巨星墜つ | UNTITLED

巨星墜つ

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2011年10月5日、コンピュータ業界にとって、余りに大きな、大きな巨星が墜ちた。

出張のために家を出かける直前に耳に入ってきた、あまりに衝撃的なニュースだった。



今でも未だ信じられない。



MacOS X 10.7 LION発表の際に、余りに細い体で、声にも力が入っていなかったスティーブ・ジョブズが画面上でスピーチをし

ていた。

なんだか痛々しかった。

そしてその後、病気療養と言うことでAppleを退いた時、いつかまた、元気になってAppleを引っ張っていってくれるに違いな

いと思っていた。


・・・ダメだった。


やっぱり、あの発表会の時には相当無理をしていたんだろうなぁ。

「病気療養」ではなく、人生を締めくくるための有意義な時間を取るためにAppleを辞めたのかな。





Macintoshは憧れのコンピュータだった。

マウス一つで様々な操作ができて、Windows3.1が登場しても尚、Macintoshの先進性は圧倒的だった。



僕が一番最初にMacintoshを買ったのは、高校生に入って間もなく。

ソフマップで売っていた中古のMacintoshII cxだった。

高校生のお小遣いでは結構無茶な買い物だったけど、それで3DC.G.ソフト「infini-D」を使って遊んでいた。

ソフトの方が高かった。

夢のMacintoshは、起動する度に「ジャーン!」と個性的な起動音がして、起動する度に嬉しかった。


その後、高校2年の後半にPowerPC601チップが搭載されたPowerMacintoshが発表され、もの凄く興奮した。

2台目に買ったMacintosh、「PowerMacintosh7100AV / 66MHz」。親を必死に説得して買って貰った。

PowerMacintosh7100AVは、MacintoshII cxよりも圧倒的な速度で3DC.G.のレンダリングをこなし、1ヶ月半かけてモデリングし

て、半年かけてレンダリングした3DC.G.映像を高校の美術の卒業制作として提出した。
最高に楽しかった。



次に買ったMacintoshは、ジョブズがAppleに復帰した後に発売された「PowerMacintosh8600/250」だった。

最後のPowerMacintoshだった。

大学の時にアルバイトをして貯めたお金をドーンとはたいて買った。

すると2ヶ月後、AppleからPowerMac G3シリーズが発表になり、48万円で買ったPowerMacintosh8600は28万円で売られていた。

悔しかった。

悔しかったからPowerMacintosh G3シリーズは買わなかった。



そして、次に買ったのはPowerMac G4の一番最初のモデル(AGPモデル)だった。

AltiVecというベクトル演算ユニットが搭載されたPowerPC730が搭載された一番最初のパソコンだった。
このAltiVecが軍事転用可能という理由で、当時輸出規制が取られた。

ちなみに、この機種は当初CPUの供給力不足で各モデルが急遽50MHzクロックダウンされるという惨事が・・・。
おかげさまで450MHzモデルを予約していたのに、届いたのは400HMzだった。

でも、手元に届いたG4を起動した瞬間、まさに新しい時代の夜明けだと感じた。



そして、IntelのCPU、CoreDUOが搭載されたMacBookを購入し、今は4CoreのXeonCPUが2つ搭載されたMacProを使っている。

MacProは買ってからもう4年程度経つけれど、その動作速度は全く古さを感じない。





Macintoshは憧れのコンピュータだった。

昔買ったパソコン雑誌に載っていた「MacintoshII fx」の定価は160万円だった。

当時使っていたNECのPC-9801RXは売価で20数万円だった。


Appleから追放されていたジョブズは、1991年に革新的なOS「NEXTSTEP」を搭載したコンピュータ『NEXT cube』を発表した。

その独創的なインターフェイスのOSと、真っ黒で真四角なコンピュータ本体のデザインは多くの人を魅了した。

でも、そのあまりに高価な値段と、ソフトメーカーがNEXTSTEP向けにソフトウェアを供給しなかったため、NeXTは強烈な印象

を人々に残しつつ、消えていった。

実は今でも中古の出物があったら欲しいな・・・と思える数少ないコンピュータが「NEXT cube」だ。


この苦境に立たされていた時のスティーブ・ジョブズが辿り着いたOS「NEXTSTEP」のDNAは、今のMacOS Xシリーズ、そしてiOS

に引き継がれている。



スティーブ・ジョブズはコンピュータ界に大きな足跡を残していった。

そして近年はiPodやiPhone等の携帯コンピュータ、iTunesをはじめとするネットサービスを築き上げ、パソコンの市場規模は

全体の数%でありながら、とうとうアップルは株価時価総額世界1位の企業になった。



ジョブズが健在だったら、先日の「iPhone4S」の発表も全く違うモノになっていたかも知れない。

発表時間のほとんどを「iOS5」の機能説明に割いて、最後に「そうそう、最後にもう一つ・・・」と、iPhone5をポケットから

取り出して発表したに違いない。



スティーブ・ジョブズはAppleそのものだった。

スティーブ・ジョブズ、コンピュータ業界の太陽だった。

彼以上のビジョナリーは今後、コンピュータ業界に現れるんだろうか。


56歳というあまりに短い人生だったけれど、恐らくその56年間は最高に濃い56年だったに違いない。



スティーブ・ジョブズ、今まで本当にお疲れ様でした。

様々な夢をありがとう。