今年も出ました『ジャズ批評 226号 マイ・ベスト・ジャズ・アルバム2021』 | UNTITLED

今年も出ました『ジャズ批評 226号 マイ・ベスト・ジャズ・アルバム2021』

何年前から始まった企画だか覚えておりませんが、今年も『ジャズ批評』で新春の名物企画「マイ・ベスト・ジャズ・アルバム」が掲載された226号が発売になりました。

 

 

ジャズ批評 2022年 03 月号 [雑誌]

 

恥ずかしながら今年も2021年に発売されたジャズ作品から5枚ほど、当方の主観のみで素晴らしいと思った作品をチョイスさせていただきました。

どんな作品をチョイスしたのか・・・は、ジャズ批評226号をご覧いただくとして、ジャズ批評では掲載できなかったけれどおススメしたい作品はたくさんあります。

 

そんなわけで、2021年に発売されたジャズ作品のおススメをご紹介。

(ちなみにおススメ順というわけではございませんので予めご了承ください)

 

 

まずは韓国出身の作曲家JIHYE LEE率いるビッグバンドJIHYE LEE ORCHESTRAの『Daring Mind』。

Daring Mind

 

ピンクのジャケット(両方の意味で)が映えてます。

1曲目冒頭からブラス隊とスネアドラムでパララ、パララ・・・と刻まれるリズム、ピアノの1音で訪れる静寂・・・これから始まるストーリーに期待が高まります。

基本的にスウィングではなく非常にクールで抑揚に富んだ曲が多いので、ノリノリで聴くというよりも前のめりで聴き込んでしまう作品。

4ビートジャズ的な作品は7曲目の「Why is That」くらいかな。

軍隊の様に非常に統制された演奏で、一聴して非常に格好良く、聴き込めば聴き込むほどに新しい発見があるので何度でも聴きたくなる秀盤です。

この格好良さは・・・聴いてもらわないと分からないかなぁ。→試聴あり

 

 

次はピアニストHelen Sungの『Quartet+』。

Quartet+

いやはや、この作品もとにかく凄い。

1曲目の「Feed The Fire」はHelen Sungのピアノが疾走する爽快なジャズナンバー。

そうかと思えば2曲目は弦楽四重奏のHarlem Quartetも参加をしてバラードをしっとりと聴かせてくれます。

弦楽四重奏といえば上原ひろみさんの2021年作品「Silver Lining Suite」でもピアノと弦楽四重奏の構成で演奏されていますが、本作はカルテット+カルテットのオクテット構成。弦楽四重奏と演奏をするの、流行ってるのかな・・・?

本作はHelen Sungの表情豊かなピアノ演奏により、どの曲も聴きどころ満載でおススメです。→試聴あり

 

 

次はおススメするまでもないコチラ。TONNY BENNETT & LADY GAGAの『Love For Sale』。

Love For Sale

2014年にリリースされたこの2人の競演作「Cheek to Cheek」には「まさかこの二人が組んで作品を出すなんて!」「ていうか、トニー・ベネット、80歳後半じゃなかたっけ?」とビックリしつつ、現代のアメリカのトップ女性歌手が伝説の老ジャズ歌手とジャズ作品を発表するという、アメリカエンターテイメント界のジャズに対するリスペクトに感動すらしましたが、それから7年、2021年に本作が発表されました。

(2006年にトニー・ベネット80歳記念アルバムとして各方面のミュージシャンとの競演作、2011年にはレディー・ガガ、エイミー・ワインハウスを含む歌手との競演作を出しており、いずれも素晴らしい作品でした。)

トニー・ベネットは2020年にアルツハイマーに罹患したという情報が流れ、本作のレコーディングが罹患後なのかどうかはレコーディングノートがアルバムに無かったためわかりませんが、およそ90歳をとうに超えているトニー・ベネットの歌声にはとにかく驚きです。そしてそれに寄り添うように、尊ぶように歌い上げるレディー・ガガはまるで聖母のよう。

本作もトニー・ベネットが活躍した1950~1960年代のジャズがエンターテイメントの中心だった頃の華やかさが最高です。

そう、これがエンターテイメントとしてのジャズのど真ん中です。

 

 

次は日本のピアノトリオ作品。外山安樹子トリオの『レターズ』。

レターズ

ピアニスト外山安樹子さんの3年ぶりのトリオ作品。

外山さんの作品はいつも安定の高水準作品なので安心して楽しめます。これは10年以上組んでいるベーシスト関口宗之さん、ドラマー秋葉正樹さんとの強い絆、阿吽の呼吸があるからなのでしょう。

軽やかで小気味良く展開していく1曲目の「Yardbird Suite」、どストレートなテーマ演奏からむせ返るような熱帯夜の様に熱く、暑苦しく展開していく「Summertime」、情熱的で力強くスピーディーに展開していく「So In Love」など、聴き応えのあるジャズスタンダードがたっぷりでとにかく楽しめます。

が、個人的に大好きな曲「My One And Only Love」を演ってくれているだけで大満足。あの切なく甘いメロディーを切々と演奏してくれているのがたまりません。→試聴あり

 

 

次は構成がかなり挑戦的で面白い岩崎良子&竹内直の『Meditation for Organ & Tenor Saxophone』。

Meditation for Organ & Tenor Saxophone

テナーサックスの竹内直さんとパイプオルガンの岩崎良子さんのデュオ作品。

果たしてパイプオルガンがジャズになるのか・・・?

なにせ1曲目はバッハの「Goldberg変奏曲」のアリア。しかもパイプオルガンのソロで始まるため、「クラシックのアルバムだったっけ」となるのだけれど、途中で竹内さんのテナーが合流すると、竹内さんのアドリブによって「ジャズ」になってしまう面白さがあります。

クラシック曲も多数演奏されていますが、「My Favorite Things」や「Greensleeves」などがおススメです。

初めて聴いた時、たまたま知っていた本作プロデューサーの坂本さんに興奮気味にメッセージ送ってしまいました。

ちなみにパイプオルガンは聖路加国際病院のチャペルに設置されているものだそうで、そんな環境で録音されているのでテナーサックスのホールトーンも非常に美しいのが本作の聴きどころでもあります。
 

 

次は、1月からTBSの朝の顔(?)になっているピアニスト高木里代子トリオの『Celebrity Standards』。

Celebrity Standards

セクシー過ぎるジャズピアニストとしてテレビなども出演している高木さんのピアノトリオ作品。

本人曰く「本気のジャズアルバム」ということで、1曲目の「When You Wish Upon A Star」、2曲目の「All Of You」とジャズスタンダードを直球のハードバップで演奏を繰り広げ、これがまた心地良いのなんのって。

7曲目の「Take Five」は終始ロック調のリズムで展開され、そのリズムに縦横無尽にメロディー展開をしていく高木さんのピアノは紛れもなくジャズ。

高木さんオリジナル曲の「MIYABI」のメロディーの美しさはため息が出るほどで、胸が熱くなってきます。

でも・・・本作も私が大好きな曲「My One And Only Love」を演奏しているんですよ。もうね、最高です。→試聴あり

 

 

 

お次はちょっと方向性を変えて、スカパラの様なジャズバンドCalmeraの『誰そ彼レゾナンス』。

誰そ彼レゾナンス

お恥ずかしながら結成15年というのにCalmeraの作品、初めて買いました。

そもそもこの作品を初めて知ったのが、お笑いのカンニング竹山さんがこのCalmeraと共演をしたタケヤマカルメラの「ヘイ・ユウ・ブルース~許せ、友よ~」を聴いてからでした。

以前もブログで書きましたが、私、カンニング竹山さんのオンラインサロン(?)『竹山報道局』に参加をしております。

なので竹山さんの活動は頻繁に拝見しているのですが、タケヤマカルメラの「ヘイ・ユウ・ブルース~許せ、友よ~」を聴いて心が震えたわけですよ。天国の友(相方で故人の中島忠幸さん)への叫びがリアルで、力強くて、まじめで、切なくて。

で、そんな竹山さんのトークライブ会場で購入したのがこのアルバムでした。

「エンタメジャズ」と銘打たれた作品で、とにかく楽しい1枚。

でも、やっぱり「ヘイ・ユウ・ブルース~許せ、友よ~」だなぁ。

以下にタケヤマカルメラの「ヘイ・ユウ・ブルース~許せ、友よ~」と、元ネタの左とん平さんの「ヘイ・ユウ・ブルース」を貼っておきます。どちらも格好良くて最高です。

 

 

そして忘れちゃいけない歌手MAYAの『Billie』。

Billie (Blu-spec CD)

MAYAさんとはもう何年のお付き合い(アーティストとファンとして)でしょうか。

コロムビアからメジャーデビューする少し前からだから・・・18年以上?

一時期、のどの調子を悪くして辛そうだった頃は見ていて、聴いていて心配をしていたけれど、それから復調をしてしっかり自分の歌い方を確立してからは、自分が歌いたいものがより明確になったのか作品作りに今まで以上に意欲的になり、アルバムタイトルをオリジナル曲で発表したり、今作では女性ジャズ歌手の道を作り上げたビリー・ホリディに捧げた本作を発表。

個人的にはビリー・ホリディというと非常にブルージーで「奇妙な果実」が頭に浮かんでしまいますが、本作には「奇妙な果実」は収録されていません。直接聞けていませんが、やはりあの曲は黒人による差別を受けた歴史を切実に歌う歌なので、そういうバックボーンのない日本人の自分が歌うべきではないと思ったのかもしれません。

そんなMAYAさんの想いを実現するために支えるのは、ピアノの二村喜一さん、ベースの新岡誠さん、テナーサックスの高橋康廣さん、そしてドラムの松尾明さんという勝手知ったるメンバー。

息の合った5人の演奏が音質にもこだわって収録されており、5人の息遣いをリアルに感じることができる名盤になりました。→試聴あり

 

 

最後はジャズジャイアントのベーシスト、CHARLES MINGUSの『LIVE AT CARNEGIE HALL』。

LIVE AT CARNEGIE HALL (DELUXE EDITION)

この作品、「マイ・ベスト・ジャズ・アルバム」でももっと多くの人やレコード会社の人が挙げると思ってたんだけどなぁ。

ジャズライターの高野雲さんが自身のYoutubeチャンネルで嘆いておりました。

伝説のジャズベーシスト、チャールス・ミンガスの1974年にカーネギーホールで演奏をしたライブ盤。

晩年のチャールス・ミンガスの超名盤だと思います。

とにかく内容が濃い。

50年代、60年代の熱がそのまま74年にカーネギーホールで炸裂しているような、ジャズの黒さ、熱、力を存分に味わえます。

チャールス・ミンガスの演奏は当たり前として、メンバー全員の演奏が熱い!!

CD2枚組で全7曲、うち5曲が演奏時間20分以上という作品なのですが、あまりに濃い内容・熱演なので一気に聴き通せてしまう迫力があります。

リイシュー盤なので敢えてマイ・ベストには挙げていなかったけれど、凄まじい盤であることに変わりはありません。→試聴あり

 

 

「まだ聴いてないよ」、「ちょっと気になったよ」という方は是非聴いてみてくださいませ。