友人からのインスタのメッセージに喜びが溢れた。

友人からのメッセージ

「もっともっとかとちゃん(当時のあだ名)みたいに発信する人が増えて、それを見て本当は私もって前に進める人が増えて行くと良いね!!」


この友人は約20年前働いていた職場の同僚だった。私が体育大学を出てすぐに勤めた会社は水泳のインストラクター。バリバリ体育会系女子が働いている中、彼女は私より2つ3つくらい年下で、発言することは馬鹿っぽく、見た目は、茶髪のチャラチャラしたギャル。メイクばっちり決めて、いつも鏡を見ては自分のスタイルばかりを気にしていた。当然私とは無縁で嫌いなタイプの子だった。

確か2年も経たないうちに、結婚で退職した気がする。そんなうっすらな記憶しか残っていなかった。


しかし、数年後同じ職場の同僚を介して、彼女に子どもができたことを知った。そして、それから何年も経ち、2年くらい前にsnsで繋がるとなんと3人もの子どもをもつ母親になっていた。

あのギャルが母親??まさか?

私の記憶は20年前で止まっていた。

彼女のsnsから色々な情景や感情が伝わってきて、気づいたら尊敬の念が出ていた。

sns上では当たり障りのないようなメッセージを数回やり取りしたくらいで、私から彼女にカミングアウトするようなことは一度もなかった。

私は内心、彼女の記憶もまた20年前のまま止まっているはず。いったい私のことをどう思っているのだろう。女性として水着を着て一緒に働いていた同僚が、いきなり髭生やして、妻がいて子どもまでいる状況だ。

最初はびっくりの感情から、だんだん慣れてきたのかもしれない。彼女のことだから深く考えないかもしれない。当時の私の状況から今の私を想像できていたとしたらすごい。


NZ移住してきてから、自分がトランスジェンダーであると感じる瞬間が少なくなってきた。それはなぜかといえば、私は人の目を気にすることや社会的立場においての自分に自信がなかったが、それが極端に減ったことだった。

4人に1人が移民でできた国では、町を歩けば多言語、容姿やヘアスタイルの違い、文化や食の違い、すでに色々な人がいて当たり前が前提にあった。私がトランスジェンダーであることは、どうでもいいというか、それを生活の上で考えることがほとんどなくなった。どちらかというと、国籍や言葉の違いからのマイノリティを感じることの方が強い。

私たちが日本人だからかもしれないが、「日本に行ったことがある。日本のカルチャーが好き」という言葉をかけてもらうことが多い。


私は日本の社会に不満をもって海外移住を選択したところもあったが、こんなに日本を褒めてもらえると、自分が褒められ気になり嬉しくなる。生活する中で自然と日本の良さが見えてきて、今では日本人でいるということを誇らしく感じている。


さっそく本題のアライの話だ。【アライになりたい。わたしが出会ったLGBTQ +の人たち】日本から届いた本を読んだ。

この本からの抜粋になるが、アライとは「英語のAllyは、性的マイノリティの味方、同盟者、支援者」を意味する。アライになることは、多様性を認め、差別や偏見に敏感になることでもある。


当事者の私はこの本を、自分の人生と照らし合わせ目頭が熱くりながら読んだ。

トランスジェンダーという自分を愛せなかった過去があったが、現在は自分を愛することができ、心の底から他人を愛することができるようになった。

私の子ども時代にトランスジェンダーである自身と向き合うことは非常に困難だった。

自分は何者なのか?どんな大人になればいいのか?先は暗闇で光が全く見えなかった。

非常に自己肯定感が低い子どもだった。

この本にはモデルケースがいくつも紹介されていて、それぞれのストーリーに愛を感じた。


アライといえば、私の二番目の兄がすぐに思い浮かび筆者と共通するところをたくさん感じた。兄は20年前の私のカミングアウトがきっかけで、数年前にレインボーさいたまの会というものを立ち上げた。今では支援者が増えNPO法人にまでなった。


私はアライを簡単には【味方】だと感じている。安心安全な人だから何かあれば頼れる。

この頼れる人、甘えられる人たちがいたということが私の人生でとっても救われた思いで本当に感謝している。

私がトランスジェンダーであるということに今は、「ありがとう。そして感謝」の思いがある。なぜかといえば、自身の性別のことで悩み苦しみ生きづらさを感じ、それを深く感じれば感じるほどに、その倍のありがとう。そして感謝の思いを経験させてもらえた。


メッセージをくれた彼女も私の味方だ。

些細な言葉がけがこんなに嬉しいものだと改めて感じた。

そして、私の周りにアライが増えたのは私が勇気を出してオープンにするようになってからだ。言葉や行動で私という存在を見せることも大切なことなのかもしれない。