この秋田大学の苗村教授によると、若者の自殺については以前から、「経済苦や病気を契機にした自殺は少なく、精神疾患によるものが多い他には、性格素因に基づく自殺が多いのだろう」と言われてきたと言います。
従来の我が国の自殺統計には、自殺理由として「厭世」という項目が挙げられており、若者の自殺では精神病と並んで最大の理由となっていたそうです。
この「厭世」とは、「生きることは苦痛だ。死んで楽になりたい」とか「自分はこの世には合わない、消えて無くなりたい」「人生は虚しく、生きている意味が感じられない」ということでしょう。
では、性格素因に基づく性格、自殺親和型性格とはどのようなものなのか。
苗村教授は、自らの臨床経験や研究を通じて4つの性格特徴をあげています。それらを簡単にまとめて説明しましょう。
1.対人恐怖、対人緊張
「人が苦手」「人が怖い」「人間が嫌い」「人間関係がうまくいかない」といった表現をとったりします。この苦手や恐れの範囲が広がって、「世の中が恐い」「世の中と合わない」という考えにもなってきます。
2.気弱さ、臆病さ
やさしく気弱で、人を攻撃したりできない。また、現実的な目標を設定して社会に出て努力する意志と気力が欠如している。当然、自尊感情は低く、自信を持って人生の諸問題に対応できないので「生き辛さ」や、さらなる自尊感情の低下を招いてしまう。
3.自責感
うまくいかないことは何でも自分のせいにして自己を責める傾向。他人を非難しようとすると自分の心のバランスが崩れて、耐え難くなってしまう。「他人を責めるくらいなら自分を責める」と言う傾向。自責感が強いと、自分と無関係の事故や病気ですら絶望感を刺激される者がいます。
4.虚しさ、虚無感
この世、あるいはこの世に生きることを「意味も喜びもない」「ただ虚しい」と感じること。多くは1~3の要素も持ち、対人関係に気を遣いすぎて消耗してしまうタイプの人であるが、中にはそうでなくても無意味感にとらわれ続ける人もいるそうです。
これらの4つの要素が様々な程度に絡み合って存在し、4つとも全て目立つ人は少ないそうです。
当然、これら以外の、様々な性格特徴も各人で異なるので、結論は「死にたい」なのですが、実際には一人として同じ人はいないといいます。
そして、これらの性格の「死にたい」という訴えには投薬や通常のカウンセリングでは効果を期待できないそうです。
そこで、まだ私の直感でしかないのですが、もしかして仏教やマインドフルネス(瞑想、弁証法的行動療法、アクセプタンス&コミットメントセラピーなど)的アプローチが効果を示すのではないかと思います。
もともと、釈尊はこの世の虚しさを感じ(実存神経症だったという人もいます)出家して、そのそれらを解決する方法(四聖諦)を見出し、悟りを得た訳ですので。
仏教は、この世を「一切皆苦」とし、八苦、つまり、人間の八つの苦しみ。生・老・病・死の四苦に、愛別離苦・・怨憎会苦(おんぞうえく)・求不得苦(ぐふとくく)・五陰盛苦(ごおんじょうく)を加えた苦があるとしているのです。
そして、これらを超えるための四聖諦(ししょうたい)という、この世の現実の様相とそれを解決する方法論をまとめた4つの真理である「苦・集・滅・道」を提唱したのです。
マインドフルネスは、グーグルやインテルなどの一流企業での採用が取り上げられていますが、それでけでなく様々な対象への応用で大きな可能性を持っていると思います。