2019年12月5日付の大阪日日新聞に、週刊コラム「金井啓子の現代進行形」第185回分が掲載されました。 本紙のホームページにも掲載されています。

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入学後のミスマッチを防ぐ工夫 学生目線の大学広報イベント

 

 私が「カリフォルニアにあるサンフランシスコ州立大学にお世話になることになった」と話すと、複数の人から「サンフランシスコは州じゃなくて町の名前でしょ。なんで『サンフランシスコ州立』なの?」と聞かれた。カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(UCLA)が日本ではよく知られているから、なおさらそういう疑問が湧くのだろう。

 実は同州の州立大学には3種類ある。ひとつめのユニバーシティ・オブ・カリフォルニア(UC)にはUCLAなど10校がある。ふたつ目のカリフォルニア・ステート・ユニバーシティ(CSU)には23校あり、サンフランシスコ州立大学もそのひとつ。同じ4年制大学でも学費がかなり違う。そして、カリフォルニア・コミュニティ・カレッジ(CCC)と呼ばれる2年制大学は115校ある。以上、これはひとつの豆知識。

 さて、サンフランシスコ州立大学には高校を出て入学してくる学生もいるが、コミュニティ・カレッジを卒業して編入する学生も多く、私が滞在しているジャーナリズム学科でもそういった編入生に何人も出会った。

 先月半ばにCSUの仲間であるサンノゼ州立大学に行った。コミュニティ・カレッジ・ジャーナリズム協会の北部カリフォルニア大会に参加するためである。大会の主な参加者は、周辺地域のコミュニティ・カレッジに通う学生たち。大会は、サンノゼ州立大学を卒業して学生ローン返済問題をめぐるドキュメンタリーを制作した映画監督の基調講演で始まった。その後は、サンノゼ州立大学とサンフランシスコ州立大学の教員たちや地元メディアで働く人たちによるミニ講義計18本が、同時並行で4~5本ずつ行われた。

 大会の途中には5部門にわたるコンテストもあった。事前に提出したものを審査するのではない。基調講演を題材とした記事、漫画、意見を含む記事を提出する3部門に、写真のミニ講義を受けた後に大学周辺で撮影した写真が審査される部門。原稿編集部門のコンテストでは文法や時事問題の知識が問われた。

 サンノゼ、サンフランシスコの両州立大学に加えて、州北部にあるハンボルト州立大学からも関係者が参加して、編入志望の学生のための相談デスクを設けていた。

 日本の大学も既にオープンキャンパスを盛んにやっている。だが、編入を考える学生への情報提供の活発化、複数の大学による行事の共同運営、数多く提供される具体的な講義、行事の内容に参加学生が積極的に関われるコンテスト形式など、取り入れられるものは多いと感じた。大学に入った後に何を学びたいのか、なぜこの大学にいるのかがわからなくなるミスマッチを防ぎ、大学にとっても学生にとっても良好な結果を生むヒントはまだまだあるのだと感じる一日だった。

 (近畿大学総合社会学部教授)