僥倖、その時の光 | 相馬圭祐オフィシャルブログ「西陽で部屋の畳が焼けていく」Powered by Ameba

僥倖、その時の光

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仕事帰り。



電車に乗る。



観たいテレビ番組がある。



今の世は便利だ。



携帯電話でテレビが観れる。








その日私は、どうしても観たいテレビ番組があった。



ボクシングの世界タイトルマッチ。



此処は電車内。



普段なら観ることは叶わない。



が、しかし、先述したように今の世は便利である。



私は携帯電話で視聴を開始し、応援に熱を入れていた。



ラウンド間のインターバルに入り、ふと視線を左に移すと、



会社帰りのお父さんが気まずそうに私から視線を逸らした。





ん?






お父さん、






観てましたね?







いやいや、








それならそうと言ってくださいよ。











次のラウンドが始まり、



先程まで私の正面に構えられていた携帯電話は、



私とお父さんの中間地点に構えられる事になった。



お父さんは驚いた表情で私を見たが、



私は敢えてその視線に気付いていないフリをした。







言葉は邪魔になる。









そこには男と男の勝負を見つめる、男と男。








ならば納得など不要。










わしらの魂は、すでに戦場ぞ。









幸い応援していた選手も同じようで、


盛り上がるポイントが私と酷似していた。





再びラウンド間のインターバル。



試合中のボクサーさながら私とお父さんも一息入れ、視線を合わす。





そしてラウンドが始まり構えられる携帯電話。





携帯電話はもう中間地点というより完全にお父さん側に移動していた。





お父さんは私の降りる駅の一つ前で降りてしまったが、



その去り際、










「ナイスファイト」








と言ってくれた気がした。









あくまでも、気がしただけだが。






お相手は私、相馬圭祐でした。