
・大人気漫画「宇宙兄弟」の魅力/「宇宙兄弟」はなぜ売れる?ーその1
・大人気漫画「宇宙兄弟」の魅力/「宇宙兄弟」はなぜ売れる?ーその2
・大人気漫画「宇宙兄弟」の魅力/「宇宙兄弟」はなぜ売れる?ーその3
(前回の続きから)
「宇宙兄弟の魅力について話そう」ということになると、
「それならゆっくり呑みながら」ということになってしまいそうです。
でもやっぱり「好きなもの」について機会をつくっては
いろんな場所で語らいたくなってしまうのは人の性(さが)かな、と。
今回「宇宙兄弟」を記事にするにあたり構想を練ってみたんですが、
作品の内容に関してはやっぱり「読んでみる」のが一番だと思うし、
中身に関してのレビューや感想はたくさんあるので、
それは他の人に任せようと思いました。
それよりも優れた作品が必ずしもヒットするわけではないなかで、
「宇宙兄弟」という作品がなぜこれほどヒットしたのか、
作者の小山宙哉さんをはじめ編集者の佐渡島庸平さんなど
「宇宙兄弟」を取り巻くまわりの人間にスポットライトを当てることで
見えてきたヒットの要因を考えてみたいと思ったんです。
世の中を動かすのは、人の熱。
ヒットするとかしないとか、
結局はそこに「人の熱」があるかないかだと思っています。
あたりまえのようだけれど、ぼくは凄く大切なことのように思うんです。
プロデューサーの秋元康さんは、
「タレントが売れるための必要条件は、
まわりの人たちが『こいつは絶対売れる』と信じていることだ」と言っています。
十分条件ではないけれど、まわりのその熱は必要条件だ、と。
飲料メーカーのヒット商品も同じような傾向があると思っていて、
「開発者の想い」があるモノのほうが基本的にはヒットしているように思います。
ヒットを考えるうえで重要なのは、
「人の熱がどうやって発生して伝播されていくか」を考えることだと
宇宙兄弟編集者の佐渡島庸平さんも言っています。
「熱に関しては計算じゃ絶対できないですね。
最初に熱を持っているモノを伝播させることはできるけど、
伝播させることで熱を出すことはできないです。」
「小山宙哉さん(宇宙兄弟の作者)は、じぶんだけの『好き』を持ってるんです。
じぶんだけの『好き』を持っている人が、
『その人だけの好き』を世の中に伝播すると、
その人はいちばん最初に世の中に『好き』を伝えた人として価値を持つ、と
ぼくは思っています。」
「小山宙哉さん(宇宙兄弟の作者)は、5巻くらいまでは
ストーリーをどうしようか一所懸命考えていました。
でも、5巻から『じぶんの好きなモノ』で溢れさせることをし出したんです。
そのあたりから作品もヒットし出しました。
ぼくは『じぶんの好き』で溢れさせると、世の中も『おもしろい』と思うと
思っています。ですから『じぶんだけの好き』がわかると、
超一流になるんだと思ってるんです。」
作品の内側と外側
どんな作品でも生み出したときに、
それをプロモーションすることが必要だと思います。
いちばんのコピーは「売れてます」だと言うけれど、
今は作品で溢れるようになってしまっているので、
「いい作品が(作品の力だけで)売れていく」ということは、
ほとんどないように思うんです。
佐渡島庸平さんは言います。
「プロモーションって、作品の内側には理由はないんですよ。
たとえば、映像化するにあたり俳優は誰と誰と誰って、
作品の本質とは全然関係ないんです。」
「これだけ世の中に作品が溢れるなかで、
外側に『(知るための)きっかけ』は絶対必要だと思っています。」
佐渡島庸平さんの「きっかけづくり」で
おもしろいものがあるので紹介させてください。
当初、宇宙兄弟の読者のほとんどが男性だったそうです。
宇宙をテーマにした漫画ですから分かる気がします。
佐渡島さんは何とか女性読者を増やしたかったそうです。
ヒットするためには女性読者の力は絶対必要だと考えていました。
ある日、美容院で髪を切っていて思ったそうです。
「じぶんが髪を切る場所をダサいと思っている人ってあんまりいないだろうな。」
そこで、佐渡島さんは美容院のバックヤードに宇宙兄弟を置かせてもらい、
「休憩時間などに読んでみてください。
それでもし『おもしろい』と思ってもらえたら、
1日ひとりでいいのでオススメしてください。
もしもイメージを損なわないのであれば、
お客さんが読めるところにも置いてくれると嬉しいです。」と、
プロモーションしたそうです。
その後、会社に届くファンレターのいくつかに
「(宇宙兄弟との)出会いは美容院です」というのがいくつかあったそうです。
宇宙兄弟に出てくる登場人物は魅力的です。
多くの人が読後の感想で「登場人物が魅力的だ」と言います。
ぼくもそう思います。でも少し付け加えたいな、と。
宇宙兄弟は「登場人物が、内側も外側も魅力的だ」と。
今日もわくわく海賊団にきてくださってありがとうございます。
子供の頃
プラネタリウムでしか見たことがないような
満天の星に出会った時
私の心臓がドキドキと鳴っている音がきこえました。
初めて望遠鏡をのぞいて土星の輪が見えた時も
同じようにドキドキしました。
私が夢だった天文学者になれたのは、きっと
若き日の「ドキドキ」を信じたからです。
金子シャロン
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