AI村の城攻め⑦ 世界の半導体設計を握る3社、何が違う?後編
半導体の設計図が完成した。しかし、本当に工場で作れるのかを確認しなければ、製造へは進めない。回路同士の間隔は正しいのか。配線は近過ぎないか。設計した回路と、実際に配置された回路は一致しているのか。「たぶん大丈夫です。」では、数百億円規模の半導体を作り始めることはできない。この最後の門で、大きな存在感を持つ企業がある。Siemens EDAである前編では、SynopsysとCadenceを見た。『AI村の城攻め⑦ 世界の半導体設計を握る3社、何が違う?前編』世界の半導体設計を握る3社しかし、3社とも同じ仕事をしているわけではない。では、それぞれ何を握っているのだろう。先程出した記事では、EDA市場の城壁につ…ameblo.jp後編では、Siemens EDAが握る製造前の検証と、EDA3社が競争しながら共存する理由を見てみたい。この会社は、元々Siemensの中で生まれたEDA企業ではない。前身は、Mentor Graphicsである。Mentor Graphicsは1981年、米国オレゴン州で設立された。そして2017年、ドイツのSiemensが買収したその後、現在のSiemens EDAとなった。Siemens EDAで、特に有名な製品がCalibreである。Calibreが担うのは、製造前の物理検証だ設計した回路が、工場の製造ルールを守っているのか。回路同士の間隔は足りているか。配線が近過ぎないか。設計図に書かれた回路と、実際に配置した回路が一致しているか。製造へ渡しても、本当に作れる形になっているか。それを確認する。どれだけ高性能な回路を設計しても、工場で作れなければ意味がない。最後の確認に失敗すれば、テープアウトできない。Calibreは、設計図を工場へ渡す前の、厳しい検査官のような存在である。しかも、最終確認に使われる道具には、何よりも信用が必要になる。この検査を通した設計なら、実際の工場で作れる。そこまでの信用が必要になる。Siemens EDAの強さは、単に検査ソフトの性能だけではない。TSMCをはじめとする半導体工場と連携し、新しい製造技術へ対応し続けてきた、実績そのものにある。Calibre Design SolutionsCalibre Design Solutions delivers the most accurate, most trusted, and best-performing IC sign-off verification and DFM optimization in the EDA industry.www.siemens.comただし、Siemens EDAも、Calibreだけの会社ではない回路設計。検証。配線。3D半導体。先端パッケージ。AIを使った設計。扱う範囲を広げている。さらに親会社のSiemensは、半導体の外側に、巨大な産業ソフトの世界を持っている。工場。自動車。産業機械。製造ライン。デジタルツイン。製品を設計する。工場を設計する。実際に製造する。Siemens EDAには、半導体設計を、その大きな産業システムへつなげられる可能性がある3社は、全く別の仕事をしているわけではない。むしろ、多くの領域で競争している。それでも、同じ半導体企業の中で、複数社の製品が使われることがある。なぜなら、半導体の設計工程は、あまりに広いからだ。回路を作る。配置する。配線する。検証する。熱や電力を調べる。工場の製造ルールを確認する。製造へ渡す。一社の製品だけで、すべてを統一することもできる。しかし、工程ごとに、長年使ってきた得意な道具を組み合わせることもある。しかも、過去の設計資産。社内の作業手順。技術者の経験。工場との認証。これらが、それぞれの道具へ結び付いている。だから、一社が少し優れた製品を出したからといって、ほかの二社がすぐに消えるわけではない。3社は城を奪い合っている。しかし同時に、巨大な城の中で、それぞれ重要な部屋を守っているそして今、3社が向かっている先は、少し似てきている。半導体だけでは終わらない。チップから、先端パッケージへ。先端パッケージから、基板やサーバーへ。そして、製品やシステム全体へ。さらに、AIを使って、設計そのものを自動化する。半導体が複雑になるほど、設計道具も、扱う範囲を広げなければならない。なお、投資対象として見ると、3社にはもう一つ違いがある。SynopsysとCadenceは、米国市場に上場している。一方、Siemens EDAは、ドイツのSiemensに含まれる一事業である。Siemens株は、取り扱いのある証券会社を通じて、日本から購入することもできる。ただし、Siemens EDAだけを、単独で買うことはできない。EDAへ直接投資するのか。産業ソフトや工場の自動化まで含めて見るのか。投資対象としての性格も、ここで分かれる。もちろん、実際の投資判断には、業績や株価など、技術とは別の確認が必要になる。今回、技術や参入障壁から見れば、かなり魅力的な企業群だった。表には出にくい。それでも、世界中の半導体企業が、その道具から簡単には離れられない。寡黙企業としては、とても面白い。ただし、企業の希少性と、株価として買いやすいことは別であるEDA市場は、一社独占ではなく、3社が競争している。そして、会社は地味でも、株価まで地味だったわけではない。目立たない企業だと思って調べてみたら、株価の方では、すでにかなり評価されていた特にSynopsysは、Ansys買収後で、利益の見え方も複雑になっている。高値から調整していることと、すぐに買いやすいことも、同じではない。少なくとも、今の私には、ちょっと手を出しにくい感じだった今回見たかったのは、株価の答えではない。3社がどんな歴史を歩き、何を強みにして、現在の場所を握ったのか。その違いである。Synopsysは、設計の自動化から、半導体IPと物理シミュレーションへ。Cadenceは、回路設計の現場から、AIとシステム設計へ。Siemens EDAは、製造前の検証を強みに、Siemensの巨大な産業ソフトの世界へつながっている入口は違う。しかし、3社とも、チップの外側へ向かっているEDAについて調べ始めた時、分かっていたのは、半導体を設計するソフトだということくらいだった。しかし、その先にあったのは、半導体だけの設計室ではなかった。製品やシステムを、完成する前にコンピューター上で作り、動かし、間違いを見つける。AI村の設計室は、思っていたより広かった。そして今、その設計室は、半導体の城から、製品や工場まで含む、巨大な都市へ広がろうとしている。『AI村シリーズ リンク纏め』『昔はNVIDIAだけ見ていた。でもAI村は思ったより広かった』前回、GPUやHBMについて整理した『GPU、HBM、DRAM、NAND…。横文字が多すぎ…ameblo.jp『AIと未来 リンク纏め』『GPU、HBM、DRAM、NAND…。横文字が多すぎるので整理してみた』最近、AI関連を調べていると、横文字が増えすぎてきたGPU。HBM。DRAM。N…ameblo.jp『自己紹介』はじめまして元 社会的不適合者(笑) の株専業投資家☆kei☆ です。投資歴は約10年いまは株式投資だけで生計をたてています。このブログでは一発逆転の投…ameblo.jp