チームダイアリーをご覧の皆様、こんにちは。同期の若森よりご紹介に預かりました、4年トレーナーの犀川進です。ダイアリーの順番が若森の後と聞いたときには彼持ち前の毒舌で何を言われるのかと震えていましたが、意外にも「自慢のトレーナー」「これ以上無い役割を果たしてくれた」と褒めちぎられてしまいました。

 

 そんな若森も全く非の打ち所の無い選手です。彼はDFながら攻撃センスも兼ね備えていて攻めに参加し相手を抜き去るのは圧巻です。どんなトレーニングメニューも正確に美しいフォームでこなします。慶應アイスホッケー部トレーナー界隈では人間メトロノームと呼ばれるほどの正確さです。アイスホッケー以外の部分でも頭脳明晰で彼がクリエイターとして優秀であることは美的センスがない僕にもわかります。彼のいいところを全て書くと日が暮れてしまうので、この辺にしておきます。

 

唯一彼に恨みがあるとすれば1年生の頃、僕たちが坊主になるきっかけの遅刻をしたことぐらいです。



 

 今年も残すところ2週間となりました。弊部はインカレに向けて12月19日より北海道の帯広で合宿を開始しました。2年ぶりの合宿で嬉しい気持ちが大きいですが、感染症には十分に留意し12月25日に控えるインカレ初戦に向けて準備を進めています。

 

 12月に入っても1ヶ月後の早慶戦で引退する実感は湧いていませんでした。最後のダイアリーの順番が回ってきてようやくアイスホッケー部のトレーナーとして過ごす期間が短くなっていることを感じているところです。



 

 4年間の大学生活で自己紹介をする度に、学生トレーナーという少し珍しい役職について質問を受けました。よく聞かれたのは「トレーナって何をするの?」「プレーしたくならないの?」「どうしてやろうと思ったの?」といった辺りでしょうか。どの質問も一言で答えてしまうこともできますが、本気で説明しようとするとそうもいきません。今回「犀川進がトレーナーである理由」を詳しく説明させていただくと共に、最後のダイアリーらしくどんな思いで4年間部活に取り組んできたのかを綴らせていただきます。



 

 入部したきっかけは中学の同級生である岩垂に声をかけられたことです。それまではアイスホッケーを見たこともやったこともありませんでした。僕たちが入学したときの新歓期間はコロナ禍の今では考えられないほど人で溢れていました。そんな日吉キャンパスをフラフラしていたところ岩垂は声をかけてくれました。

 

  僕の中では高校まで続けた野球を辞めること、大学では體育会に入らないことを決めていました。しかし、トレーナーとして體育会に所属するという道はトレーニング好きだった僕にとって魅力的だったので練習見学に行きました。その後、迷いに迷いサークルもいくつか回りましたが4月の終わりには入部を決断しました。



 

 現在のアイスホッケー部では当たり前に受け入れられているトレーナーというポジションが部以外の人達からすると何をするのかわからないということに入部してからすぐに気づきました。弊部トレーナーの仕事は日吉の陸上競技場で行うトレ-ニング・器具を用いたウエイトトレーニングのメニューを考えることです。氷上練習のときは陸上でのウォーミングアップを仕切り怪我をしてる選手のテーピングを巻いています。トレーニングに関しては一任されているのでやりがいも大きいですが、その分責任も重大です。

 

  入部したときはウエイトトレーニングの経験が少しあった程度で前提知識はほとんどありませんでした。僕の3学年上のトレーナーである野崎さんやプロトレーナーの小柳さん、山本さんからお話を聞く中で学んだり、書籍や論文から必要な知識を得たりしてなんとか今日までやってくることができました。



 

 普段はポジティブ思考で悩み事もあまりない性格の僕ですが2年生の頃「自分は本当にこの部に必要なのだろうか?」と考えたことがあります。実際、アイスホッケー部に学生トレーナーが居なくてもチームは運営できます。例えば、今の幹部が中心となって陸トレやウエイトを考えてもトレーニングメニューを組むことは可能です。他にもプロのトレーナーを雇ってメニューを組んでもらうという選択肢もあります。

 

 2年生のときトレーナーは僕一人でした。特に最初の方は思ったような効果が出せずリーグ戦前半全敗という屈辱も味わいました。その時は本当に「プロの方に頼んだほうがいいのではないか」「自分がこの部にいる意味はあるのだろか」という思いが頭をよぎりましたが、その頃にはこの部活の皆と過ごす時間が大好きになっていたので退部という道は考えられませんでした。

 

  辞める選択肢がない以上「自分がこの部に必要か否か」を考えることに意味がないことに気がついてからは「どうすれば勝利にもっと貢献できるのか」、「どうすればプロのトレーナーの方よりも価値のある存在になれるのか」ということを考えて行動してきました。今まで以上にトレーニングのことを勉強するのはもちろん、コーチングやチームビルディングなども学んでトレーナーとしてのスケールアップを目指しました。他にも色々工夫をしてきましたが自分の努力をひけらかすのもカッコ悪いので、ここではこの辺にしてあとは後輩トレーナーの黒部にこっそりと伝えたいと思います。



 

 トレーナーをやっているなかで選手が羨ましくなることは何度もありました。アイスホッケー経験はないものの、緊迫した試合をリンクサイドで見ていて自分がリンクに立てないことにもどかしさを感じたこともあります。冗談抜きで合宿で筋肉痛に悩んでいる選手や陸トレで吐きそうになるまで走っている選手ですら羨ましいと思っていました。こう書いてしまうと僕が「トレーナーよりも選手向きなのでは?」と思う方もいるでしょう。確かに僕は性格としては選手向きなのかも知れません。ただ、だからこそアイスホッケーの経験が無いながらも選手の気持ちを理解することができたのではないかと思っています。



 

 自分なりに試行錯誤をし勝利に真剣に向き合った4年間ですが、僕がチームに居ることでどれほど勝利に貢献できたかはわかりません。ただ、様々な偶然が重なって始めたアイスホッケー部のトレーナーを4年間続けることができたのはこの部のこと、みんなで勝利を目指すことが楽しかったからです。引退まで3週間をきりましたが、残りの期間も今までと変わらずに勝利を目指してみんなと充実した時間を過ごせればと思います。



 

 次回のダイアリー担当は4年GK木村初穂です。彼はゴールキーパーとして去年からほとんどの試合に先発し慶應の守護神として活躍してきました。調子がいいときも悪いときも慶應のゴールを守り続けることには苦しみもあったと思いますが、チームメイトからは絶大な信頼を置かれています。初穂はとても良く食べるので体重を維持することに不安を漏らすこともありましたが今シーズンも大きな体重の増減もなくここまで来ていてトレーナーとしても安心しているところです。インカレ・早慶戦も彼がロースコアで抑えることが勝利のための絶対条件です。せっかくなのでここから引退まで無失点でお願いします。

最後のダイアリーでは守りに入らず攻めた内容を期待しています。

それでは初穂、よろしく!



 

 

追伸

 

巴美へ

 

 既にわかっているとは思うけど、うちのトレーナーはまだ歴史が浅く決まった形や伝統のようなものもありません。僕も自由が大きいためトレーニングのことで悩むことも多かったですが、常に何が勝利するためにベストかを考えて様々な選択をしてきました。僕の引退後も巴美がトレーナーとしてチームを引っ張っていきながら、今までのやり方に囚われずベストな選択をしてほしいと願っています。

ある意味孤独なポジションなので大変なこともあると思いますがトレーナーはできることが増えれば増えるほど楽しくなります。頑張れ


 

岩垂へ

 

 このチームに出会うきっかけをつくってくれてありがとう。

お陰で最高の四年間になりました。