2022年12月13日付の大阪日日新聞に、週刊コラム「金井啓子の伴走で伴奏」第57回分が掲載されました。 本紙のホームページにも掲載されています。

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盛り上がらない25年大阪万博 ワクワク感に欠ける原因は

 

 数日前、親しい友人たちと久しぶりに夕食を共にした。もっとも、コロナも油断できないので食事会はこぢんまりとしたものになった。

 ただし、話の内容はこぢんまりとしたものではなかった。特に印象に残ったのは2025年の大阪・関西国際博覧会、通称「大阪万博」だ。約2年後に控えた大阪万博なのに、大阪府と大阪市が熱心に宣伝するわりには人々の間で話題に上ることが少ない、という話である。

 確かに、私の周囲でも大阪万博を口にする人は少ないように思う。ましてや「楽しみだ」「ぜひあのパビリオンに行きたい」という人はいない。大阪府市が必死にアピールするものの、どうにも盛り上がりに欠けるのだ。

 そんな話をしていると、大阪府吹田市で開かれた1970年大阪万博に足しげく通ったという年上の友人が話し始めた。いわく、「70年の万博には開催前からワクワクする期待感があった。当時、中学1年生だった私は何時間も並んで人気パビリオンを見学したり、中には初めて見る一般の外国人にサインを求める人までいた。あの頃の万博は熱気と活気にあふれていた」という。当時まだ幼く遠方に住んでいたために万博会場に行けなかった私にもその熱気が想像できた。

 1970年の日本は高度成長の真っただ中。万博の会場には「歩く歩道」や「電気自動車」が登場し、まだ一般的ではなかったコンピューターを展示するパビリオンもあったという。その友人は「見るもの聞くもの、すべて初めて。どれも驚くものばかりで、会場に入る前からワクワクしていた」と語った。

 2025年の大阪万博はどうか。科学技術は日進月歩のスピードで進化するので、会場に展示されるものは「見るもの聞くもの、すべて初めてのものばかり」だろう。だが、70年代と現代とでは決定的に違うものがある。私たちが得る情報量の差だ。

 ツイッターなどSNSが世界的に普及した現代では、スマホを通じて情報が得やすくなった。未知のものが既知へと変化する時間が短縮され、その結果、どのような新技術も目新しさが失われつつある。2025年大阪万博にワクワク感がないのだとしたら、その原因は情報量の差にあるのかもしれない。

 ワクワク感が薄い2025年大阪万博。その弱点をどう克服するのか、主催者はどう知恵を絞るのか。その点についてだけはワクワクしながら見守りたい。

 

(近畿大学総合社会学部教授)