中央教育審議会(中教審)の特別部会で委員を務める伊藤公平・慶応義塾長の、 「国立大の学費を年150万円に上げるべきだ」との提言が議論を呼んでいます。

 

 この提言の真意について、日本経済新聞にインタビュー記事が掲載されたので、興味深く読みました。

 

【日本経済新聞 2024年5月9日】

 

 国立大学の学費が、現行の3倍に値上がりする点だけが注目されて、暴論のように言われていますが、全体としてどのような趣旨の提言なのか知りたいと思っていたので、願ってもない記事でした。

 

 「150万円」の根拠について、伊藤塾長は、次のように答えています。

 

【150万円の根拠】

① 高度な大学教育を実施するためには、学生1人当たり年300万円の収入が必要になると試算している。理系学部をもち、スポーツ施設も備えるとなれば、300万円は不可欠だ。

② 国立大学の学費の標準額は年53万5800円。国から平均して年230万円程度の公費支援があるため、1人当たりの収入は約290万円になる。国の運営交付金は十分ではなく、教育水準を高めるには学費を上げるしかない。

③ 受益者負担の原則で、余裕のある人には学費をしっかり払ってほしい。経済的に少しでも困る人には、給付型奨学金を充実させるべきだ。

④ 高等教育の質を高める上で何ができるのか踏み込んだ議論をしていくため、あえて『150万円』という数字に言及したところもある。びっくり

 

 奨学金の拡充と併せて、現在の学費から3倍程度値上げし、家計の負担増を求める内容ですが、順を追って説明を受ければ、なるほとど納得できます。

 

 大学の学費は国によって大きな違いがあり、北欧だと無料ですが、国民は高い税金を支払っています。低負担・高給付を求めても、経済的に成り立ちません。国立大学の学費値上げの検討は、避けて通れない問題だということが理解できました。