「ダム・マネー ウォール街を狙え!」 | tricleのブログ

「ダム・マネー ウォール街を狙え!」

クレイグ・ギレスビーの新作は2020年におきた小口投資家の集団が空売りを仕掛けられていた株をストップ高にまで持って行ったという事件を扱ったもの。

仕掛け人になったのはネット掲示板の株式フォーラムの人気者ローリング・キティことキース・ギル(ポール・ダノ)。

事件の核になった株は、「ゲームストップ」という実店舗のゲームソフト販売チェーン。

ネットによるダウンロードが当たり前になり、しかもコロナ禍。倒産は必至と思われていた。

しかし、キースは実物を手にしたい人はまだ多いはずという信念の元に「ゲームストップ」の株に全財産を投資していた。自分のサイトで「ゲームストップ」の株を買うことを推奨。それに賛同した小口投資家たちは「ゲームストップ」株を買い始める。

実はこうしたことが可能になった背後にはロビンフッドという新興企業のアプリの存在があった。ロビンフッドは手数料なしで株の売買ができ、多くの小口投資家が気軽に株の売買ができる原因になっていた。

物語の中心はキースですが、この映画は様々な小口投資家たちにも焦点をあてていて、半信半疑で始めながらしだいにのめりこんでいく様が、実にそれらしく描かれています。

また、反対側の立場、空売りを仕掛けていたヘッジファンドの経営者、その背後の投資家、それに加えてロビンフッドを立ち上げた二人も描かれます。

さらにキースの家族も描かれるなど実に多方面にわたって多くの人が登場しますが、それぞれがちゃんとした個性を持った人間として描かれているのが見事です。

実はこうした作り方が、大勢の人間が集まれば、大金持ちにも対抗できるんだというこの映画の趣旨を見事に反映しているわけです。

有名な俳優さんが多く出演していて、ぜいたくな感じですが、彼ら以外の俳優さんたちも含めてみな短い登場時間でも人間性を感じさせてくれる好演をしていて、大変見ごたえのある映画と思います。