法螺と喇叭は大きく吹け
花子さん、静止してるなんて珍しいですね。
さて先日、電車待ちをしておりましたら後ろから、
「ダイカイオー……」
と寂しげな呟きが聴こえてきました。
あぁ、私も疲れているんだな、などと思い、
大して気にも留めず、
いつも通り視認できる建物全ての輪郭を人差し指でなぞるという作業に戻っていたところ、
またしても後ろから、
「本当はゴールドが良かった……」
などと聴こえてきまして、
ん?
これは幻聴ではない。
そう気付いた私が後ろを振り返ってみるとそこには、
ダイカイオーのストラップを握り締めた男の子、そしてそのお父さんであろう男性がいました。
「案ずるな少年!!俺はここにいるぜ!!!」
などと振り返れたらどんなにいいだろう、
応援してくれてるお子さんに人見知りしている場合か、
でも気付いてくれなかったらそれ程恥ずかしい事はないな、
が、しかしこの子はきっとゴールドが、源太が好きに違いない。
暫しの葛藤の後、
よし、いこう。
その刹那、
『3番線電車がまいります』
私の決意は15両編成の鉄の塊に掻き消されたのであった。
お相手は私、相馬圭祐でした。