「生きることは一筋がよし寒椿」 五所平之助句 | 宇都宮の書道教室【啓桜書道教室】

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今月18日まで国立新美術館で開かれていた独立書展にて

準会員中の最高賞となる「準会員賞」を賜りました。


業界的なことですが、(公財)独立書人団 (昭和の三筆・手島右卿が創設した書団体)では、

「準会員賞」 を受けることで、準会員から、会員へ推挙されます。

会員として推挙されるには、準会員の年次に加え、相当の成績が求められます。

私にとっては、長い間大きな目標でした。

スポーツの世界で言えば、一部リーグ昇格のようなもの。

相撲の世界では幕内。 歌舞伎で言えば名題昇進。

だから、ここからが本当のスタートですね。

やっと、スタートラインです。

本当にありがとうございます。

別に腕が上がったわけではないんですね。

ひとつの越えるべきハードルです。

また一から、自分を見直して、芸を磨けと、そういうことです。




準会員賞受賞作
「生きることは一筋がよし寒椿」 78cm×180cm (五所平之助の句)


今回、書道界用語で現代文体とか漢字仮名交じり文と呼ばれる、

いわゆる詩文を書きました。

まず、この句に巡り合えたこと。

単調で衒いのない句なのですが、

読むほどに味わい深く、分かりやすく、

心を離しがたい印象を残します。

映画監督・五所平之助氏が

女優・山田五十鈴さんへ贈った句として知られています。

「生きること」 「一筋」 「よし」

と、どの言葉も、強く清いものですが、

この句に命を持たせた言葉は、私は、「寒椿」

だと思います。

「寒椿」を句末に添えることで、色が、情景が、季節が生まれ、

命ある句としてこの句が生まれました。


一心に生きることの尊さに加え、

人へ譲るこころ、愛らしさ、何事にも耐え、そして鮮やかに・・・


生きることが不器用で、本当につらいと感じていた
10年ほど前の自分がこの句と出会い、

それからいつもどこかで支えてくれていた句でした。


10年経て、ようやく書くことができました。


この句を「書」にするにあたっては、

「一筋がよし」 から 「寒椿」 へかけての余白が

一番の狙いでした。


きっと、この句を作るにあたって五所平之助氏は、

「生きることは一筋がよし」 の後に、何を添えるのか、思考があったはず。

その思考を含めた「余白」であり、

書の上でも 鮮やかに 「寒椿」 を添えたいと思いました。


寒椿の風景でもあります。


余白における空間筆意は本当に難しく、

ややもすると寒椿は別の文字として紙面に配置されてしまいます。


この白を結ぶものはなんであったのか、

五所平之助氏の思考はいかなるものであったか。


一面が白くなったときも、色鮮やかな寒椿のように、生きて行きたいですね。