TALK EVENT 寺島靖国x稲岡邦彌 in diskunion Jazz TOKYO | UNTITLED

TALK EVENT 寺島靖国x稲岡邦彌 in diskunion Jazz TOKYO

7月14日(金)18時から、御茶ノ水にあるdiskunion Jazz TOKYOにて寺島靖国さんとECMレーベルの日本の元締め稲岡邦彌さんによるトークイベントがあるということで、仕事を定時きっかりで終えて急いで御茶ノ水へ。

 

寺島さんと会うのはいつぶりだろう?

去年4月に吉祥寺の「音吉MEG」で開催された山中千尋さんと宗教学者の島田裕巳さんとのトークイベントの時かなぁ。

何せ以前は毎週という感じでお会いしていたから1年以上お会いしないと「久しぶり」という感覚になってしまいます。

 

 

大慌てで出てきた甲斐あり17時50分前には御茶ノ水のdiskunion Jazz TOKYOに到着。

 

 

入り口にはちゃんと本日のイベントチラシが掲示されておりました。

 

 

・・・・寺島さん、いつの写真だよ・・・・。

 

ちなみに稲岡さんが4月に上梓した本が「新版 ECMの真実」。

寺島さんは寺島レコードからニルス・ラン・ドーキーの作品(ヨーロッパではLPのみでリリース)をCD化した「Yesterday's Future」が発売になるということで(本日のイベントで先行販売)2人でイベントを行うことになった様です。

 

それにしても、あの寺島さんがECMレーベルについて語る日がこようとは・・・

 

だって寺島さん、以前はECMレーベルの作品のことをケチョンケチョンに言ってたんだもの。

 

 

 

 

さて、店内に入ると階段を上ってすぐ左のレジ前にイベント用スペースが用意されておりました。

 

イベント開始10分ほど前ではありますが・・・・3名ほど席に座られているだけで後は・・・

まぁ、18時スタートだものなぁ・・・普通のサラリーマンはおいそれと来られる時間じゃないよなぁ。

オイラだって勤め先が隣駅の秋葉原だから何とか来られたけど、17時や17時半に仕事を終えて頑張って来ようとしても18時スタートに間に合わないって諦めちゃうよなぁ・・・。

 

 

と、思いながらイベント開始まで店内を物色。

でもなかなか新譜を買う勇気が出ない・・・・だって、ネットで注文しているCDとダブりそうで怖いんだもの・・・・

 

 

 

そうこうしているとなんだか見覚えのあるシルエットと頭が・・・おぉ、ジャズタクシーの藤田嘉明さん。

久しぶり!!

挨拶を交わして席に着くと、寺島さんと稲岡さんも登場してイベント開始の準備に入ります。

 

 

 

 

「なんだかずいぶん(お客さんが)少ないねぇ」

と、寺島さん。

 

見渡すと・・・私を含めて席に座っていたのは10名ほどでしょうか。

これはジャズ喫茶の経営で集客に苦労していた寺島さんも苦笑いをするしかありません。

 

 

とにもかくにも、いよいよイベントのスタートです。

 

 

 

diskunionの店員さんに促されて口火を切る寺島さん。

 

「私はねぇ稲岡さん、ECMの作品はジャズを小難しいものにして、結果として今のジャズ離れを引き起こしたと思っているんですが、そこのところ、どうお考えですか?」

と、いきなりの寺島節&先制攻撃です。

 

 

「するとあれですか、私は戦犯ですか?」

「そう!戦犯!!」

「じゃあ戦犯から言わせてもらえれば、ECMの作品は何も難しくないですよ。」

 

お二人とも絶好調(?)です。

 

 

寺島さんはECM作品の多くが、いわゆるスタンダードの演奏を中心とした作品ではなくミュージシャンのオリジナル作品が多いことにも気に入らないようで、

 

「私は常々、スタンダード曲の重要性を訴えてきたし、多くのジャズファンもスタンダードを求めていると思うんですが、ミュージシャンはそう思っていないようで、とにかくオリジナル曲の方が上だと言わんばかりにオリジナル曲ばかりやりたがる。これについては稲岡さんはどうお考えですか?」

「オリジナルが上だと思っているとは思わないけれど、自分が表現したい音楽、世界観、実力を表現するためにオリジナルの曲を作って演奏しているんじゃないですか。」

「いきなりそんな正論言われてもねぇ・・・(笑)。でもね、稲岡さん、私はねオリジナルをどう解釈して、どう表現をしていくかというのがジャズミュージシャンの実力だと思うんですよ。」

 

寺島さんお得意のスタンダードV.S.オリジナル曲論争のスタートです。

 

 

「スタンダードというのは繰り返し演奏されてきた、多くの人に愛されてきたからジャズファンはそれをミュージシャンがどう表現してくれるのかというのを聴きたいんですよ!それを、わけのわからないオリジナル曲ばかりやられてもコッチはシラケちゃうんですよ。」

観客側からは「スタンダードだってその当時はオリジナル曲だった」というツッコミも。

それに対して寺島さんは

「最近のミュージシャンのオリジナル曲っていうのはメロディーになっているのかいないのかも分からないような曲ばかりで、10曲聞いて1曲「お!」と思うものが有るか無いか。」

と返すも、稲岡さんからすかさず

「それは寺島さんが(作品を買う)見る目がないっていうだけじゃないの?」

というツッコミ。

 

 

そんな寺島さんも、トルド・グスタフセンの作品やキース・ジャレットの「Budapest Concert」で演奏されているIt's A Lonesome Old Townの演奏に魅了され、最近はECMの作品も聴くようになった様です。

 

会場にいらしていたお客さんからも好きなキース・ジャレットの作品は「ザ・ケルン・コンサート」だという話が出たところで、

 

「稲岡さん、ケルン・コンサートは売れてますよね。」

「世界レベルでみると35万枚くらいだったかな、すごく売れてます。」

「なんでそんなに売れるんですか?圧倒的ですよ。」

「音楽好きな人たちに、ジャンルを超えて愛されているからじゃないですかね。」

「なんで愛されてる?」

「彼は物心ついた頃からクラシックからフォーク、ブルースを含め様々な音楽の体験がバックグラウンドとしてある。だからそれがすべて頭に、体にしみこんでいるから、彼が生み出すフレーズにはそういった全ての音楽の体験から得たものが詰まってるんですよ。」

「確かにね、あのケルン・コンサートでもどんどんと新しいメロディーを探していっている様な感じがしますよね。あれは最初から頭の中で作り上げて、演奏で繰り広げているんですか?それとも全くそういった用意がない無の状態からその時その時で次の音を、メロディーを探していっているんですか?」

「後者じゃないですかね。」

「そうだよねぇ、そうあって貰いたいよねぇ。でも、ある時からそうじゃなくなっているんじゃないですか?」

「そうですね。彼は精神的にも体力的にもそれができなくなってしまった時期があって」

 

 

最終的に「ECMは小難しいものが多い」という寺島さんの意見自体は変わりませんでしたが、それでも以前のような「ECM作品は視界に入るのもイヤ」というわけではなく、トルド・グスタフセンやキース・ジャレットの一部の作品は絶賛するまでに変節?進化?をしているとのことでした。

 

 

他にも様々な話が出ましたが、本ブログではここまで。

イベントは大盛況・・・・とはなりませんでしたが、非常に熱く楽しいお話を聞けて非常に楽しい会となりました。

 

diskunionさん、どうもありがとうございました!!

 

 

 

 

 

で、寺島さんのイベントと言ったらここで終わる訳がありません。

 

稲岡さん、会場にいらしていた関係者(?)の方と2次会に突入です。

 

 

 

総勢7名で神保町のジャズ喫茶『アディロンダックカフェ』に移動して2次会の開始です。

 

 

 

2次会ではここでは書けないジャズ界の大問題についてのやり取りばかりでしたが、齢80歳にして結構ボリューミーなナポリタンを間食した稲岡さんに一同が呆気にとられていたら、

 

「いや、ナポリタンには思い出がありましてね・・・」

 

と、昔付き合っていた彼女との話になると、そういう話が大好物の寺島さんは「なんでさっきのイベントでそういう話しないの!」と満面の笑み。

 

他にも、昔、稲岡さんが某ジャズ雑誌で某評論家の先生からECM作品をケチョンケチョンに書かれた時には「ふざけるな!何もわかってない評論家に適当なこと書かせやがって!!今から行くから待ってろ!!」と、編集長に電話をしてタクシーで出版社に乗り込んだ話も。

すかさず寺島さんに「寺島さんだったら、どんなに悔しがっても絶対にできないですよね。乗り込むとか。」とツッコむと「だよなぁ、俺にはそんなこと、絶対にできないねぇ。」と苦笑い。

 

「こういうさぁ、稲岡さんの本音の部分、芯の熱い部分をもっとイベントで話してもらいたかったなぁ」

と寺島さんが悔しがると、稲岡さんは飄々と

「だって、そういう話振らなかったじゃない」

と返していました。

 

 

「やっぱりアレだな、(イベントの)第2弾をやらないとダメだな。ねぇ、稲岡さん!」

「いいですよ」

 

こうやって次回イベント開催が決まった(?)のでありました。

 

「次回はもっと遅い時間に始めてもらわなきゃダメだね」

は、お二人の総意でございました。

 

 

 

気付けば藤田さんをはじめ7人で来たうちの4名が帰られ、イベントには来られなかったものの2次会から参加した稲岡さんのトリオ・ケンウッド時代の後輩の方と、稲岡さんのお知り合いの画家の方の2名がさんかし、22時を回っても熱い議論(?)が繰り広げられておりました。(オイラ以外全員シルバーヘアで平均年齢80超え)

 

ちなみに、寺島さんがイベントでも2次会でもしきりに「そんな正論は聞きたくないよ!」と言っていたので、稲岡さんのとあるスイッチが入ってしまったらしく、「寺島さんね、いまはセイロンなんて言わないんですよ!・・・えぇと、今は何だっけ・・・えぇと、あそこ・・・えぇと・・・・・・・・・・・・・・・・あ、スリランカ!!」と、寺島さんが「正論」と言うたびに「スリランカ!」と訂正するモードに入ってしまいました。

 

そのたびに稲岡さんの隣の席に座っていた後輩の方が「こういう人なんですよ・・・」と苦笑い。

「そうだよねぇ、こういう人だよね、部下に鉛筆を投げつけたりね!」「そうそう」

・・・稲岡さん、昔は武闘派だったようです・・・

 

 

 

 

そんなこんなで楽しい2次会は終わり、解散となりました。

 

稲岡さんと部下の方は新宿線に乗って帰るということで表通りでお別れ。

私と寺島さんは御茶ノ水駅まで一緒に歩いて帰りましたが、その道すがら「いやぁ、きょうはねぇ、とっても酔っぱらってるなぁ。これがね、嫌な酔い方じゃないんだよ。実に楽しい、気持ちい酔い方だねぇ。」と気持ち良さそうに軽く千鳥足。

たまにヨロヨロっとする寺島さんを支えながらオーディオ話もしつつ、駅まで歩いて帰ったのでありました。

 

 

 

ちなみに、2次会で80歳メンバーが激論(?)を交わしている最中に隣の席に2人連れのお客さんが来たのですが、こちら側の席に置いていてdiskunionの紙袋(稲岡さんの荷物)を見たお客さんが「あ、diskunionの紙袋。もしかして寺島さんのイベントの帰りかな。」と話していたので、「あ、本人たちが2次会やってます」と説明をしたら驚いていたのが面白かった。

そのお客さんも最後までは居なかったらしいのですが、イベント中のJazz TOKYOにいらっしゃってイベントの様子を眺めていたそうです。

 

 

 

それにしても稲岡さんが80歳、寺島さんは85歳・・・・80代ってこんなに若くてエネルギッシュで活動的だったっけ・・・と、圧倒される45歳なのでありました。

 

寺島さん、次はオーディオイベントでお会いしましょう!!