長く東京子ども図書館理事長をつとめられ、児童文学者として著名な松岡享子さんのお話を伺う機会がありました。港北文庫のつどい主催の秋の講演会です。

 

ワンダ・ガーグ編・絵 松岡享子訳 「グリムのむかしばなしⅠ」のら書店2017年7月5日初版

 

を出版されたばかり、ワンダ・ガーグのグリムで頭がいっぱい、夢中です、ということで、この本について、熱の入ったお話を伺うことができました。

 

「ものすごいのっちゃったの、訳しているとガーグの声が聞こえてくるくらい楽しかったの。ひとりでにリズムがついてきて、たのしくなったの」と語る松岡さん。とてもチャーミングで、松岡さんのこの本への思い入れ、愛情が伝わってきました。

 

ガーグは米国絵本の黄金期のさきがけをつくった人。「百まんびきのねこ」(1928年米国で出版)などが有名です。

 

松岡さんによると、ガーグはチェコからの移民で、ミネソタ州のドイツ系移民の多い地域で、幸せな子ども時代を送ったのだそうです。

 

ガーグが、子ども時代に毎日のように聞いた昔話。その楽しさを伝えたいと、自ら採話・翻訳し、何枚も何枚も同じ絵を描きしあげた作品とのこと。

 

絵本作家の祖先の母国の昔話がこのような形で新しくよみがえるところに、米国ならではのエネルギーを感じます。画家の目で書いた文章の丁寧な描写を楽しみながら、読みたい本です。