う数字で、泣けるシーンも今回とは変わってくるかと思います。僕は今31歳なのですが、映画公開時は17歳でした。当時観た時の感動ポイントはほとんど高校生時代の二人のシーンで、朔太郎と律子のシーンや写真館のおじいさん重じぃにここまで感情移入することはなかったと思います。そんな風に、自分の中での変化も感じて楽しむことができると思います。

 

 

ちなみに先日、この映画の予告編でも涙の量を調べていまして、その結果はこちらです。

 

映画『世界の中心で、愛をさけぶ』予告編(2分11秒)を鑑賞して出た涙の量は、17粒でした。

 

 

映画の尺が2時間18分、予告編は2分11秒なので、時間としては60倍以上の差があります。一方涙の量としては約7倍程度なので、単位時間あたりの涙の量は予告編の方が圧倒的な数字です。しかし肌感覚として、予告編では味わうことのできなかった凄く深い感動があったり、人物への感情移入の度合いも全然違いました。なので一概に涙の量で判断することはできないと思います。感動作品を観たいとか、泣いてスッキリしたい!という気持ちになることがありますが、ストーリーを深く味わい、人物に思いっきり感情移入し、いろんなことに想いを馳せたいということであればしっかり本編を観ることが良いと思います。しかし深すぎる感動はときに疲れてしまったり、辛い気持ちになることも少なくありません。人の死などを扱う作品であれば特にそうです。ですので反対に、できるだけ重たくなく、スッキリ泣きたい。ちょっと泣いて気分転換したいというのであれば、尺の都合だけでなく「ライトに」楽しめる予告編を観るというのもありかもしれません。実際に本編を観終えた今の感覚として、ものすごく良かったけど少し疲れた、というのが正直なところです。17歳の時はきっとここまで没入していなかったんでしょうね......

 

映画の内容によっては『ウォーターボーイズ』のように重たくない作品で泣けるものもたくさんありますので、作品のトーン、というのも大事かなと思います。

 

 

 

おそらく人間はこの先何十年、何百年とエンターテインメントで感動し、また感動のためにエンタメと付き合っていくのだと思います。そうしたときに感動の一つの指標である涙や、感動するとはどういうことかということを掘り下げていくことは、凄く重要なことではないかと考えています。涙や感動といったものを数字や理屈で語るのはときに敬遠されがちですが、映画や音楽、エンタメを愛しているからこそ僕はもっとこの分野を研究したいのです。そのために今まで数値化されてこなかったものを数字で表してみる、というのも一つの方法なのではないかと思っています。

 

と、このブログ内で、今回はじめて数値化をしたような感じで語っていますが、実は既に大量に、ミュージックビデオなどを観て流した涙の数字を記録し続けています。長編映画ではじめてやってみたというのが今回なのでした。その結果などもまたブログでも発表できればと思いますし、研究論文という形にできないかも検討中です(元生物系の研究者でした)。

 

 

僕はいま役者として活動していますのでお芝居を磨いていくことで、多くの人の心に響く作品づくりに貢献したいと思っています。それと共に、涙活や感情の研究、実践を通してもし何か、映画界やエンタメの世界に貢献できる発見があれば、そんなに嬉しいことはありません。

 

とはいえ「個人差」が肝になってくる分野です。このブログを読んでもし面白いと感じてくださった方はお気軽にコメントいただけたら嬉しいですし、たくさんの方と一緒に涙や感動といったこれからの分野を探求していけたらと思っています。もはや映画レビューじゃないですね、これ。

 

ではまた。

 

 

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