12月30日(木)
日が暮れてからベッドに寝そべって、昨日買ってきた『村上春樹インタビュー集1997-2009』を読み耽る。今日は『チキンシャック』のカウントダウン前夜祭でDJを務める予定なのだが、8時近くになっても、いつも車で俺とレコードと機材を迎えに来てくれるクミさんから連絡がない。電話を鳴らしてみると、クミさん、ひどい風邪をひいたとのこと。「それでも迎えに行く」と言うクミさんだったが、電話の声が辛そうだったので、「今日は無しにしましょう、明日もあるし」ということで、予定はキャンセル。仕事を全て終え、年内飲み歩けるのは今日しかないと気付いて、寒空の中、自転車を駆って、『we love fussa cafe』へ行き、持参したローラ・ニーロ、オハイオのファンクバンド、スレイヴのレコードを聴きながら、カウンターのテツさんたちとなんだかんだと四方山話。グラスを重ねるうちに、何時の間にか、午前2時になっていたので、お暇して、『アマゾン』へ向い、フミちゃんに中島みゆきさんのコンサートチケットを渡す。1Fセンターブロック17列目なので、みゆきさんの顔は、しっかり確認できるはずだ。1月12日東京国際フォーラム、今から楽しみで仕方がない。
『アマゾン』でウーロンハイを数杯飲むうちに、ここ1ヶ月の疲れが溜まっていたのか、吐き気がし始め、部屋に帰って、トイレで胃の中身を戻す。こんなことは珍しいが、今年の膿を全部吐き出したようで、気分は悪くない。
12月31日(金)
昼過ぎに起きて、体調を整えようと、駅近くのドラッグストアで胃腸薬を探していた俺の許へ、ツイとやって来たメイクばっちりの美人店員が「これは効きますよ」とお薦めしてくれた内服液を飲んだら、途端に気分が良くなったので、その足で国立のディスクユニオンへ向い、レコードを物色。ザ・フー『The Kids are Alright』サウンドトラック、グランドファンクの2枚組ライヴ、エリック・クラプトンのヌード・ジャケライヴ、ジーン・クラークの『ホワイトライト』(買い直し)等を購入して福生へ戻る。
午後8時過ぎに迎えに来たクミさんの車で『チキンシャック』へ。ターンテーブルとレコードをDJブースに運び込む。「まだ早い時間だから、客は誰もいないな」と思っていたら、ステージ前で、セーラー服でコスプレした1バンド目の女の子達がクスクス笑っている。セッティングに没頭して、ターンテーブルの配線に取り掛かり、ふと目線を上げると、ブース前のソファに浅く腰掛け、うつむいて、I-Phoneをいじっている革ジャン姿の色白美人の存在に気付く。「どこかで見た顔だな、誰だっけ?気のせいかな?」と思いながら、レコードを回しているうちに、ステージに立った尼僧コスプレのシスター・アイコがイベントの開会を宣言し、オープニングのレクターがスタート。楽しく演っているなという感じ。若いって素晴らしい。
2バンド目が終わる頃には、客席も埋まり始め、音楽に併せて身体を揺すっている人たちのシルエットがゆらゆらと蠢いているのが見える。
シスター・アイコからテキーラ注射を受け、マジカル・ミステリー・ツアーな気分で、レコードを回す。こういう状態で大音量で聴くラテン・ロック、特にサンタナは最高。一瞬、黄泉の国へ連れ去られそうになった。革ジャン美人はカバンからドラムスティックを取り出して、リズムを刻み始めた。やがて、ステージ前のスクリーンが降り、今年の残り時間を示すデジタル時計が映し出され、ベートーベン第9のメロディに乗って、ヴァン・ヘイレンのカバーバンドが登場。革ジャン美人もステージに上がり、鬼神のように腕を振り上げて、ドラムを強く、激しく叩きまくる。「あ、このひと、ドラマーだったのか」と酔った頭で考えているうちにステージは進み、カウントダウンは目前。俺もフロアーに降りて、2011年午前0時ジャストの瞬間に、傍らのフミちゃんたちと乾杯。振舞いシャンペン、ドン・ペレニヨンを美味しく飲む。
ライヴ終盤、メンバー紹介があり、名前を聞いて、ようやく革ジャン女性のことを思い出した。去年の横田基地友好祭のときに出ていたレディース・ハードロックバンドのメンバーだった。「そう言えば、あの後、一緒に友好祭に出ていたガールズバンドのライヴ取材をしたときに、メンバーの子が『ツアーでは、あの人に叩いて貰ったんですよ』と言っていたっけ......なるほどねえ」と呆けた頭で回想しているうちにライヴが終わり、年明け、1曲目に俺がスピンしたのは、ザ・フー「無法の世界-Won't get fooled again」。シンプルだがスペーシーなシンセのシークエンスがフロアーに轟き、キース・ムーンのタイコが炸裂。「今年はキース・ムーンのドラムのように生きて行こう」と、ふと思う。周りのみなさん、なるべく、ご迷惑をかけないようにしますので、今年も何卒宜しくお願いいたします......。