忘れられた女は私…

リハビリの先生が公休をとるので
代行を頼んでおくと言ったのに

本日のスケジュールにリハビリが入っていなかった。

どうやら忘れられてしまったようだ。

不貞腐れてオイコスヨーグルトに

ユズモモさんからの蜂蜜をたっぷり入れて

おやつに食べたり

ただまったりの午前中が空しい。




忘れた女はイビキさん。

夜勤の看護師さんから朝
1日のスケジュールを告げられ、
また日勤の看護師さんから
そのスケジュールが再度確認されるのだが、

二度にわたりリハビリのスケジュールを告げられたにも関わらず
時間になって看護助手さんが車椅子で迎えに来たのに
「今日はリハビリがあるとは聞いていない」
と言い

ついに
リハビリの先生自身が
お迎えに登場、

それには
「看護師さんがリハビリのこと何も言ってくれなかった」
としおらしい口調で言う。

リハビリの先生はそれを聞き流し
ふたりはリハビリ室へ。

私が当該の看護師だったら我慢ができず
言った言わないの議論になったかもしれないところだ。
母との間でそれが日常茶飯だったように。

それもたいていは
「そんなに言うなら
そういうことにしときましょ」
という母の言葉でピリオドを打たれてしまうのだったが
今はそれも懐かしい。




そのイビキさん
例によって午後8時近くなると
トイレコールをし

「車椅子に乗ったついでに電話をかけに行ってはいけないかしら?」作戦を取るが

それがいつも功を奏するとは限らない。

「今は忙しいからダメ」
「じゃあ電話はできないってメールしておくわ」

こんなやりとりの後
ベッドに戻って看護師さんがいなくなると
必ず息子さんに電話をする。
確信犯である。
(たぶんメールはできないのだと思う)

「ベッドからだから長話はできないの、
元気?変わりない?
もうすぐ帰るから頑張ってね」

母から息子への優しい思いやりに満ちた言葉。

そんなことが続いて
今はもう
注意する気にもなれない。
言ってもすぐに忘れてしまうだろうから。

彼女は息子をひたすら案じているが
心配なのは彼女自身。
手術後二週間を過ぎてまだひとりで立つこともできないし
シャワーも浴びられない状態なのだ。
もうすぐ帰るどころか
「年内の退院はもっと頑張らないと(無理)」
と看護師さんはやんわり言っている。

彼女と同年齢で同じ手術を受けたコイキさんと
つい比べてしまい

故障からの復活にも
やはり肝要なのは
本人の意思と意志という思いを新たにする。


クリスマスツリークリスマスツリークリスマスツリークリスマスツリークリスマスツリークリスマスツリークリスマスツリー

昨夜は
ロビーでミニコンサートだった。

19回続くコンサートが
コロナ禍で四年ぶりに開催とあって
職員も張り切っている。

行きたい人は車椅子で送り迎えしてくれるというのでドクゴさん、イビキさんも誘ってみたが、

結局出かけたのはコイキさんと私。

早めに行って最前列に陣取る。
コイキさんは杖、私はまだ歩行器。

三人席に加わったのは初めてお目にかかる老女。
腰が曲がった小さなおばあさんである。
彼女もまた歩行器移動。

このおばあさん、
なかなかシャッキリしておられて
スマホでビシバシ写真を撮られ
各曲毎にチカラいっぱい拍手。

ラストの曲には
「もう終わりなの⁉️」と呼びかけ
アンコールをねだるなど
何事にも積極的なのである。

なんでも五年前にも入院中で
コンサートを聴き、
クリスマスケーキを食べたとか。

あれ?どこかで聞いたハナシと思ったら
コイキさんもまるで同じ時期に同じ経験をされていたのだった。

そして
コイキさんは17日(明日)、
そのおばあさんは21日、
私は22日退院予定である。


どうやら3人共
病院食のクリスマスケーキは食べ損なうようだ。




コンサートは

"カラーガード"によるハンドベル演奏から始まった。

お馴染みのクリスマスソングメドレーに

ミッキーマウスマーチが続く。


皆、警察官らしいが

なかなかチャーミングな女子もいる。




かつて母が骨折でここに入院していた時に


談話室で

入院患者の男性が同僚の見舞い客に


「ここにいる間になんとか看護師さんと仲良くなりたい、このまま同僚との結婚なんて悲劇だけは避けたい」


そんな話をしているのを垣間聞いた。


彼らは警察官なのだった。


彼らに女性を見る目がなかったのか

今は時代が変わったのか

警視庁音楽隊には

とてもチャーミングなフルート奏者もいて



彼女もまた警察官なのだ。


調べてみると

音楽隊に入るためには

下記のような条件が必要らしい。






音楽隊に配属されるためには、まず警察官採用選考に合格し、警察学校での教養を修了しなければなりません。 その後、地域警察官として各警察署に配属され、交番勤務などを行い一定の実務経験を積んだ後に、本人の希望や適正に応じて定期異動により音楽隊に配属されます。



実際のところ

音楽大学出身者や吹奏楽部経験者も多いようだが

彼らもまたれっきとした警察官なのである。


さてその演奏。


クリスマスメドレーから

意外にもカーペンターズメドレー

そして最後は昭和歌謡曲のメドレーだった。



カーペンターズは1970年代、

そして歌謡曲はたぶん1970〜80年代のものだろう。


選曲は

観客の年代を配慮したものだったかもしれない。


では

警視庁音楽隊木管五重奏の一端をどうぞ。




この病院のある中野区野方警察署からも

たくさんの警察官が手伝いにやって来ていて

其処で一番偉そうな方に

撮影や録音の許可をいただいてある。


お土産までいただいてご機嫌な夜。




その警視庁音楽隊の

グランドコンサートも2024.3.6に

上野で行われるそうだ。

要予約、無料。


ご興味があればぜひ。




さて

忘れられた女けいあゆに

看護師さんが声をかけてくれて


彼女の見守りの下、

病棟内を杖歩行トレーニング。


姿勢のよさと安定した歩きぶりに

病棟内杖歩行自由の許可が出た。


日進月歩、

人らしい歩みへと進んでいる

けいあゆでる。