俳優・涙ソムリエとして活動しております佐伯恵太です。

 

話題沸騰中の映画『カメラを止めるな!』にどハマリ中で、昨日3回目を観てまいりました。カメラを止めるな!(以下、カメ止め)ファンの中では鑑賞回数をテイク◯◯と言うのが流行っていて、僕はテイク3ですね。それがまだまだひよっこで、テイク10を超えている方もチラホラ出はじめているようです。テイク29という猛者も......

 

他にもファンのことを『感染者』

公開規模や感染者の拡大のことを『ポンデミック』

 

と呼ぶなど色んな言葉が流行ったり『カメ止め絵』なるファンアートもSNS上にたくさん公開されていたり、みんなが一緒になって応援しつつ、それぞれの楽しみ方をしているのもカメ止めの特徴の1つ。かく言う僕はゾンビポーズで撮られた写真『ゾン写』をゾンビ風に加工して楽しんだりもしています。

 

 

※3枚目は僕が偶然にもカメラマン役の山口さん、主題歌の山本さんと別現場で撮影ご一緒した際の写真です。感動した......

 

 

作品の中身についても、最高に楽しくて思いっきり笑えるというのは共通だとして、泣けるとか、役者さんのことを全員好きになったとか、自分もなにか頑張りたくなったとか、人それぞれにプラスアルファ色んなことを感じるのもこの映画の特徴だと思います。

 

内容についてはネタバレを避けますが(これについてもネタバレ厳禁派とネタバレしても問題なく楽しめる派の意見があって、こんなところにも感じ方の多様性が窺えます)、僕の専門分野『涙活』の観点から、カメ止めは泣ける映画なのかということについて考えてみたいと思います。

 

SNSの投稿を見ると、面白い、笑ったというのはやはり圧倒的多数の感想として、泣ける、泣いた、号泣などの意見も決して少なくありません。

 

ちなみにテイク3した僕は、

 

二度目以降がっつり泣きました

 

感染者の皆さんの感想と僕のテイク3の経験から考えてみます。

 

泣ける要素としてまず大きくわけると

 

①映画(の内容)に感動して泣く

②映画外の要素(映画に関連した映画の中身でない部分)で泣く

 

 

と分けられます。①は映画の内容に泣くということで、面白すぎて涙が出てくるといういわゆる笑い泣き(漫才やコントを観ていて腹筋がよじれるほど笑った時に出てくるあれ)と共に、感動して出てくる涙もあります。いろいろな要素がある中でも『家族愛』や『不器用ながら頑張ってる姿』の部分にぐっとくる人が多いのかなと思います。とはいえそれが押し付けがましくない、いわゆるお涙頂戴の映画では決してないんですね。

 

上田慎一郎監督がテレビのインタビューで、この映画は『メッセージ』が真ん中にある映画ではなく『面白い』が真ん中にある映画だと仰っていました。だけれどもただ面白いだけではなくて、監督の中心にある映画愛や、努力を続ける人への応援の気持ち、家族のあり方への想いが彩りを加えて、

 

面白いのに泣ける映画

 

になったのではないかと思います。僕自身一度目の鑑賞時には大爆笑、終始とにかく笑ったという感じで、おそらく10人が観たら10人が泣ける映画だとは思わないのですがむしろそこがポイントであって、世の中の多数派をガッチリ捉えるような王道の泣ける映画で泣けない人、そういう映画はお涙頂戴とまではいかなくてもなんとなく過度に感じる演出や意図が気になって泣けない、という人には逆に思いっきりハマるという可能性を秘めた映画だと思います。

 

映画を観て泣くという場合には共感する部分があるほど涙につながりやすいのですが、作品自体が映画を撮る人のお話なので、映画好きやお芝居の世界に携わっている人間には無条件にハマると思います。ただそれだけではなくて、個性豊かな役者陣、さらにあてがきなので、登場人物の性格は様々で、それぞれがそれぞれなりの魅力と不器用さを放ちまくっています。なので、共感できる人物が必ず誰かいるのではないかと思います。

 

ちなみにエンドロールで涙腺が崩壊する方も少なくないと思うのですが、それについてはネタバレを含むため控えさせていただきます。そうそう、山本真由美さんの歌う主題歌、Keep Rolling もまた泣けるんです。明るい曲なのですが、歌詞がね、本当に......皆さん是非映画の最後で、歌詞にも注目して聴いてみてください。

 

 

と、作品の中身の感動ポイントを考えるだけでも延々続いてしまうのですが、ここで②の要素について考えたいと思います。

 

②映画外の要素(映画に関連した映画の中身でない部分)で泣く

 

これはどういうことかと言うと、映画の中身だけじゃなく、監督、キャストの皆さんの映画にかける想いや行動にも感動してしまうんです。いまやテレビでも紹介されたり有名芸能人の方の声も多数発信されていて、全国124館での上映が決まっているこの映画ですが、最初は2館でスタートしています。その頃から今まで、監督や出演者の皆さんが絶えることなく舞台挨拶に出続け、記念撮影やサイン、SNSも駆使して、、と言葉で説明してもその凄さをどこまでお伝えできているのかわかりませんが、映画を一人でも多くの人に届けるために。そのためにそれぞれが費やしている時間や、根底にある想いの強さが尋常では無いのです。

 

記念すべきTOHO系での上映初日、TOHOシネマズ日比谷での舞台挨拶の映像が公開されているので、こちらを観ていただければ監督や出演者の皆さんの想いの一端を感じていただけるかと思います。もうこの動画自体が涙活動画なんですよ。

 

 

 

 

 

舞台挨拶に登壇された監督、キャストの皆さん全員の挨拶が本当に素晴らしいので約30分、最後まで観ていただきたいです。このブログではテーマが涙、ということで涙を流された方のトークをピックアップしてご紹介させていただきます。

 

まずは劇中で大車輪の活躍を見せたしゅはまはるみさん。この日はじめて大きなスクリーンでの上映ということで、エキストラやほぼエキストラで出演されているキャストの方々の顔や姿も全部はっきり見えて、それが嬉しかったそうです。まず出てくる感想が自分のことではないのがまた素敵で、言葉をつまらせながらお話されている様子はこのお話だけでぐっときてしまいます。あらゆるところで感じるチームカメ止めの一体感、チーム力をここでも感じられました。

 

そして撮影助手役の浅森咲希奈さん。本当にシンデレラになったような気分で、ありがとうございますという挨拶から、1つ悔しいことがある、という展開に。無名役者無名役者と常に紹介されてきたことが悔しかったので、今度は「期待の若手女優」として紹介されるよう頑張りたい、とのことでした。この映画の多くの出演者さんは、お芝居であったりそれ以外の活動も含めて、この映画の出演前からずっと活動されています。無名役者と言われるのは、はっきりと今までの活動に対する評価を下される瞬間ですよね。それに、あらゆるメディアで無名役者として紹介されることが、俳優の夢であるはずも、ゴールであるはずもありません。そうは言っても、ものすごく波に乗っているこの最中にそういう言葉が出てくるんだなぁということにハッとさせられました。

 

それから、決して大きい役ではない佐渡未来さんや曽我真臣さんも号泣されてて、その様子に上田監督まで涙を流されています。実際、曽我さんは誰よりも舞台挨拶に参加されていて、カメ止め感染者の中には曽我さんに会いに映画館に行く、という方もいらっしゃるほど。佐渡さんもたくさん舞台挨拶に参加されています。

 

これが、全国上映124館が決まってから便乗して参加し始めた、という話ではなくて、ほんとうに小さい規模の頃からずっと舞台挨拶に立たれているわけで、その結果のこの日の涙で、もうそれは愛ですよね。作品や、監督や、共演者や、感染者に対しての。

 

本当に皆さんお一人お一人のお話の奥に撮影の努力や出演者、スタッフさんへの気遣い、お客さんへの感謝が見えて、最高の舞台挨拶でした。序盤の方で「ちょっと巻きで」と言われているのに完全無視ですからね。笑 それだけ全員、溢れ出す想いがあったのだと思います。

 

今も皆さん舞台挨拶は続けられていますが、公開規模が大きくなってきたため出会える確率は低くなってきました。それでも、舞台挨拶が撮影OKなため動画や写真もSNSなどでたくさん公開されていますし、何より監督やキャストの皆さんも日々発信されています。その発信を見て想いに触れてしまうと、どんどん涙腺崩壊から逃れられなくなってしまいますよ。

 

 

そんなわけでこの映画は作品を通して泣ける、そして監督、俳優、一人ひとりの想いを知ってさらに泣ける、全員の努力の結果のポンデミック(公開規模拡大)にまたさらに泣けるということで、大大号泣映画というポテンシャルを秘めています。

 

ですので個人的には涙活として、泣ける映画としても超超オススメの映画ですが、最初から泣ける映画を求めている人に勧めるのは、もっと全面に『泣ける映画』と打ち出している作品の方が、やはり安定なのかもしれません。「涙活」という観点で観た時には、涙を強要しないのがこの映画の特徴なのですから。

 

ですがもし、この映画を観ていてウルッときはじめてしまった皆さんは、まわりを気にせず、遠慮せず涙を流していただきたいと思います。恥ずかしがらなくても、そのとき同じ空間で涙を流している人は、少なくないはずです。それに、この映画で涙を流すとしたらそれはきっと、明日に希望を持っていることの証拠ですから。

 

 

そうそう、それに、すすり泣く音もきっと爆笑の声でかき消されてしまいますからね。

 

 

カメラを止めるな!

 

涙を止めるな!