会食のさい、「企業訪問で部屋に通された場合、

立って待っているほうがよいのですか」との

質問を受けました。

そこで、本日は人を待つ姿勢について触れて

みたいと思います。

 

自宅、オフィス、どちらの訪問に関しても、

訪問する相手が直接迎えてくださる、

あるいはご家族や案内役の方が部屋に通して

くださることがあります。

昨今、和室に通されることは少ないとは思い

ますが、まずは日本文化における心得について、

少々ご紹介いたします。

 

 

小笠原流礼法の古文書には、

「主人の左の膝をまほって…

大方ならば左の袖を見て…

同輩ならばを見て…」

と記されています。

上の立場の方に視線を向けるときには、

相手の膝あたり、

大抵の場合は相手の袖あたり、

同じ立場の人には顔を見て、

話をすることができたわけです。

つまり、視線の位置が相手と自分との関係を

表していたのです。

したがって、和室においては正座をするだけ

でなく、ときには手を前方に進めて姿勢を低く

することが相手への敬意を表現していました。

 

 

一方、西洋文化においては、起立することが

敬意を表すとされてきました。

騎士道の精神から

レディーファースト」が存在し、

女性を大切に扱うことが男性の品格であるとも

考えられてきたわけです。

 

過日もバスに乗車したさい、外国人の男性が

笑顔で席を譲ってくださったことが思い起こ

されます。

このようなことから、洋室においては案内を

された後に席をすすめられた場合、

一旦は椅子に座ることが望ましいですが、

その後は立って部屋に飾られている絵画などを

拝見しながら待つ、あるいは相手の方が入室

されるとわかった瞬間にはすぐに立つことが

求められます。

 

こちらに記したことは一例であり、

相手や状況によって、

臨機応変に振る舞うことはいうまでもありません。

 

相手への「こころ」を「かたち」を通じて伝える

には、基礎となる「かたち」すなわち作法や

マナーを身につけることが求められます。

そのうえで、「かたち」のみにこだわり過ぎて

しまうことのないよう、常にバランスある言動

をこころがけたいものです。