今日は、由利高原鉄道が企画する夏の風物イベント「ビール列車」の日だ。

流行り病から4年ぶりの開催で父が楽しみしていたイベント。毎年父は高校の同期10人くらいでこのイベントに参加していた。
今年は子どもが来るからとそちらの誘いは断り私と参加。

生ビール、鳥海山大吟醸、雪の茅舎大吟醸、ハイボール、ウーロンハイ、ソフトドリンク。列車の一両を30名ほどの貸切。
稲穂、川、青空の田舎の景色を見ながらの120分飲み放題!!なんとも贅沢なイベントだ。

「乾杯」と参加者みんなビール片手に満面の笑み。

すぐに1杯目を飲み干し3名いる添乗員におかわりを伝えるとすぐに運ばれてくるお酒。コップが空になると添乗員が飲み物を促してくれる心遣いが嬉しい。

2杯目に入ると会話も弾み、父の学生時代の話しを聞いた。

父は将来のことは全く考えてなく、高校を選択した理由は大学には行かず(金銭面を考え)就職を視野に入れていたので工業高校に入った。
中学の頃に無線に興味があり、ラジオなど自分で作っていた。
NTTに就職してたまたま無線の趣味が仕事になった。その後は、PCが出はじめの頃でハマった。
当時は高額で購入できなかったが、会社でPCを購入してもらえたのが良かった。

1からプログラムを作り、簡単なゲームも作った。それが楽しくて夢中になった。
と目を輝かせて話していた。

酒も進み日本酒2種飲み比べしている頃に、父が「俺の親友二人を紹介するから待ってろ」と言った。

父の同期は今年で75歳。
腰が曲がりどう見てもおじいちゃんに見える人やハンチング帽をかぶったおしゃれで気品ある人と風貌はさまざまだった。

今回は同期が7人集まっていた。そのうち父の親友と呼ばれる2人と話しができた。

一人はNTTの下請け会社の社長さん。

優しそうな風貌に、贅沢なものを食べているような少しふくよかな体型をしていた。
「お前の父さんはね」と言った語り口調で、父の昔の話しをたくさんしてくれた。
会話から気遣いが感じられ、にこやかに話す雰囲気は、人から慕われ懐っこいイメージがある。

社長さんは父の母と同じ地区出身だったこともあり、父からすれば親しみを覚えた。
その地区は、ど田舎で高校に通うのも容易ではなく、高校を諦めるか下宿しないと通えない環境だった。

父から見たら社長さんは、全くその地区に住む田舎臭さがない人だった。その辺りも父と仲良くなる要因のひとつだった。

社長さん「お前の父さんはな、真面目で学校でベスト5に入る成績だった。だけど気取るような雰囲気はなく、親しみやすいタイプだったよ」

社長さんは高校卒業後に、給料が一番高いところという理由でトヨタの下請けに就職した。
当時は給料が2万ちょっとだった。天下のトヨタに勤めたが、ライン作業はかなり忙しく、分単位でバイクや車が流れてきてそこにパーツを組み込む作業だった。
忙しく誰にでもできる作業に嫌気がさし半年で辞めた。

それから東京で働いたが、実力もなくペーペーにも関わらず、給料はトヨタで勤めていた頃と変わらない額をもらっていたので、先輩にイジメられしんどかった。
しかし、そこで悔しい思いをして実力をつけた。
それを経て、26歳の頃に自身で今の会社を立ち上げた。

話の合間に笑いがあり、私の質問にも柔軟に答えてくれる。とても愉快で懐の深さを感じる人間味あふれる社長さんだった。

もう一人は赤と白にチェック柄のシャツをまとい、おしゃれな麻糸で編んだ中折れ帽子をかぶっていた。気品おじさん。

シャイな雰囲気はあったが、話し始めると印象は大きく変わる。

相手に話す隙を与えず、漫才師のような語り口調で淡々と話し始める。
嫌味がなく、人生経験豊富なストーリーにどんどん引き込まれていく。

時折見せる口元は、歯並びがキレいで真っ白。清潔感が垣間見える。
高校卒業後に東京へ出て大変な思いもしたが、豊かな人生経験だったと語っていた。
当時お金はないが、先輩に奢ってもらって居酒屋を何軒もハシゴした話。
仕事より酒に明け暮れこのままでいいのかと悩んだ話。
ご縁あって若い頃にオーストラリアに5年住んだ話。

人生は何があるかわからない。その時々で楽しんでやりたいことをやる。

若い頃はたくさん酒を飲んでいたようだが、その癖は抜けないようでつい最近も酒を飲んで失態をしたそうだ。
酔っ払い耳を強打し救急車で運ばれ家族にだいぶ迷惑をかけたと笑ってその怪我の写真を見せてくれた。

父も社長さんも気品おじさんも皆共通しているところがあった。

それは少年のように目をキラキラさせて当時を語り、その口調から当時の様子が相手に伝わるほどの表現力がある。
もちろん当時よりは見た目は老けているだろうが、心はあの時のまま残っている部分があったのが心なしか嬉しかった。

「人生に年齢は関係ない」と思わせてくれ、これからも御三方には我が道を貫いてほしい。

最後に生ビールでしめて5杯を飲み終え終了。
ちょうど盛り上がってきた頃にお開きになってしまい確実に飲み足りないし話し足りない。

ということで飲み屋を2軒はしごしたところで、居合わせた客に私たちの知り合いが一人いた。
知り合いといっても、以前ここの居酒屋で意気投合したお客さんで、今回で会うのは3回目だ。

「〇〇さんに会えるといいね」と話していたその人がいたのだ。

こっちに来てから引き寄せを体験することが増えた。

知り合いは5人組の中の一人で女子会をしている様子。
図々しくもそのグループと相席してもらった。

女子会では、韓国のアイドル?!推しの誕生日のお祝いをしていた。
推しの写真と花束などデコレーションが目立つ場所に飾られていた。

私はそのメンバーとすぐに意気投合した。
年齢は私より年上が二人、あとは30代半ばくらいだろうか。
みなさん地元の人だから、父とも住んでる場所や噂話に花が咲き盛り上がっていた。

NZ移住、子育て、両親と同居、トランスジェンダー、親や旦那の死、子どもの発達障害、不倫など様々な話しができた。

韓国のアイドルを囲む会は出会ってまだ1年目だ。それぞれのメンツの個性が強すぎる。

個性が強いということは、大概生きていたストーリーも強烈だ。

「当事者ではないので、当然その人の気持ちが全て分かるわけではないが、話を聞いてもらう場があるということが心の支えになっている」と話していた。

私も自然にカミングアウトしていた。何とも不思議な居心地の良さを感じるメンバーだった。

閉店まで残っていた女子3人は、推しのデコレーションを抱えて、次なるスナックへと向かっていた。

その後ろ姿に、都会も田舎も関係ない。
好きなことをやっている人に出会え自然と笑みが溢れた。

出会いは必然とはまさにこのことだろう。

良き出会いに感謝。

ありがとう。Arigato.