チームダイアリーをご覧の皆様、こんにちは。同期MGの夏奈よりご紹介に預かりました。4年FWの十文字陽亮と申します。

 

 夏奈はとんでもないくらい自身に厳しく、毎年何日間か体調を崩す期間があるくらいストイックな人間で、日々感心させられています。しかし私のその尊敬とは裏腹に「3年坂本と共にいるとダル絡みが酷く、将来面倒なおじさんにならないか心配」といった、あらぬ疑いをかけられてしまいました。少しショックです。確かに、試合の行き帰りの車内くらいはかなさんにはストレスを感じずに少しでも楽しんでもらいたく坂本と躍起になってはいますが、夏奈のストレスメーターは常に警戒しておりますし、夏奈との信頼関係を築けているという自信があるからこそのトークをお送りしているつもりです。毎回坂本と車内トーク反省会を行っていますし、信頼関係に相応のダル絡みを行なっています。そもそも坂本が同乗していない時(私が夏奈だけを送迎する時)は落ち着いた車内でお送りさせていただいている自信がありますし、そう思われたということは坂本のトーク術に調子に乗せられている面が大きいですね。数少ない(いない)女性友人の1人からのアドバイスということで、少し態度を改めることとします。

 

 

 さて、6〜7年前の塾高1年生の頃から欠かさず読み始めていた弊部先輩方のダイアリーですが、私も3年前に「4年間で、ホッケーでも勉学面でも自分を誇れる武器を作ることを目標に頑張る」といった趣旨のダイアリーを書き、そして更に時は流れ、遂に最後のダイアリーを書く機会となってしまいました。どんな言葉を、誰に届けたいか、届かなくても構わないかを時間をかけて熟考し、最後のダイアリーを書きました。是非最後まで私のおしゃべりにお付き合いいただけましたら幸いです。

 

 まずは慣例に従って、4年間を軽く振り返りたいと思います。

 

 1年生の時に掲げた「誇れる武器を作る」という目標についてですが、結果としてはダメダメだったかと思います。

 

 ホッケー面においては、スピード、パワー、フィジカル面、などのクローズドスキルと、状況判断、プレイの読み、キープ力、シュート、パス、などのオープンスキルのどちらの点においても大きく成長したと思います。しかし、入部当初に思い描いていたのは、圧倒的攻撃スキルを手にし、毎試合得点に絡み、大事なシーンでも勝利に大きく貢献し、チームの仲間たち、コーチ陣、応援してくださる方々に期待され信頼される選手でしたが、蓋を開けてみるとそれとは程遠い結果で、期待されていてもそれに応えることが出来ない日々ばかりでした。私のプレイを見たことがある選手なら誰しも「それなりにバランスが良く体格にも恵まれ、出場機会が多い選手だが、目を見張る活躍はしてないし、チームを勝利に導いているエース選手ではないかな」という印象があるかと思います。全国級の選手ではない私が、世代別日本代表選手が多くひしめく関東大学1部Aリーグでそんな夢を描いていたことが間違っていたとは思いません。単に、目標に対しての私の努力の質・量が共に不足していたと反省しております。しかし、間違いなく自分の全力の更に何%か上の試行錯誤を積み重ね、様々な苦難がありつつも4年間やり抜いてきました。そのことは誇りに思い、次のステージでもその姿勢を貫きたいと思います。

 

 ホッケー以外の面においては、この「誇れる武器を作る」という目標自体が部分的に適していなかったのだと思います。

誰しも人間的に普通な人などおらず、その人のいる環境において何が強みになるのか、弱みになるのかは180°変わってきます。よって、どの分野において自らの力を発揮したいかを詳しく定義しないと目標としての効果を発揮しません。夏奈からの紹介にあったように、大学4年間は長い時間をかけて周りを見渡し、様々なことに自ら飛び込んで挑戦してみることに費やしました。それが出来たという点においては、少しは進歩しているかと思います。あとは固まった目標に対する行動を実行するのみです。

(何を今後の目標としているかはこのダイアリーの最後に書いておりますので、そちらまでお読みいただければと思います。)

 

 

 さて、題名にもある『「夢を見ることができる」それがどれだけ幸運なことか』について触れていきたいと思います。

 

 皆さんは夢を持っていますでしょうか。(怪しいセミナーのようになってしまっておりますがどうかお見過ごしください)

 

 大きな夢に限りません。明日会いたい人に会える楽しみ、食べたいものを食べられる楽しみ、行きたい場所に行ける楽しみ、などなど、些細なことで構いません。もはや、歳を重ねるとその夢の規模は小さくなることが多いですので、そちらを想像した人の方が多いかもしれません。なんなら夢を見るのも、何かに期待するのも諦めた、なんていう想像し難い苦悩を抱いて何かに挑戦しようとした人生の先輩方も多くいらっしゃるでしょう。

 

 この部活に属している部員たちも、早慶戦にて勝利を掴み取る、リーグ戦にて実力が大きく上の他校から勝ちを掴み取ることなど、それぞれ何かの夢を抱いて入部したことでしょう。

 

 私は、自己評価を誤る性分、危機回避能力が低い性分によって大きな夢を見がちです。上記の通り、私は毎試合前に点を決める自分の姿を明確にイメージしておりました。毎試合前に夢を見ています。

そして毎試合後に絶望する。次の試合が遠い日になればその絶望が長続きし、次の試合が近くなればまた夢見て、、、また絶望する。大抵はその繰り返しです。私は欲張りですので、チームが勝利しても自分が思ったようなプレイが出来なかった時は、笑顔を振る舞っていても素直に喜んでいません。いつも悔しくてたまりません。(チームの皆さんごめんなさい)

 

 なぜそんなに夢を見るのが辞められないのかというと、ほんの一握り、ごくたまに成功体験を得られた経験があり、この瞬間のために生きているんだと思える経験があり、それが忘れられないからです。もっとコテンパンにされ続けていれば夢など見なくなっていると思います。

 

 しかし、この4年間過ごしてきて、夢見られること自体が非常に幸運すぎることであると、ふとした瞬間に思い返されます。(本当は常に心に刻まれ、行動に反映されているのが理想なのですが…)

 

 4歳から大好きなアイスホッケーを続けて今に至りますが、アイスホッケーに打ち込めるという自体が、その裏に多くの人々の支えがあって成り立っているというのを実感しました。

多大な費用を家族やOBの方々に支援していただいたり、多大な工数がかかる仕事を大会開催のスタッフ陣・部のマネジメント班、その他関係者が行っています。また、勝つために時には優しく、時には厳しく私たちを徹底的に勝利へ導こうと全力を尽くすチームスタッフ陣や、全力でトレーニング・練習に励み、価値観や性格の探り合いなどありつつも多くのことを指摘しあって切磋琢磨できる仲間がいて、深夜の練習後に揚州商人のプレミアム酸辣湯麺や日吉の二郎系ラーメンを囲っておしゃべりに没頭できる仲間がいて、そしてあの何にも変え難いチーム勝利の瞬間を共有しようと多くの方々が応援してくれる。勝てた暁にはその瞬間を皆で一斉に味わう。この一連の流れの美しさを言葉で表す術が私にはありません。

 

 また、幸か不幸か、新型コロナウイルスの蔓延により、ご存知の通り私たちの今までの生活は制限されました。1、2年目は難なく部活に打ちこんでこれましたが、3、4年目のその生活は大きく変容しました。正直いって、スポーツは生きていく上で必要不可欠なものではありません。「娯楽」を例のマズローの欲求5段解説に当てはめると、「生理的欲求」「安全の欲求」の次に当たる「社会的欲求」に属するものであると考えられます。そのため、部活に打ち込むことに常に罪悪感が伴うようになりました。記憶に新しいように、長い伝統を持つ盛大な祭典であるオリンピックでさえ、多くの賛否の声が上がりました。私たちが行っているような競技スポーツは、夢のように出来上がった現代社会だからこそできることです。この事実は、コロナパンデミックがあってこそ気づけたことだと確信しています。

 

 さらに、この環境における幸運のみならず、自身の肉体・精神的な幸運もあってこそなのだと強く実感しました。

 

 私自身、この4年間で、完治に数ヶ月かかる怪我を4〜5回ほど負いました。最近では去年8月に肩脱臼をし、手術してから復帰するまではもちろん、怪我する前の100%の筋力やボディバランスに戻すのには半年以上かかりました。周りを見渡すと、骨折しながらプレイせざるを得ない部員がいたり、腰ヘルニアによって悲鳴を上げながらプレイしている部員、2年前の怪我が完治することなくずっとテーピングを巻いている部員、少し年数を遡ると、怪我によって1年以上氷上から離れることになった当時エースだった先輩、練習中の事故で内臓が破裂する大怪我を負い、4年生の最後の締めくくりでプレイできなかった先輩、そして大怪我により、部活としてのアイスホッケー人生に終止符を打たれることとなったが、トレーナーに転向することで再度チームに大きな力をもたらした先輩もいます。

(その先輩の当時の胸中を明かしたダイアリーは何度読んでも心に突き刺さるものがあり、後世に語り継がれるべきダイアリーだと本気で思います。まだ読んでことのない方は一度こちらをお読みください。『選択 TR | 野崎大希』,(2016) https://ameblo.jp/keio-icehockey/entry-12646611878.html)

 

 また、精神的な健康はアイスホッケーのみならず日々の生活で夢見て生活するには間違いなく必要条件です。

 

 日々のタスク管理に追われたり、こんな鈍感で夢見がちな僕でさえ人と関わる上で投げかけられた言葉によって傷ついたりして考え込み、精神的に弱って抑うつ状態に陥ったときは、少し先の将来のことを考える余裕なんて一切ありません。最近はほとんどありませんが、最初は布団から出るのが難しくなり、あらぬことが頭をよぎったりして日常生活に大きな支障を来したりしました。それが部活の日と被ったなんて時は部活には集中できず、またさらに自己嫌悪に陥ります。この悪循環から抜け出すのには多少の苦労が生じます。このようなことは日本の現代社会では決して珍しいことではないと思います。同じようなこと、もしくはもっと過酷な経験をした部員もいると思います。

また、ここ2年ほど、様々な精神疾患と共に生きている方々、特にうつ病を患っている方々、様々な生きにくさを抱えつつも前を見続けている方々とお話しさせていただく機会が多くありました。どんな人間であれ、様々な要因に追いやられると、日常生活で何か夢見ることからは大きく遠ざかり、ほとんどの人間が毎日難なく行える食事や入浴などが行えなくなります。毎日生きるのに精一杯で、毎日生きるか死ぬかの選択に迫られている方々も多くいること、彼らに対してどのように言葉をかけるのが心が軽くなるのかを学び、一喜一憂できる生活を送られること自体が幸せすぎることであると強く身に染みました。

 

 アイスホッケー世界最高峰リーグのNHLにおいてでも、現在Chicago Blackhawksのキャプテンであり、世界を代表するFWの1人であったが、精神面での休養のために1年間プレイできなかったJonathan Toews選手、現在Vancouver CanucksのDF、Tyler Motte選手のように精神的な問題に悩まされていることを公表する選手も少なくないです。国際大会での優勝を何度も経験するプロテニスプレイヤーの大坂なおみ選手も長い間うつ状態に悩まされていることを公表しております。全ての面において高いレベルが求められる世界最高峰の舞台でさえ、健康的な精神を有して戦うことは非常に難しいのでしょう。

 

 これを読んでいる方々、もしくはその周りにも精神的な健康を維持するのが困難な方がいらっしゃるのではないでしょうか。日本では15人に1人はうつ病を経験し、5人に1人は何らかの精神疾患を抱える経験をすると言われています。それほど誰しも身近な問題であり、精神的な健康を維持できているということは非常に恵まれていることなのです。

 

 

 このように、私たちがアイスホッケーのみならず、些細なことでさえ夢を見れるというのは、綺麗事ではなく本当に多くの奇跡が積み重ねがあってこそ起こりうることであり、大変幸せ極まりないことです。

 

 

 私が尊敬する方々の1人で、NHLの舞台に立つという夢を追い、現在はECHLで活躍しているアイスホッケー選手、三浦優希さんの紹介していらっしゃった言葉で、『ノブレス・オブリージュ』という考え方があります。

 

”ノブレス・オブリージュ”というのは、フランス語の”noblesse oblige”に由来しており、直訳すると「高貴なる者の義務」となります。

意味としては、一般的に財産、権力、社会的地位の保持には責任が伴うことを指します。身分の高い者はそれに応じて果たさねばならない社会的責任と義務があるという、欧米社会における基本的な道徳観です。

『25.ノブレス・オブリージュという考え方』(2018), 三浦優希, https://note.com/yukimiura36/n/nc7e639a046a2, 

 

 

 私はこの言葉が大好きです。多大な運と共に生まれ育ってきたのだから、その機会を無駄にせず、砕け散るまで夢を全力で追う責任と義務があると感じます。また運悪くその機会を与えられない方々のために、肉体的・精神的に可能な限り、完璧でなくともできることを彼らに対して尽くしていく必要があると私は思います。

 

 

 私はまだ社会に本格的に出たことのない未熟な学生であり、社会に放り出された暁には、度重なる苦節の末にユメユメ…なんて言っていられなくなるかもしれません。空想の中で描く夢のスケールもどんどん小さくなり、どんどん保守的にならざるを得ない日が必ず来ると覚悟しています。そんな時のために、様々な条件が揃っている今だからこそ感じることのできる夢を全力で追っていきたいと強く思います。

 

 今の自分からまた一歩成長するために何かに打ち込んだり、挫折を繰り返しながら夢を追った経験のある方、そして現在進行形でその大小に関わらず夢を追っている孤独な方、自分の弱さに負けまいと、答えの無い問いに対峙し続けて行動を起こしている方に多大なる敬意を表させていただき、心よりエールを送らせていただきます。僕も頑張ります。共に頑張りましょう。

 

 

 最後になりますが、この大学生活4年間、言葉にならないほど、大変貴重な経験をさせていただきました。関わらせていただいた全ての方々に心より感謝申し上げます。

 現在、私は「近年大低迷する日本アイスホッケー界の環境に少しでも変革を起こし、男子日本アイスホッケーをオリンピックに出場させ、他のスポーツのように日本を世界最高峰選手輩出国に、そして少しでもアイスホッケーに関わることで心動かされる人を増やす」ということを夢見ています。どんな形であれこの業界に携わり、少しでもこの夢の達成を前進させるように尽力して参ります。

 

 同期や後輩たちにはいつも伝えたいことを伝えているので、何も書くことはありません。いつも通り深夜練後の揚州商人でプレミアム酸辣湯麺を囲んでおしゃべりしましょう。最後早慶戦まで共に頑張ろうね。

 

 長々と自分語り、大変失礼いたしました。次回は同期の若森です。

 彼はとにかく真面目でクールで要領が良く、僕とは正反対の、ぶん殴りたくなるくらい良くできた人間です。去年、弊部SNS広報をもっとカッコよくしたいと言ったら、どのチームよりもカッコ良いデザインを作ってくれたり、要領が悪い私にその作成方法を手取り足取り教えてくれ、デザイン制作面にて成長を促してくれた優しきボスです。去年の若森のダイアリーでは、そのユーザーに優しいデザイン制作に関して書いていて、非常に興味深かったです。是非、まだお読みになっていない方はお読みくださいませ。

『最高の体験をつくる #8 | 若森龍太朗』(2020), https://ameblo.jp/keio-icehockey/entry-12646601421.html

 

 彼は、氷上では3セット目の守りの要として活躍するだけでなく、先日公式戦初ゴールを決めました。卒業後には某メガベンチャーにて持ち前のデザイン製作スキルを活かした専門職に就くらしく、氷上でも陸上でも活躍が目まぐるしい彼ですが、最後はもう少し人間味が溢れるダイアリーを期待しています。

 

 それじゃあわかもん、よろしく!

広報班で共に頑張った夏奈、若森との写真