Closing time | Kei Funkdom

Kei Funkdom

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zago



 11月15日(土)


  日がとっぷりと暮れた頃に目を覚まし、コーヒーを飲んで、シャワーを浴びてから、イーグルス『2人だけのクリスマス』、ロイ・ウッド『毎日がクリスマスだったら』等の曲を収めたクリスマスアルバムを携えて、『kikuju』へ行ってみると、まだ客は誰もおらず、ヒロミさんが、テーブル席に座って、お通しの春巻きを巻いていた。


 ヒロミさんお手製の挽き肉とチーズを添えたポテト料理を美味しく食べ、持参したクリスマスアルバムをターンテーブルに載せると、ジョン・レノンが『ハッピー・クリスマス』を歌い始め、カウンターに立っていたナオコさんが、ターンテーブルに背を向けて、「やだ、切なくなる。クリスマスに良い思い出ないから....」と呟いた。


 今日は、ハワイアンレストラン・バー『zago』の最終日で、午後8時から11時まで、『石川屋』スタッフの結婚パーティーがあり、その後は通常のバータイムになると聞いていたので、俺とヒロミさん、ナオコさんは手早く店を閉め、ゆっくりと歩いて『zago』へ続く坂道を登った。


 『zago』に近づくに連れ、音楽と笑い声が響いて来る。2階のフロアを見上げた俺に、店の外に座り込んで休憩していたレストランスタッフの少年が、疲れた笑みを見せ、「中は、凄いですよ、楽しんでくださいね」と言った。


 果たして、2階のフロアーには、50人以上の結婚パーティーのお客さんがそのまま残り、酒と音楽とお喋りに興じ、狂騒を繰り広げ、それはまるで、『レノン・パーティー』の雰囲気のようで、俺の心は、自然と弾んで行く。


 集った客のなかには、久々に顔を見る人たちがいっぱいで、俺はまず、ミナミくんとハグを交わし、先々週、福生中央公園で行われた『福生大運動会』に行けなかったことを詫びると、ミナミくんからいつかのように「お前、最低だな!お前、最低だな!」と詰られたが、すぐに彼は、「次回は参加してよ」と破顔一笑した。振り向けば、ハルカちゃんも来ていて、「随分、遅くに来ましたね」と言われた。


 混み合うバーカウンターに近づくと、現在、映画、舞台で大活躍中の勇太くんがいて、いつもの気さくな笑顔を見せてくれた。


 バーカウンターは、戦争状態で、ナゴムくん、キッシー、イスラムさんが大車輪で飲み物を作っている。キッシーが注いでくれたビールを飲みながらフロアーを眺めると、赤いヴェルヴェット・ドレスを纏った、福生きってのシュランジャー、Meさんがスタンドマイクに向って、スピーチを始めようとしていたが、だいぶ聞こし召している様子で呂律が回っていない。DJブースではヤマモさんとキヨシくんが、ハッピーでグルーヴィーなサウンドを繰り出して、皆をダンスさせている。グラス片手に佇んでいた俺に、タロット占い師の女の子が、大きなケーキから一掴み取って、食べさせてくれる。ヒロミさんとナオコさんは音楽に乗って、身体を揺らし、フロアーにいた誰もが笑みを浮かべている。俺もいい加減酔っ払って、ニコニコ笑っていると、油断していた俺の隙を付いて、突進して来たMeさんから、パンチを食らってしまった。Meさんのパンチを浴びたことがある人なら分かると思うが、これが結構効くのだ。彼女にとっては、これは友好のご挨拶。相手がアメリカ大統領だろうが、ダライラマであろうが、ミック・ジャガーであろうが、酔ったMeさんは、躊躇せずに彼等の頭を叩くに違いない。


 「わたし、あの子、大好きよ!まるで猫みたいに可愛いわ。あの子を占ってみたいわ」と、ヒロミさんが、フロアーを所狭しと駆け巡るMeちゃんを指して感嘆の声をあげた。満面の笑みを浮かべたMeさんは、そんなヒロミさんとナオコさんの手を引っ張って、ダンスフロアーに連れて行き、しばらくダンスに興じ、また、あちこちを駆け回り始めた。


 午前1時を過ぎても、パーティータイムは終わらない。これでいいのだ、いつもの常連メンバーが集まって、しんみり飲んで、閉店のときを迎えるよりも、この熱狂乱舞状態で、華々しく終わる方が、この店にはふさわしい。ここは福生の酒好き、音楽好きの人たちが数々の祝祭を繰り広げた場所なのだから。


 酔ったキッシーが、大きなケーキを手に取って、ターゲットを探している。コートを汚されるのは御免と、俺は素早く避難しようとしたが、キッシーが俺の傍にいた誰かに投げつけた、ケーキの飛沫が俺のラムのグラスに飛び込んで、酒が俺の目に入り、甘いクリームがコートの袖を汚した。ハンカチを取り出して、目を拭っていると、みんなーズのモリくんが、「コダマさん、とばっちりを食ってしまいましたね」と言った。


 DJブースに行ってみると、ヤマモさんと、いい加減酔っているキヨシくんが帰り支度を始めていたので、バータイムにかけようと思って、10枚程のレコードを持参していた俺がふたりと交代してDJを務める。アイズレー・ブラザーズ、グロリア・ゲイナー等のダンスクラシックスの合間に、ショーケンの『ぐでんぐでん』をかけると、遠くの方にいたハルカちゃんが即反応して、「俺とお前は飲んだくれ!」と歌い、それを引き継いで、ソファーで休憩していたナゴムくんが、ショーケン・アクション付きでサビをシャウトし、俺に手を振った。


 レコードを選んでいる俺のところにMeさん、オクミさん、モリくんがお休みのご挨拶に来て、オクミさんが俺のオレンジ色のサングラスが好きだというので、誕生日が近い彼女に進呈した。


 午前3時にパーティーは終わり、スタッフたちが後片付けを始めたのに併せて、俺とヒロミさん、ナオコさんは、

夜道をそぞろ歩いて、『アマゾン』に辿り着いたが、やはり、『zago』流れの人たちが大勢で集い、店は満員御礼、熱狂状態を呈していて、フミオさんは大忙し。とても座れるスペースはなかったので、ヒロミさんが、再び『kikuju』のシャッターを上げ、ほのかな明かりが灯る店内で、俺たちは、ヒロミさんが注いでくれた酒を飲みながら、様々な話をして夜を明かした。