寝てもひとり。覚めてもひとり。日中も、夕飯も、風呂だって、全部ひとりで完結する。仕事もそう。職場に着いたら8時間、ひたすら孤独と対峙する。彼女が欲しい。そんな夢物語は二度と呟くものではない。では猫を飼いたい。否、ダメだろう。だって入居中のマンション、ペット不可。
まだ僕が実家から働きに出ていた頃か。難病と闘う母親も実家で生活していた。まだ愛犬チャコはおらず、代わりに桜文鳥を二羽飼っていた。止まり木は設けてはいたが、基本的に家中を勝手に飛び回っていた。放し飼い。人懐っこい文鳥たち。人の周りをウロチョロしていた。
母親に悪意はない。悪いのは病気である。立ち上がろうとして、ふら付いた母は、尻餅をつく。その拍子に二羽の片割れは、潰されてしまった。落ち込む母。仕事で疲弊して帰ってきた僕は、その事実に母親を冷たくなじる。メソメソと泣く母。最低な自分。畜生。病気が憎い――。