今日のおめざは…
詩人吉野弘さんだった。

ブロ友さんの記事を開くと
その名が目に飛び込んできて

不意打ちを食った感じ。

好きな詩人のひとりだが
久しぶりの出会いだった。

以前彼のことをブログに書いた記憶があって
検索すると過去記事が三つ出てきた。


そのうちの一つ、
彼の詩『Iwas born 』に因んだ記事がコレ下矢印

其処には
ちょうど今の私の年ごろの母と26歳の娘と生まれたばかりの孫がいる。


娘が中学二年の頃、

ふたりでタヒチに旅した…

とか、

孫が二歳の頃、

娘と三人でパリでしばらく過ごした…

とか、

思い出はいつも

娘や孫の年齢と共に蘇る。


今、孫は二十歳。

私はもうすぐ写真の母と同じ

73歳になる。


『Iwas born』


改めて吉野弘詩集を読み返してみたい。


さて、今朝口にしたおめざは


大好きな柑橘はるか、友人からのチョコレート風味の日本茶、


そしてセブンイレブンの草餅。


あんこたっぷりでなかなか真面目な一品。

二度目の購入である。





北九州のREIさまから

一足早くバースディカードも届いて

バースティソング♪を聞かせてくれた。

嬉しいプレゼントだ。






うさぎうさぎうさぎうさぎうさぎ



今日のブランチには

巻き寿司を作ろうと決めていた。

有明のいい海苔をいただいたからだ。


それを

こんなおむすびブランチに変更したのは


昨夜、みずほさんの記事を見たからだ。


ご夫婦とお孫さんで召し上がったという

おむすびと小さなおかずたち


それがなんとも美味しそうで

心変わりした。





一合のご飯の2/3で塩むすびを作り

小さなおかずを用意した。



さつま揚げと筍、インゲンの煮物。



半兵衛麩の蓬麩、まったり白味噌、九条ネギ、と

京都出自のものを集めての味噌汁。



どちらも上々の出来❣️




蕗味噌、蕪の酢漬け、蜂蜜梅、卵焼きに茹でたそら豆。



海苔は娘からのもり半。

入院中もらった残りだ。



梅も美味だし



蕗味噌も美味しい。





完食❣️

お見苦しくてスミマセン。




みずほさんのおかげで

しあわせなブランチになった。



蜂蜜梅はこれが最後の一個…

午後からはその買い足しに成城石井に
買い物に行く。

例の薄花桜色の紬に
春色の塩瀬を合わせて
半衿は猫柳。








よく晴れて
冷たい風の吹く午後、
ケープを羽織り手袋をして
行ってきます❣️



そうそう、昨夜思い立って

セルフで髪を数センチ切った。

アップにはそれで充分、

前髪が軽くなって嬉しい。





『Iwas born 』 吉野弘


I was born
確か 英語を習い始めて間もない頃だ。


或る夏の宵。父と一緒に寺の境内を歩いてゆくと青い夕靄の奥から浮き出るように 白い女がこちらへやってくる。物憂げに ゆっくりと。


女は身重らしかった。父に気兼ねをしながらも僕は女の腹から眼を離さなかった。頭を下にした胎児の柔軟なうごめきを 腹のあたりに連想し それがやがて 世に生まれ出ることの不思議に打たれていた。


 女はゆき過ぎた。


少年の思いは飛躍しやすい。 その時 僕は<生まれる>ということが まさしく<受身>である訳を ふと諒解した。僕は興奮して父に話しかけた。


----やっぱり I was born なんだね----
父は怪訝そうに僕の顔をのぞきこんだ。僕は繰り返した。
---- I was born さ。受身形だよ。正しく言うと人間は生まれさせられるんだ。自分の意志ではないんだね----
その時 どんな驚きで 父は息子の言葉を聞いたか。
僕の表情が単に無邪気として父の顔にうつり得たか。それを察するには 僕はまだ余りに幼なかった。僕にとってこの事は文法上の単純な発見に過ぎなかったのだから。


父は無言で暫く歩いた後 思いがけない話をした。
----蜉蝣という虫はね。生まれてから二、三日で死ぬんだそうだが それなら一体 何の為に世の中へ出てくるのかと そんな事がひどく気になった頃があってね----
僕は父を見た。父は続けた。
----友人にその話をしたら 或日 これが蜉蝣の雌だといって拡大鏡で見せてくれた。説明によると口は全く退化して食物を摂るに適しない。胃の腑を開いても 入っているのは空気ばかり。見るとその通りなんだ。ところが 卵だけは腹の中にぎっしり充満していて ほっそりした胸の方にまで及んでいる。それはまるで 目まぐるしく繰り返される生き死にの悲しみが 咽喉もとまで こみあげているように見えるのだ。淋しい 光りの粒々だったね。私が友人の方を振り向いて<卵>というと 彼も肯いて答えた。<せつなげだね>。そんなことがあってから間もなくのことだったんだよ。お母さんがお前を生み落としてすぐに死なれたのは----。


父の話のそれからあとは もう覚えていない。ただひとつ痛みのように切なく 僕の脳裡に灼きついたものがあった。
----ほっそりした母の 胸の方まで 息苦しくふさいでいた白い僕の肉体----

  

(作者註:「淋しい 光りの粒々だったね」は
詩集「幻・方法」に再録のとき、「つめたい光の
粒々だったね」に改めました)

 

吉野 弘
「現代詩文庫」思潮社