ラブ・レターズがよかった件について | わくわく海賊団

わくわく海賊団

Compass of Your WakuWaku

 

 青山通りから

 ちょっと入った裏道に、

 先代から受け継がれる生姜焼きが

 名物の定食屋さんがあります。

 

 そのお店は、

 5人ほど座れるカウンター席と

 テーブル席がふたつほどありまして、

 2階が住居になっています。

 

 小学校のときから

 仲のいい友人の家の近くだったので

 その友人と会うときには、たいてい

 そのお店で食事をしていました。

 

 あるとき、そのお店の

 常連さんらしきおじさんが

 名物の生姜焼きを食べながら

 泣いている場面をみました。

 

 数年にいちど通う程度でしたが、

 その"涙の意味"は理解できました。

 

 数年ごとにそのお店で遭遇した

 いくつかの場面をご紹介します。

 

 1.お店のご主人(2代目)が

  厨房で料理をしている奥で

  奥さんがお勘定を手伝っている。

  そこに小学生の息子さんが

  おともだちを連れて帰宅。

 

 「ただいまー」

 「おう、おかえり」

 「おじさん、こんにちはー」

 「おう、今日も食べていくんだろー」

 「手を洗ってきなさーい」

 

 2.ご主人はあいかわらず

  厨房で料理をしているけれど、

  ことあるごとに椅子に座っている。

  腰に手を当てている様子から

  腰があんまりよくないみたい…。

 

 「たーいま」

 「おう、今日は早いなー」

 「フランス語休講になったからねー」

 

   3.「やめることない!!」

  「もう決めたことだから!!」

 

 4.息子さんが厨房に入って

  一所懸命に料理をしているけれど、

  味はガラリと変わってしまった…

  お店も空席が目立つようになった。

 

 5.久しぶりに行ったら、

  お昼時なこともあってか

  お店はかなり混んでいた。

  あ、なんだかなつかしい味がする!!

  常連さんらしきおじさんが

  生姜焼きを食べながら泣いていた。

 

 ほら、おじさんの"涙の意味"が

 なんとなくわかるような気がします。

 

 たった5回だけだけれども、

 そのお店の20数年のドラマ(物語)を

 想像することができました。

 

 たぶん、人間は

 物語性を発現させる力が

 あるんじゃないかな。

 

 一見不可解なことであっても

 物語をどんどんつくり出していって

 不可解を解消していってしまう。

 そして、ある種の満足感が生まれる。

 

 行間を読むだとか、

 物語性を発現させる力って

 意味不明なことが起こっても

 納得できる道筋を生み出します。

 

 そして、じぶんで見つけた

 ストーリーには愛着が芽生える。

 

 今日も、「わくわく海賊団」にきてくださってありがとうございます。

 

 男女ふたりが

 ラブレターを読みあうだけの

 朗読舞台『ラブ・レターズ』

 とてもよかったです。