「こんにちは あかぎつね!」エリック・カールさく さのようこやく 偕成社 1999年10月1刷 2004年6月 11刷

 

毛並みの表現が目をひく「緑いろのきつね」が、こちらをじっと見つめている表紙。緑のきつねの絵の上方には、赤い文字でタイトル「こんにちは あかぎつね!」。

 

「あかぎつね」がタイトルなのに、緑のきつねの絵が表紙に描かれている。

 

この不一致が、どう紐解かれるのかが、この絵本の見所です。

 

少々種明かしになってしまいますが、本の中では、補色の関係を利用して、物語が展開します。

 

かえるの誕生日。お友達が次々訪ねてきます。

 

「あかぎつね」がくるはずなのに、「みどりのきつね」が…


「むらさきのちょうちょ」がくるはずなのに、「きいろいちょうちょ」が…やってきたわ!?


そんなふうに戸惑う、かあさんがえる。

 

いえいえ。ちいさいかえるはおかあさんに、「おかあさんったら。もっともっと みなきゃ」。

 

そう、ぜひこの本を手にとって、もっともっとよく見てください。大人も子供も驚きながら、楽しめる仕掛けがされています。

 

ちいさいかえるに促されて「もっともっとよくみる」ことを繰り返していくと、意外なものが見えてくるし、ざわざわしていた心も静まります。

 

静かになにかを見つめることで、忙しい生活の中でみているのとは違う風景が、みえてくる。

そんなきっかけを作ってくれる本かもしれません。

 

それから、物語の最後には、ちいさいかえるがまっかになるページと、「おたんじょうび おめでとう、ちいさいかえる!!」とお友達が勢ぞろいするページがあります。

 

この2つの場面が、この本が、補色の関係を使った遊びにとどまらず、エリック・カールの気持ちの楽しさと暖かさを伝えているように、私には感じられました。