「ありふれた教室」 | tricleのブログ

「ありふれた教室」

原題は「Das Lehrerzimmer」。英語題も「Teachers‘ lounge」で、共に学校の職員室という意味。邦題がイマイチに感じますが、原題もあまりいいと思えません。

舞台は学校に終始しますが、単に学校の話ではなく、社会全体に関わることを描いていると思います。

 

ポーランド系の移民の教師カーラ・ノヴァク(レオニー・ベネシュ)が最近赴任した学校では盗難事件が頻発していた。

ノヴァクの授業の場面が面白い。

これがドイツの標準的なものかは分かりませんし、実はその後の展開での重要な伏線もあるので、独特なもののようですが、興味深いのは確か。

校長は「容赦ない対応」をウリにしていて、盗難事件への対応も厳しい。しかし、クラスメートに密告まがいのことを強要したり、抜き打ち検査したりというやり方にノヴァクは反発を覚えている。

ノヴァクは偶然学校の職員のクーンが共用のコーヒーを飲むときに入れる小銭入れのお金を盗んでいるのを目撃してしまう。

ノヴァクはわざと財布の入った上着を席に残して、机のラップトップを撮影モードにして授業に出る。戻ってみると財布の中身がなくなっていた。

ラップトップの映像に残っていたのは特徴的な模様の服。

それはクーンの着ているものだ。

ノヴァクはクーンに、「金を返して、二度とやらないと約束したら許す。」と言う。

しかし、クーンが「どこに私がやったという証拠があるの」と怒鳴り返してくる。

ノヴァクは校長の元に行き、ラップトップのビデオを見せる。

校長室に呼び出されたクーンは、無実を主張し、ビデオをみせても、「私の服とは限らない」と抵抗する。さらに「隠し撮りしていいのか」とまで言い出す。

クーンは停職になる。

クーンの息子のオスカーはノヴァクのクラスの生徒。

ノヴァクはオスカーに母親に何があったか教えてくれと言われるが答えられない。

一方、オスカーの母親が盗みで停職になっているという噂が広まり、オスカーはいじめの対象になる。

 

ヒロインは誠実であり、思いやりのある行為がどんどん悪循環をもたらしていくのが観ていて辛くなる。また、オスカーの状況がどうやっても救いようがないようにしか思えないのもまた辛い。

そのオスカーの様子はとてもリアリティがあり、それがラストに説得力をもたらしていると思う。

子供たちや親の反応がリアルな一方で、先生の態度はヒロインも含めて何が起きるかの配慮がなさすぎる気がしますが、これもリアルなのか。

非常に流麗に撮られている映画で、一気に見せてくれます。ほとんどヒロインを追い続けるだけのカメラが見事。

音楽もよくできていたと思います(ラストのメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」は意味を考えさせられます)。