この夏、あちこちの被災地で花火大会や慰霊際、イベントが開かれました。
それを見て
「被災地で花火を上げたりイベントをするくらいなら、そのお金を使ってもっとやることがあるだろ!」
という意見を言う人もいます。
ぶっちゃけ、僕もそういう気持ちを持っていました。
完全に否定するまではいかないものの、なんでどいつもこいつもそこまで花火を上げたりイベントを開いたりしたがるのか疑問でした。
「あれは主催者側の自己満足で、本当に被災地のためになっていなこともあるんじゃないか?」と。
そんなことを考えているうちに、縁があって久ノ浜の奉奠祭というイベントをボランティアとして手伝うことになりました。
8/27に行われた花火大会を含むお祭りです。
そこでこれはいいチャンスだと考え、奉奠祭を主催している
北いわき再生発展プロジェクトチーム
の事務局にいる本柳真一さんにその疑問をぶつけてみました。
なお、話をうかがったのはイベント開催2週間前の8月13日で、本柳さんの発言内容もそれにそったものになっています。
【奉奠祭のポスター】
<以下インタビュー>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
ーーなぜ、花火を打ち上げようという話になったんですか?
あれはいつだろう……6月に入ってからですね。
久ノ浜って、基本的にボランティアの人が来なかったんです。
それで地元の若者が中心となって、北いわき再生発展プロジェクトチームの前身とも言える「結」というグループをつくり、自分たちでガレキ撤去などをしていたのですが、平日に関しては基本的に2人、多いときで4人しかいないんです。
そんな少人数で、毎日膨大な瓦礫の山を相手にしていると、心が折れてくるんですよね。
「なんでボランティア来ないんだろう?」
「こんなんじゃ、いつまで経っててもらちがあかない……」と。
そんな時にメンバーの1人が
「花火が見てえ」
と言い出して。
それがきっかけでしたね。
といってもその時は、
「有名な小名浜の花火大会みたいな派手なのは無理としても、心に残る一発を打ち上げたい」
「メモリアル花火として、ミカン箱の上でトラメガ(拡声器)持って叫んで、後ろで市販の花火をパンと上げるだけでいいんじゃないか」
という程度の話でした。
たったそれだけで、
「そんな楽しみがあるならガレキももうちょっと頑張って運ぶか」
と前向きになれたんです。
ーーそれがどうして大規模な花火大会に?
地域のじいちゃんばあちゃんと話をしている中で花火の話をすると、みなさん「ぜひ見たい」と言うんです。
70歳80歳の人たちから、
「この久ノ浜は60年くらい花火が上がっていない」
「花火なんて小さい頃に見たっきりなんだよね」
という声がどんどん上がってきて。
しかも、おじいちゃんたちが考えているのは、花火大会のような打ち上げ花火なんです。
そこまで期待されているならやるしかないぞ、と(笑)
当然お金なんかその時点ではゼロですし、役所の申請関係が間に合うのかもまったくわからない。
できるかできないかわからなかったけどやれるところからやってみよう、というところからのスタートでしたね。
ーー「70歳80歳のお年寄りたちが見たがっている」という以外に、花火を上げる意味はあるのでしょうか?
僕らはあると思っています。
花火大会を8月にこだわったのは、夏休みだからです。
この地域って子供の姿が見えないんですよ。
理由は単純で、小学校中学校が閉じているから。
実際のところ、放射線量はいわき市の中心地である平とくらべてもそれほど高いわけではなくなったんですけど、やっぱり子供を抱えた親御さんはナーバスになっていて久ノ浜には戻らってこない。
久ノ浜に住んでいる子たちも外の学校にスクールバスで通い、家に帰ってきても屋外に出てはいけはいけませんと言われてしまいます。
かといって、口先で「放射線量は大したことないから戻ってきてください」と言っても、誰も聞いてくれません。
だったら花火大会を開き、日中もお祭りみたいな感じで賑やかしをしたら、完全に戻ってくるのは難しいとしても、ひょっとしたら数時間だけでも久ノ浜に戻ってきてくれるんじゃないかと思って。
あと、これはいわき市全体に同じ傾向があるんですけど、みんな高校を卒業したら地元を出て行くんです。
そういう人たちに一回久ノ浜に戻ってきて現状を見てもらいたい、という気持ちがあります。
久ノ浜は、今こんなに頑張って復校しようとしているんだぞ、と。
久ノ浜という地名を外に向かってもっとアピールしたいという気持ちがあります。
震災前から過疎化が進み、景気もすごく悪かった。
震災後は支援がなかなか届かなかったし、報道も来なかった。
それは久ノ浜って町をしている人がいないからなんです。
誰も知らない場所だからその情報を知りたいとも思わないし、手を差し伸べようともしない。
だから町を復興させるための第一段階としては、町の名前を広めないといけないなんです。
また、久ノ浜のこれからを考えると、まずは町に人を戻し、その上でみんなで「この町をどうしていくか」を話し合わないといけない。
かつ、どこかの地域のものまねではなくて、この町の独自性を出していかないと必ずどこかで埋もれてしまう。
でもそれは僕たちだけでできることじゃないですよね。
だからこの祭りをきっかけに、町の人間全員がそういう意思を持ち、じゃあ頑張ろうと一丸になれる機会にしたいと思っています。
ーー言葉で言うのは簡単ですが、実際にそれができると思いますか?
久ノ浜は小さいですから、その小ささを生かしてなにかやっていければと思っています。
小さいから政治的エアポケットになって、支援も来なくて一度は心が折れかけたんですけど、その根っこには行政に頼りっきりだったというのがありました。
でもこれからはそれではダメでしょう。
行政と頼るのではなく、かといってケンカするのでもなくて、まあお互いこっちは行政が得意だ、こっちが民間でやりましょうと、そういう形でやっていくいいきっかけかなと思います。
ーーステージ上で子供たちや若者たちがスピーチをし、終わったら花火を1発打ち上げるスタイルにしたのはなぜですか?
あれだけのことがあったんですから、後ろ向きの気持ちは誰だって持っているじゃないですか。
苦しかった、辛かった、この先どうしよう……
でもそればかりに引っ張られたら、この先のことを考えたり実行したりしようにも足を踏み出せない。
そこでこの花火大会を、区切りの場所、決意の場所として位置づけたいと考えました。
スピーチは、久ノ浜の小中高校生、飯舘村の小中学生、石川町の小学生と高校生、この7組に、あとは久ノ浜の人たち3組にお願いしようと考えています。
なんでもいいから喋ってくれ、と。
辛かったことでも「こんなことがしたい!」という希望でも、前向きでも後ろ向きでもいいから心の中にあることを喋ってもらうつもりです。
前向きなことを喋った人には、みんなの前での決意表明だから自分でも忘れないで、聞いていた人も忘れないで、ということです。
また後ろ向きなことを喋った人に対しては、ステージ上で声に出して花火がドンと上がったら、そこで1回リセットしよう、後ろばかり見ていては進めないから1回ここで終わりにしようね、という位置づけにしたいなと思っています。
【当日のスピーチと花火打ちあげの様子】
ーー当日は何人くらいのお客さんが来てくれると思っていますか?
もともと久ノ浜の住民が5800人だったので、6000人集めたいって言ってます。
でも、実数読みで3000人いったらバンザイかなと。
正直、3000人超えたら人員整理の部分でパニックが起きますよ(笑)
<インタビューは以上>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
※本柳さんの発言をもとに、その一部分を取りだし読みやすいように再構成してあります。もし本柳さんの発言主旨と違ったいる場合、その責任はすべて文章をまとめた僕にあります。
奉奠祭の当日は、いざフタを開けてみると主催者発表で8000人の人が集まったというから、多少サバを読んでいたとしても事前の読みの2倍以上の人が来たということですね。
それで何の事故も起こさなかったのだから、大したものです。
花火大会を行う意味についてですが、僕個人としては納得できました。
今回のインタビューをふくめ、北いわき復興発展プロジェクトチームの人と話をしていて感じるのは、「自分の手の届く範囲のことを愚直に精一杯やっているのかな」ということです。
あれだけの被害があった地域ですから、それほど人数もいない民間人のグループができることは限られています。
たとえ震災がなかったとしても、過疎化が進み明るい展望が見えにくい町です。
国の具体的な震災支援策が決まらないとこの先の町づくりの方向性を議論することすら難しいのに、そんなものはいつまで経っても決まりません。
自治体は自治体で、被災者のことを本当に考えているのかと首をかしげたくなるような対応ばかりしてきます。
放射能汚染に関しては、それこそ手も足もだせません。
しかし国や自治体、東電や原発に対して文句を言っていても、なんら事態は改善しないことを北いわき再生発展プロジェクトチームの彼らはよく知っています。
彼らはさまざまな制限や悪状況の中で、「久ノ浜の未来をつくっていくために、今自分たちは何ができるのか?」を必死に頭を振りしぼって考え、泥まみれになってそれを実行しようとしています。
その答えのひとつが花火大会だったのでしょう。
上のインタビューを読んだ上で、それでも被災地で花火を上げることに対して否定的な人はいると思います。
それは人それぞれの意見なので、否定はしません。
ただ少なくとも、奉奠祭が「楽しいイベントをやりたい♪」と安易は発想で開催されたのではなく、その裏には本当に多くの思いが、そして長期的な戦略と計算がこめられているのだということを理解してもらえればと思います。
●北いわき再生発展プロジェウトチーム・公式サイト
奉奠祭当日の報告や感想はまたあらためてまとめるつもりですが、もうしばらくかかりそうです……
当日の写真はfacebookに上げているので、よければそちらを見てもらえると嬉しいです。
●奉奠祭の写真
※今回のインタビュー内容に関しては別の形で公開する可能性があり、それによってはこのエントリーを修正、あるいは削除する可能性があります。ご了承ください。