2023 阪神JF(全頭診断:その2) | 競馬解読教室

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●4枠7番 アスコリピチェーノ

 ここまで2戦2勝。前走は新潟二歳Sを勝っている重賞勝ち馬であり、このメンバーの中では格上的存在。その前走の勝ち時計1.33.8(35.4=24.4=34.0:落差+1.4秒)は、良馬場の新潟二歳Sのデフォルトの1.34.4(35.8=24.7=33.9:落差+1.9秒)に比べると、テンが0.4秒速く、中盤が0.3秒速く、上りが0.1秒遅く、勝ち時計が0.6秒速かった。前走は前半と中盤が速く、上りに時計がかかる差し馬向きの流れ。アスコリピチェーノは4角5番手からジリジリ伸びて、差し切り勝ちを収めた。記録だけみると切れ味が持ち味の馬のように見えるが、実は、このレースの自身の上り3F33.3はメンバー第3位止まり。切れ者のような印象があるが、実は、瞬発力に特化したタイプではなく、上りがかかるレースを得意とする差し馬である。

 この馬の懸念材料は、やはり新潟二歳S組がこのレースで不振であること。2001年以降、牝馬が新潟二歳Sを勝ったケースは全部で9回あるが、アスコリピチェーノ以外の8頭の阪神JFの成績はワナ➉着、エフティマイヤ⑰着、シンメイフジ⑥着、マイネイサベル⑥着、ハープスター①着、ヴゼットジョリー⑤着、ウーマンズハート④着、キタノウイング⑭着であり、ハープスター以外は阪神JFで馬券対象になっていない。流石にアスコリピチェーノをハープスターと同視することはできず、このローテーションは推しづらい。

 

●4枠8番 プシプシーナ

 ここまで2戦2勝。しかも、その2勝がいずれも今回と同じマイル戦。にもかかわらず、前日段階で15番人気で単勝オッズが75倍もつくのはなぜか?この馬の最大の懸念材料は白菊賞から中2週という厳しいローテーション。この白菊賞→阪神JFというのは死のローテーションとして有名であり、過去10年、前走が白菊賞だった馬は全部で7頭いて、当該7頭の阪神JFでの着順は⑧着、⑬着、⑪着、②着、⑥着、⑨着、⑨着。馬券対象になったのは2017年②着のリリーノーブルだけ。リリーノーブルは白菊賞から中2週のローテーションでも好走したが、この馬は翌年のクラシックでも桜花賞③着、オークス②着に好走したほどの実力馬。他方、プシプシーナがリリーノーブル級の大物かといえば…そこまでの大物感はない。馬体重410キロ台の小さな馬であり、上積み疑問だし、ローテーションを詰めて好走できるイメージは全くない(※ちなみにリリーノーブルは490台の大型馬。)。このレースでは、逃げという脚質もマイナスだ。

 

●5枠9番 テリオスルル

 ここまで3戦1勝。基本的にこの馬は弱いし、このメンバーに入れば実力不足。サフラン賞ではスプリングノヴァとステレンボッシュの2頭には完全に力負け。牝馬の身で東スポ杯に挑戦し、最下位に惨敗。牡馬相手の東スポ杯を使ったのは、1400m(ファンタジーS)より1800mを使いたかったからだろう。その点から考えても、マイルのGIでは明らかにスピード不足であり、さすがにこの馬では厳しいだろう。

 

●5枠10番 コラソンビート

 ここまで4戦3勝。現在3連勝中であり、前走は牡馬相手に京王杯二歳Sをレコード勝ちした。前走の勝ち時計1.20.6(34.2=11.5=34.9:落差ー0.7秒)は、良馬場の京王杯2歳Sのデフォルトの1.21.7(35.5=12.1=34.1:落差+1.4秒)に比べて、テンが1.3秒速く、中盤が0.6秒速く、上りが0.8秒遅く、勝ち時計が1.1秒速かった。超速→中速→大遅は、差し馬に有利な流れだった(プラスの落差がマイナス=差し馬断然有利!)。快速ジャスパーノワールが5F57.6の超Hペースで飛ばしたため、馬群がタテ長となり、後方待機の差し馬に恵まれた流れになったとはいえ、コラソンビートは切れた!今回は仕掛けのタイミングがぴったりだったし、横山武騎手の好騎乗と言っていいだろう。他方、前回の競馬が「ハマッた」のは事実であり、再現性は…決して高いとは言えないだろう。なお、稽古の動きを見ても状態は引き続き良好だと思う。

 この馬の場合は、やはり、前走からあと200mの距離延長がカギになる。「この馬はマイル戦も勝っているじゃないか!」という指摘があるかも知れないが、あのマイル戦(未勝利戦)は「逃げ切り」だったということを忘れてはいけない。しかも道中はハナを切っても行きたがる面を見せており、戸崎騎手も折り合いに苦労していた。マイルでは折り合いもポイントになるだろう。なお、この馬はメンバー唯一の3勝馬だが、過去10年の3勝馬の阪神JFの成績は{1・0・1・5}であり、連対率14.3%は特に成績が良いわけではないという事実は憶えておきたい。

 

●6枠11番 スウィープフィート

 3戦1勝馬。前走は白菊賞に出走し、プシプシーナの②着に敗れてしまった。白菊賞の勝ち時計1.35.7(36.9=24.7=34.1:落差+1.8秒)は、良馬場の白菊賞のデフォルトの1.35.3(35.9=24.3=35.1:落差+0.8秒)に比べて、テンが1.0秒遅く、中盤が0.4秒遅く、上りが1.0秒速く、勝ち時計が0.4秒遅かった。このレースは前半、中盤が遅く、上りが非常に速い上りの競馬だった。Sペースで逃げたプシプシーナが逃げ切る競馬において、スウィープフィートは4角8番手から追い込んで②着。超遅→中遅→超速の競馬で、逃げ馬が逃げ切る展開の中、上り最速の3F33.1で差し込んでくるのだからこの馬の切れ味は本物だと言える。そもそもこの馬は、未勝利勝ちしたときは差し馬向きの流れを差して勝った馬。未勝利の勝ち時計1.34.8(34.1=24.6=36.1:落差ー2.0秒)は、2023年に良馬場の京都芝1600mで行われた2歳未勝利のデフォルトの1.34.6(34.8=24.2=35.6:落差ー0.7秒)に比べて、テンが0.7 秒速く、中盤が0.4秒遅く、上りが0.5秒遅く、勝ち時計が0.2秒遅かった。それを考えると、白菊賞の内容は未勝利勝ちの内容よりも断然優秀であり、この馬にはまだ成長が期待できるかもしれない。

 この馬の懸案は、プシプシーナと同じだが、前走から中2週という詰まったローテーション。前走の内容は素晴らしかったが、やはりこのローテーションはマイナスだと思うし、前走のデキをどこまで維持できているか。ソコがポイントだろう。今の阪神は時計が速く、先行馬に有利なトラックバイアスが看取されるため、この馬にとっては脚質的にも厳しい展開が予想される。

 

●6枠12番 シカゴスティング

 ここまで4戦2勝。前走はファンタジーSで③着した馬である。この馬の懸念材料は、ここまで既に4戦を消化していること。このレースまでにキャリア3戦か?4戦か?は大きな違い。キャリア3戦組の阪神JFでの成績が{5・4・6・51}で連対率13.6%であるのに対し、キャリア4戦組のソレは{0・1・0・50}であり連対率はわずか2%。これだけ見ても、シカゴスティングには手が出ない。また調教の動きももう一つであり、前走のレコード決着のレースで③着に激走した疲れがあるのかも知れない。

 

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