「VESPER/ヴェスパー」 | tricleのブログ

「VESPER/ヴェスパー」

リトアニア人とフランス人の監督コンビによるヨーロッパ製ですが英語の映画。

まず「新暗黒時代」と字幕が出て、その背景が説明されます。

環境破壊に対抗すべく遺伝子改良が試みられたが失敗。それだけでなく、それが拡散したために、地球の環境は破壊されてしまう。

動物はいなくなり、植物も異常な状態なものが多くなる。

富裕層は「シタデル」と呼ばれる城塞都市に籠るが、そこに入れなかった貧しい人間たちは過酷な環境で生きなければいけなくなった。

ヒロインの少女ヴェスパー(ラフィエラ・チャップマン)は、生命維持装置に繋がれて動くこともしゃべることもない父親(リチャード・ブレイク)を介抱しながら、独学で遺伝子学を学び、植物の改良を行っていた。彼女はいずれチタデルで自分が認められることを夢見ていた。

彼女を助けるのはドローン。かつてチタデルの兵士だった父親が負傷して退役させられた時に与えられた唯一のもの。角の丸い立方体という味気ない形だが、そこに(たぶんヒロインが書いた)いたずら書きのような顔が描かれているのがいい。父親と精神的につながることができて、彼の言葉を伝えることができる。

異常になった植物の描写は細かく、いろいろな種類が登場して見ごたえがある。

ブルーバック合成を使わないようにしているのもリアリティに繋がって成功している。また、父親の生命維持装置もオーガニックな装置なっているなど雰囲気も良く出ている。

略奪者も横行していて、ヒロインの家も襲われてしまう。近くに父親の兄のヨナス(エディ・マーサン)が支配するコロニーがあり、そこに助けを求める。

ヴェスパーの血と交換に父親の生存に必要なものを渡すということになる。しかし、実際に血が交換できるまでは渡さないと言われる。ヨナスは自分たちと暮らせば安全だと言うがヴェスパーにはその気はないのもそうしたヨナスの強権的な姿勢が嫌いなため。

諦めきれないヴェスパーは、コロニーに忍び込んで必要なものを盗むが、その時についでにヨナスが大切にしていた種も盗んでしまう。

ヴェスパーは若い女性が倒れているのを見つける。

彼女にとりついている植物を剥がして家に連れて帰る。その少し前にシタデルの飛行機が墜落するのを目撃していて、それに乗っていたよう。

父親は余計なことはするなと警告するがヴェスパーは聞く耳もたない。

カメリア(ロージー・マキュアーン)というその女性は驚くほど回復が早いだけでなく、苦しむ父親を鎮める様子は超能力があるように見える。

カメリアは飛行機に乗っていた父親を探してほしいと頼み、ヴェスパーは翌朝探索に向かい、飛行機を発見する。

コクピットに男がいて瀕死の状態。なんとか飛行機から出そうとしているところに、ヨナスが部下をひきつれてやってくる。

「なぜ、シタデルからお前を助けにこないんだ」と問いかけながらヨナスはあっさり男を殺してしまう。さらに種がなくなった件でヴェスパーを疑っているよう。

 

製作に時間をかけたというだけあって細かい部分まで作りこまれていて、見ごたえがあります。ただ、そうした細かい部分についての設定がほとんど語られない。なんとなくわかるという程度にはなっていますが、終盤の展開はそうした設定の曖昧さが足を引っ張った感じでいま一つ感動的に盛り上がらなかったのが残念。