『風よ、お前も泣いてくれるのか』 (2) | たまらなく孤独で、熱い街

『風よ、お前も泣いてくれるのか』 (2)

「ええ、HN(ハンドルネーム)は変えてますが桂木やねん」
「おーーー」
「あの頃、私はあなたを見下してましたがな。序盤が多少不利になってもなんとか指せると高を括っていました」
「・・・・・・」
「それがデスマッチの後半は5連敗。しかも完膚なきまでに敗れて、私は寝込んでしまいましたねん」
「・・・・・・」
「私は復讐の鬼と化した。あなたに勝つために、悪魔にさえも・・・・・・」


と、一瞬ディスプレイが揺らぎ、別のメッセージがあらわれた。
「正木さん」
「おお。真季さんですか」
「違います。私は『愛』です」
「愛さん?」
「いえ。あなたへの『愛』です」
「はあ?」
「あなたの将棋が上達して欲しいと願う人たち、特に真季さんのあなたへの『想い』、いうなれば無償の『愛』が私を目覚めさせたのです」
「・・・・・」
「あの日、桂木さんに勝ちたい、将棋が強くなりたいと願うあなたの純粋さが、悲痛な心の叫びが、私を呼び寄せたのです」
「おお」
「でも桂木さんにはそれがありません。桂木さんにはあなたをいたぶりたいという邪な思いしかありません」
「・・・・・・」

時間が止まったかのようだ。
桂木のメッセージも中途で切れている。