2023 有馬記念(レース傾向:その1) | 競馬解読教室

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GIを中心に予想します。今週は安田記念です!

 有馬記念と言うと、ダイユウサク、マイネルブリッジ、アメリカンボス、ダイワテキサス、アドマイヤモナーク等の「あり得ない」大駆けの印象が余りにも強いため、このレースは「荒れる」というイメージが非常に強い。しかしながら、有馬記念では2020年クロノジェネシス、2021年エフフォーリア、2022年イクイノックスと、単勝1番人気馬が3連勝中であり、直近の10年だけをみても、1番人気馬は過去6勝を挙げており、{6・1・1・2}で7連対。③着を外したのはアーモンドアイとゴールドシップの2頭だけだ。結果から見ると、むしろ最近の有馬は「堅いGI」に分類される。なぜ堅いか?換言すれば、なぜ1番人気が強いのか?その質問に対する答えは「レース傾向が比較的ハッキリしており、ファンも有馬の傾向をよく知っているから。」だ。最近の有馬記念では、このレースに適性のある馬がファンにしっかりと支持され、結果を残しているということ。このレースの予想をするにあたっては、先ずはこのレースの基本傾向をしっかりと頭に叩き込んでおく必要がある。

 

(1)牝馬には厳しいレース

 過去10年の有馬を見ると、牝馬は3勝(クロノジェネシス、リスグラシュー、ジェンティルドンナ)、②着2回(サラキア、クイーンズリング)、③着なしの計5連対。10年で5連対なら悪くない。しかしながら、勝った3頭の牝馬は日本競馬史上に残る名牝中の名牝であり、古馬になっても牡馬相手にGIを勝ちまくった馬。この3頭の好走実績をもって、「牝馬でも有馬には通用する!」と即断するのは危険だろう。事実、1990年以降の31年間の歴史をみても、有馬を勝った牝馬というのは、前記3頭以外はダイワスカーレット(2008年)のみ。連対まで条件を緩めても、サラキア、クイーンズリング以外にはブエナビスタ(2009年と2010年)、ダイワスカーレット(2007年)、ヒシアマゾン(1994年)のたった3頭しかいない。そんじょそこらの牝馬では通用しないのが有馬記念なのだ(注:③着まで条件広げても、トゥザビクトリー(2001年)、エアグルーヴ(1997年)、ジェラルディーナ(2022年)の3頭がいるだけ。)。今年はホウオウエミーズ、ライラック、ハーパー、ウインマリリン、スルーセブンシーズ、スターズオンアースと、なんと6頭もの牝馬が有馬に挑戦する。牡馬相手のGIでも全く崩れないスターズオンアースと、宝塚記念で世界最強馬を脅かしたスルーセブンシーズには一目置くとしても、それ以外の4頭については、決して楽な戦いにはならないだろう。それが有馬記念というレースであり、過去にはベガ、ファビラスラフィン、メジロドーベル、テエイムオーシャン、ファインモーション、ウォッカ等幾多の名牝と呼ばれる馬が、すなわち、単なる牝馬GIホースでなく、「歴史的な名牝」と呼ばれるほどの牝馬が、悉く敗れているのが有馬記念の歴史だということを、忘れてはいけないのである。

 

(2)3歳GI馬は勝負になるが・・・

 斤量の恩恵(2キロ減)があるため、有馬では3歳馬がよく馬券になる。では、有馬で買える3歳馬はどういうタイプか?答えは「有馬の前にクラシック(又は秋天)を勝っている3歳馬」である。2000年以降の過去25回の有馬では、28頭の3歳牡馬クラシックホースが有馬に挑戦し、結果は{8・3・3・14}。勝率28%、連対率39%は悪くない。今年有馬に挑戦する3歳馬は3頭。皐月賞①着、ダービー②着、菊花賞③着のソールオリエンス、桜花賞④着、オークス②着、秋華賞③着のハーパ、皐月賞②着、ダービー①着、菊花賞②着のタスティエーラの3頭。ハーパーについては非GI馬であるため割引が必要だが、ソールオリエンスとタスティエーラクラシックホースであり、有馬でも好走の可能性は十分。有馬で通用する3歳馬について、もう少し深く掘り下げてみよう。前記勝ち馬8頭の内訳をみると、三冠馬(ナリタブライアン、オルフェーブル)2頭、皐月と菊の二冠馬(ゴールドシップ)1頭、菊花賞馬(マヤノトップガン、マンハッタンカフェ、サトノダイヤモンド)3頭、皐月賞馬(ヴィクトワールピサ、エフフォーリア)2頭。興味深い事実は、三冠馬以外、「ダービー馬がいない!」という点だ。またもう一つの注目すべき事実は、ゴールドシップは二冠馬だがダービーだけは勝てず、サトノダイヤモンドは菊花賞、ヴィクトワールピサとエフフォーリアは皐月賞を勝っているが、ダービーは勝てなかった(②着と③着)ということ。去年のイクイノックスも、天皇賞秋は勝っているが、ダービー(②着)は勝てなかった。3歳時に有馬を勝った8頭の実績が暗示しているのは、「ダービーを勝つ適性は有馬ではむしろ邪魔になる。」ということ。ちなみに過去32年間でダービー馬が3歳時に有馬に挑戦したケースは4回あるが、何れも惨敗(1993年ウイニングチケット⑪着、2007年ウォッカ⑪着、2010年エイシンフラッシュ⑦着、2014年ワンアンドオンリー⑬着)を喫している。ところが今年はシャフリヤール、ドゥドュース、タスティエーラと、過去3年のダービー馬がすべて出走してきた。これは史上初めてだ。基本的に皐月賞や菊花賞で負けてもダービーを勝っているような馬(=皐月賞や菊花賞を勝つ適性のないダービー馬)、例えばタスティエーラのような3歳GI馬は有馬には向いていない。ところが・・・。タスティエーラとドゥドュースについては、少し留保が必要かもしれない。タスティエーラというダービー馬は、歴代の「切れる」ダービー馬とは少しキャラが違うタイプのダービー馬であり、脚質的にみれば、むしろ東京より中山向きに見える珍しいダービー馬ではある。ドゥドュースも3歳時はダービー向きの切れ者だったが、その後は・・・。今のドゥドュースは、馬体も走法も、3歳時のドゥドュースではない。京都記念のパフォーマンスを見ても、今のドゥドュースは、敢えて言えば、小回り向きのマイラー。今のドゥドュースならば、小回りの中山は向く可能性がある。シャフリヤールは厳しいと思うが、残る2頭のダービー馬については、留保が必要かもしれない。

 

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