2017年1月19日付の大阪日日新聞に、週刊コラム「金井啓子の現代進行形」第38回分が掲載されました。 本紙のホームページにも掲載されています。

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大学の後期の授業も終わりが近づいた。私が勤務する大学では年末年始の冬休みをはさんで1月中旬から授業が再開されたのだが、最近は病欠者がとみに多い。毎年恒例とも言えるのだが、この時期はインフルエンザや感染性胃腸炎、風邪などで出席できないという学生からの連絡がメールなどで舞い込むことが続いた。成人式を期に集まった若者たち三十数人がその直後に一気にインフルエンザに倒れたという話も聞いた。

 

 寒い時期であり乾燥も激しくなるため、さまざまな病気にかかりやすいのはやむを得ないことなのだろう。私はここ数年痛みをこらえながらインフルエンザの予防接種を受けている。受けていても罹患(りかん)すると聞くが、これまでのところ予防接種を受け始めてからはかからずに済んでいる。

 

 インフルエンザや感染性胃腸炎にかかってしまえば、自分がしんどいだけではなく周りの人たちにうつさない配慮も必要になってくる。数年前の冬にあるイベントで知人に会うと、「実はインフルエンザにかかって、まだ自宅にいないといけない時期なのだけれど、どうしても出席したかったので来てしまった」と言われて、まるでその知人そのものが“細菌兵器”になって周囲を攻撃しているようだと、強い怒りが湧いたこともあった。

 

 病気になって大切な用事をキャンセルしなければならないつらさはもちろんわかる。それがたとえば大学入試センター試験となればなおさらだろう。長い時間をかけて勉強してきて迎えたその日、体調にも万全を期したつもりが具合が悪くなって試験が受けられない悔しさはいかばかりのものだろうか。

 

 数日前に終わったセンター試験で私は監督業務を行ったのだが、担当した教室でも何人かが欠席していた。理由をはっきりと確認できたわけではないが、突然の病気で涙をのんだ人も少なからずいただろうと推察される。

 

 そういえば、あの2日間は本当に寒かった。日本の各地で雪が降って、例年はめったに雪を見ない東大阪のキャンパスでも雪が舞っていた。全国でセンター試験が行われたが、雪による影響を受けた受験生の数は2日間で1万人を超えたとも報じられた。

 

 センター試験が行われる時期は毎年かなりの冷え込みとなり、雪による影響が懸念されることもしばしば。おまけにインフルエンザや感染性胃腸炎にもかかりやすい季節だ。一生を左右すると言っても過言ではないセンター試験の時期を変更することは無理なのだろうか。または、せめて一発勝負ではない日程に変えられないのか。

 

 2020年度からはセンター試験に代わって新共通テスト「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)が登場する。まだ全ての中身が固まってはいないようだが、内容だけではなくその方法にも踏み込んで、“主人公”である受験生のためになるシステムの誕生を待ちたい。

 

 (近畿大学総合社会学部准教授)