頭外定位イヤーピース『JIJU JET-2』を買ってみた
2019年にLIZER LABの頭外定位イヤーピース『JIJU』を試してみましたが、そのときは音像の変化などが面白くて何度か使いましたが、やはり装着感に馴染めずに使わなくなっておりました。
そんなJIJUが数度のバージョンアップを経て『JIJU JET-2』として発売されるということで、クラウドファンディングで募集が掛かっていたので申込みをしておりました。
実際のモノは先月届いていたのですが、仕事でバタバタしていたり、JIJUを試した際に使っていたNOBLE Audioのイヤフォン「FALCON」がどっかにいってしまって見つからなかったので試せずに居りました。(NOBLE Audioの「FoKus Pro」はサイズが合わずに取り付けできなかった・・・)
ちなみに、届いたときに旧JIJUと並べて色々比較写真を撮ってましたので、まずはそちらから・・・。
封筒から取り出して中に入っていたヤツはコイツ。
えぇと・・・なんか見覚えがあるなぁ・・・と思いながらビニールから取り出してみたところ、見覚えのあるケースが登場。
あれぇ・・・?
もしかして??
と、以前買ったJIJUを探し出して並べてみたところ・・・
ケース、全く同じ。
シャッフルをした覚えはないのですが、この時点で左右のどちらが新しいJIJU JET-2か分からなくなってます。
多分、右側の方が微妙に新しそうな気がするから・・・右のケースがJIJU JET-2のはず!!
はい、残念。
間違いでした。
左側のイヤーピースが2セット(LサイズとMサイズ)入っている方がJIJU JET-2でした。
いやいや、ケースが同じだからシャッフルしたが最期、開けてみるまで分からんよ、これは。
JIJUとJIJU JET-2を並べてみるとシリコンのイヤーカップ部が黒いのがJIJUで白っぽく透明な方がJIJU JET-2になります。
取り出してみるとイヤーカップの開き方や、中央部の突起(フェーズプラグ)の形状も違うことがよく分かります。
装着していないから耳垢とか付いている訳じゃないのですが、ホコリっぽい床に落としちゃったらホコリがいっぱい付いちゃった・・・。
ちなみに、中央のフェーズプラグの形状はイヤーカップをひっくり返してみるとよりよく分かります。
右側のJIJUのフェーズプラグは先端が丸く頂点に小さな穴があるだけですが、左側のJIJU JET-2ではフェーズプラグの先端が三角錐状になっていて中央の穴以外に側面に大きな穴が空いています。
これだけでも音の出方が随分違うだろうなぁと推測できます。
ここまでが7月3日の夜までのお話。
で、お盆休みに入るし、そろそろいい加減に試してみようかな・・・と、まずはJIJU JET-2を試す環境整備から始めることに。
前述の通り、JIJUを試した際に使っていたFALCONはどこかに飛んでいってしまいました。(マジでどこ行ったんだろ?)
なので、JIJU JET-2を試すためのイヤフォンから調達をしなければならない訳です。
いろいろと探していたのですが、如何せんイヤフォンは移動時に音楽を聴くためだけにしか使わないので、そんなにコストをかけるつもりもありません。
また、ワイヤレスイヤフォンはNOBLE AudioのFoKus Proで満足しちゃっているので、今更他のワイヤレスイヤフォンを買うつもりもありません。
・・・さて、どうする?
困りつつ、たまたま見ていたインプレスのAV Watchを眺めていたらqdcの「Superior」がイイぞという記事を見つけ、ソッコーで購入をしてみました。
尚、今回のブログはあくまで「JIJU JET-2」の使用感に関するネタなので、qdcのSuperiorのレビューに関しては私も購入の参考にしたAV Watchの記事をご覧下さいませ。
私も概ね同意見です。
でも、価格帯が違うから同一視できないけれど、やっぱりNOBLE AudioのFoKus Proって出来が良いんだなぁ・・・と、実感。
さて、Superiorを開封するとqdcのイヤフォンケースが登場します。
そんなに高級感はないものの、約1万4千円のイヤフォンのケースとしては表面の布感などの手触りは結構好感が持てます。
で、中にはSuperior本体とお掃除用のブラシが入っていました。
イヤフォンのシェルはそこそこ高級感があり格好イイです。
黒いバージョンもあったのですが、赤で正解だったかな。
因みにイヤフォンケーブルは汎用性のあるIEM 2pin(4.4mm)なので、様々なケーブルをつなぎ替える楽しみも有りそうです。
私も某社の某ケーブルを買いましたが、今回のレビューに含めちゃうとややこしいのでまたどこかの機会で・・・
イヤフォンケースでは無く、箱の方には交換用のイヤーピースがサイズ別に入っておりました。
今回は使わないけど。
さて、前置きが相当に長くなりましたが、いよいよ本番です。
まずはSuperior標準のイヤーピースで各曲を聴き、まずは初代「JIJU」を装着してSuperior標準の状態との聴き比べです。
やっぱり、こうやって実際に装着するとかなり異様な見た目よね。
3年半以上ぶりに耳の穴にJIJUを入れますが、そう・・・この異様な装着感。
決して心地良い装着感ではなく、通常のイヤーピースよりも耳の中の異物感は相当なモノが有ります。
長時間装着すると耳、痛くなるかも・・・と、不安になるほど。
まずはジョン・ウィリアムズ指揮、ウィーンフィル交響楽団の「JOHN WILLIAMS IN VIENNA」からスター・ウォーズのテーマを。
出だしのファンファーレから耳にへばりついていた音がほんの少し外に定位してステージが広がりました。
が、低音の量感がかなり減衰し、オーケストラの持つ迫力が無くなってしまいます。
中~高域に関しても僅かに減衰をしていますが、音の粒立ちなどはしっかりとしているのでなんとか聴けます。
でも、せっかくオーケストラ作品を聴いているのにこの迫力の無さは・・・悲しいなぁ。
次にBABY METALのイギリスでのライブ盤「LIVE AT WEMBLEY」から、最終曲のRoad of Resistance。
曲前のアナウンスと会場の歓声が若干耳の外から聞こえてくるのですが、低音が引っ込んでしまっているので歓声や拍手もパラパラとどこか他人事で没入感に欠けてしまいます。
演奏が始まってもメタルならではの重低音がどこかに行ってしまっているので、まったく音楽を聴いている感じがせず、これは相性最悪でした。
次は声楽もので、ソプラノ歌手佐藤美枝子さんの「さくら横ちょう」から1曲目のさくら横ちょう。
この曲はソプラノ歌手のボーカルとピアノによる演奏なので、低音の減衰による作品イメージの崩壊はありませんでした。
元々非常に静かなピアノの伴奏と佐藤さんの透き通ったソプラノボイスで歌い上げる作品で、ステージも広く奥行きを感じる録音なのですが、これはJIJUと相性が良く、耳と頭の中に定位していたステージ感がスーッと耳の外に抜けていく感覚で、美しい音の響きと広がりを楽しむことが出来ました。
次はジャズピアニスト上原ひろみさんのピアノソロ作品「Spectrum」からBlackbird。
この曲はバラードでは無いけれど、上原さんの力強くスリリングな演奏・・・ではなく、美しく温かいメロディーをゆったりと聴かせてくれる演奏なので、重低音成分はほとんど無いのですが・・・
中央に設置されたピアノと、そこから発せられる音がフワッと響き渡るステージ感の広がりが心地良かった・・・のですが、やはり低音がスポイルされるというのはピアノの左手の音に影響が有るモノで、頭の中に定位しているのにどこか遠くで演奏をしている様に感じてしまいます。
総じて音は耳から少し外側に広がりを感じるのですが、低音の減衰はかなり致命的で使うことのデメリットの方に目が行ってしまいます。
では、今度のJIJU JET-2はどこまで進化を果たしたのでしょうか!?
SuperiorからJIJUを取り外してJIJU JET-2を装着します。
やっぱり存在感あるなぁ・・・
耳に入れる際の違和感もあまり変わらないかな。
このイヤーカップ、耳の中ではどんな形状になってるんだろ??
何はともあれ肝心なのは音です。
まずはジョン・ウィリアムズ指揮、ウィーンフィル交響楽団の「JOHN WILLIAMS IN VIENNA」からスター・ウォーズのテーマ。
おっ!?
出だしからJIJUとは全く違う「迫力」を感じます。
低音の減衰がJIJUに比べると非常に少なく音場の広がりはしっかりと感じるので、オーケストラならではの迫力やホールの広さもしっかりと楽しむことが出来ます。
また、音の解像度も格段に上がっており、各楽器の音が団子にならずに一つ一つが綺麗に聴こえてきます。
頭外定位に関しても、元祖JIJUよりも若干耳の外側に音が広がっていくので、オーケストラのようなホールトーンが重要な作品にはメリットが大きいかもしれません。
次にBABY METALの「LIVE AT WEMBLEY」から、最終曲のRoad of Resistance。
こちらも低音の減衰が少なくなったことで、演奏前のアナウンス、歓声や拍手に厚みが出てグッと実在感が出てきました。
標準のイヤーピースに比べると低音が減衰しているので迫力だけで言えば、標準のイヤーピースを使った方がメタルの重低音を楽しめるのですが、よくよく聴いてみると標準のイヤーピースで聴くよりもJIJU JET-2で聴く方が音の解像度が高い気がします。
こうやって聴くと、標準のイヤーピースはあまり解像度が高くないのかもしれません。
ただ、とにかくメタルならではの熱い、厚い音を楽しみたい!ということであればJIJU JET-2よりも標準のイヤーピースの方がメタルらしい音を楽しめそうです。
次はソプラノ歌手佐藤美枝子さんの「さくら横ちょう」から1曲目のさくら横ちょう。
こちらはJIJUでもかなり相性の良かった作品で頭外定位をじっくりと楽しめましたが、JIJU JET-2になると更に音の解像度が上がって左右へのステージが広がったため、ピアノの位置と佐藤さんの立ち位置がしっかりと定位し、声が響いて左右のホールの端に消えていく様がしっかりと描かれています。
ピアノの左手の音も厚みが出てきたため、この作品を聴くときはJIJU JET-2に替えなきゃダメかな・・・と感じるほどに歌声に浸ることが出来ました。
最後は上原ひろみさんの「Spectrum」からBlackbird。
こちらも「さくら横ちょう」と同じような方向性でJIJU JET-2の魅力を感じることが出来ました。
しかし、この曲の演奏自体、パワフルで情熱的な上原ひろみさんの演奏を堪能する曲では無いため、タイトル曲の「Spectrum」を聴いてみることに。
冒頭から低域鍵の強打から始まる力強い演奏なので、低域の減衰が気になるかな・・・と思いましたが、JIJU JET-2の空間表現力の高さと解像度の高さのおかげでそこまで気にならず、一気に聴いてしまいました。
この作品、オーディオで聴くときにはボリュームを大きめにし、低音鍵の強打で体に振動を感じるくらいにして聴くと上原ひろみさんとピアノが眼前にドン!と現れるのを楽しんでいるのですが、それとは異なる「空間の広がりを家の外に持ち出せる」という楽しみ方を外に持ち出せるというのがこのJIJU JET-2のメリットなのだと改めて実感できました。
ただ、やっぱりこの形状のイヤーカップを耳に入れていると違和感が・・・
ズッと付け続けていると慣れるもんなのかな・・・
ちなみに、椎名林檎さんの「三毒史」から獣ゆく細道を聴いてみましたが・・・これはBABY METAL同様に低音の減衰が目立って音楽の音力が無くなってしまいダメでした・・・。
結構曲や作品との相性があるJIJU JET-2でしたが、相性がバッチリの作品を聴けば「これが頭外定位なのか」と、耳の若干外側に音が広がってい楽しさを味わえる面白いイヤーピースでした。
汎用性が無いのは辛いですが、イヤフォンの場合、曲によってケーブルを変える人もいるそうなので、それと同じように曲や作品に合わせてJIJU JET-2を楽しむのもアリかなと思います。
気になった方は是非、お試し下さいませ。