@南長野運動公園総合球技場


6日にスウェーデン遠征に臨むなでしこジャパンのメンバー21人が発表されてから初めての公式戦。
本格的に降っていた雨は、試合が始まる頃には止み、晴れ間が見えて過ごしやすい一日でした。

長野はここまで(リーグカップは)2勝2敗の3位。
6月4日の1節でベガルタとアウェイで対戦した際は、1-2で敗れています。

両チームのスタメンは…


【長野L】

  横山久美      泊志穂

       齊藤あかね
大宮玲央奈         児玉桂子
       國澤志乃

 矢島由希 坂本理保 五嶋京香 野口美也

      池ヶ谷夏美

4月のリーグ序盤から快進撃を見せ、ダークホースとなっている昇格1年目の長野L。

リーグは中断期間に入っていますが、首位ベレーザと勝ち点4差の2位で前半戦を折り返しました(後半戦は9/10〜)。

今季、公式戦15試合(リーグ11試合/カップ4試合)の成績は、9勝5敗1分。勝利した9試合のうち、7勝がホーム(南長野運動公園総合球技場)。観客動員数も多く、ホームでの雰囲気の良さが結果につながっている強さも特徴ですね。そして、15試合で決めた33ゴールのうち、19ゴールを決めているのがエース・横山選手。
ゴールシーンはスポナビライブで見られますが、どのゴールも簡単なゴールではないんですよね。でも、ここぞという場面で確実に決めるところはさすが。

代表メンバーには、その横山選手とともに、今季ワンボランチとして不動の存在となっている國澤選手が初招集されました。


【仙台L】

     井上綾香 小野瞳

中野真奈美         嘉数飛鳥
     岸川奈津希 川村優理

 佐々木繭 市瀬菜々 北原佳奈 坂井優紀

     ブリトニーキャメロン

一方、リーグは4位で中断を迎えている仙台。
代表には、前回のアメリカ遠征に続き川村優理選手と佐々木繭選手、そして今回FWからは有町紗央里選手が選ばれました。
カップ戦は好調で、ここまで3勝1分と無敗で首位。

雨に濡れてきらめく芝生に、オレンジのユニフォームと青のユニフォームが鮮やかでした。


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高さで勝る仙台Lが、サイド攻撃からクロスを積極的に入れていきます。
仙台Lの先発11人の平均身長は164.7cm。中でも坂井選手は171cmの高さ。173cmの北原選手と共に、迫力のある最終ラインを形成しています。

一方、長野も中盤のダイヤモンドに前線の横山選手を加えた自慢の攻撃力を発揮。
仙台Lは最終ラインの坂井選手と北原選手が、横山選手の動きに常に目を光らせていましたね。

3分、長野L 中盤の競り合いのこぼれ球を、國澤選手がダイレクトで前方のスペースへ絶妙のスルーパス。走り込んだ大宮選手がDFを背負いながらGKブリトニー選手と1対1を迎えますが、ここはブリトニー選手に軍配が上がります。

5分 仙台L 右CK。GKの正面に飛んだボールに井上選手が飛び込み、こぼれ球に坂井選手が反応しますが、ここは長野のディフェンス陣が身体を張ってクリア。

15分 長野L カウンター。國澤選手の縦パスを受けた泊選手が大宮選手に展開。
その流れから得たCK横山選手のキックをファーで國澤選手が折り返しますが、ここは中で仙台Lがブロック。

18分 仙台L 右サイドで得たFK。中野選手の左足からゴールに向かっていく回転のかかったボールが枠の右隅を捉えましたが、これは池ヶ谷選手が反応してクリア。
この流れからCK。こぼれ球を中野選手が左足アウトサイドで上げたワンタッチクロスを、ゴール前で坂井選手が合わせますが、ボールはクロスバーに弾かれます。

23分 長野L 左CK。横山選手がファーに送ると、齊藤選手が高さを生かしてヘディングシュート。ボールに勢いがなく、ブリトニー選手の正面。

29分 仙台L 中野選手が左サイドの裏に抜け出してパスを受け、ドリブルで運び、ゴール前で中へ横パス。フリーで走り込んだ井上選手がゴール前で合わせますが、池ヶ谷選手が鋭い反応で弾き出します。

30分 長野L 左サイドのスローインの流れから、横山選手とワンツーのリターンを受けた國澤選手のミドルシュートは力なく、ブリトニー選手が弾き出します。

34分 長野L 横山選手と泊選手が前線からプレッシャーをかけてミスを誘い、泊選手が奪うと横山選手にスルーパス。横山選手がゴールの近くでボールを持つと会場が沸きます。
しかし、ゴール前で切り返したところでブリトニー選手が飛び出してブロック。

38分 佐々木選手の仕掛けから得たCK。中野選手のキックに、ファーから中のスペースに飛び込んだ川村選手がマークを上手く外してヘディングで合わせ、待望の先制点。⚽️0-1

しかし、その2分後でした。
五嶋選手からのロングフィードに、裏に走り込んでいた國澤選手が追いつくと、前に出ていたブリトニー選手のポジションを見逃さず、ループシュートでファーに決めてすかさず同点に⚽️1-1
2分前のCK、マンツーマンで川村選手のマークについていたのが國澤選手。ゴールを許した場面でマークを外してしまったとに責任を感じていたようです。



共に、スウェーデン遠征メンバーに選ばれ、同じポジションで同じ背番号6をつける國澤選手と川村選手のマッチアップは、一つの見所でしたねアップ


「川村選手がFWを追い越して前に行く場面もあったのでケアしていました。川村選手は身長があるので、競り合いで負けても、せめて身体を当てて、自由にやらせないようにしようとは意識しました。ただ、失点の場面では自分が川村選手のマークでしたし、試合の中でも自由にやらせすぎたかなと反省しています。ピッタリついていたところでやられたので、その後は少し距離を置いてマークするようにしていました。(その後のゴールシーンは、)取り返そうと思ってやっていたので、返せて良かったです」(國澤選手)


アシストのボールを出した五嶋選手は、19歳と若い選手。リーグ戦で常に控えメンバーに名を連ねながらも出場機会はありませんでしたが、本田美登里監督はカップ戦で積極的に起用。1試合ごとの成長に手応えを感じているそうです。

「五嶋はこのカップ戦で、ひとつ大きなものを掴んだと思います。それは彼女の成長でもあります。ポジション争いもある(ことも、良い経験になっているのではないか)。小さい(156cm)割にはヘディングが強いんですよ」(本田監督)
と評価していました。


45分 長野 児玉選手が齊藤選手に当てて、齊藤選手が後ろのスペースに流すと、横山選手が走り込みます。しかし、ここはブリトニー選手が読みで飛び出します。

HT 仙台L 小野瞳→有町紗央里

一進一退の前半でしたが、有町選手が入り、流れは再び仙台に。
守備での献身的なハードワークも有町選手の特徴ですね合格

54分 仙台L 有町選手が前線でボールを収め、右サイドの嘉数選手へ。嘉数選手が右サイドを突破して低いクロスを上げると、有町選手が頭から飛び込みます。ボールには当てられずゴールにはつながりませんでしたが、接触も恐れない有町選手の果敢な飛び込みで、それまでクロス主体だった仙台の攻撃がより多彩に。

64分 長野L 左サイドのスローインから、角度のない位置で齊藤選手から受けた横山選手がターンから振り向きざまのシュート。ファーサイドを狙ったコースや球質も完璧に見えましたが、ブリトニー選手の鋭い反応がここでも壁となって立ちはだかります。

前半が激しかったこともあってか、60分を過ぎると運動量も落ちて、お互いに無理をせず丁寧なビルドアップからの攻撃が増えました。

73分 仙台L 井上綾香→浜田遥

74分 長野L 齊藤選手からのスルーパスを受けた大宮選手のシュートはバーの上。

77分 長野L 大宮玲央奈→内山智代

77分 仙台L 高い位置で有町選手がプレッシャーをかけて川村選手が奪い、ショートカウンター。川村選手の横パスを嘉数選手がワントラップでコントロールしシュートを放ちますが、バーの上へ。

80分 長野L 國澤選手のグラウンダーのロングパスを左サイドの高い位置で受けた横山選手が、切り返してファーサイドを狙ったシュート。これも浮いてしまいます。

85分 長野L ハーフウェーラインの前あたりで得たFK。横山選手の蹴ったボールは、高い位置を取っていたGKブリトニー選手のポジションを見極め、直接ゴールに吸い込まれました。ブリトニー選手が必死で手を伸ばすも、届かず…時間が止まったような、スーパーゴールでした⚽️1-2

「ミーティングでもGKが前に出てくるという話をしていましたし、その前に同じような場面で飛び出されて取られていたので、(最後のFKは)思い切って狙いにいきました」
と、横山選手。
キックのポイントからゴールまでの間に障壁がなかったとしても、あの距離と軌道と回転で決めるのは難しいと思います。相手の位置や重心を見極めて、そのイメージを具現化できるのが横山選手の凄さでもありますね。

86分 仙台L 嘉数飛鳥→安本紗和子
   長野L 児玉桂子→神田若帆

88分 仙台L 仙台が人数をかけて猛攻に出ます。坂井選手のクロスに中野選手がヘッドで合わせますが、ボールは僅かにゴールの左へ。

90分 仙台L 中盤から大きく蹴り出されたボール。有町選手がスピードを生かしていち早く追いつき、GK池ヶ谷選手と1対1。しかし、シュートは正面に。

最後の最後まで攻めた仙台。一方、長野も守備を固めるだけではなく、反撃の機会を窺う姿勢を見せ、スタジアムを沸かせていました。

ですが、スコアは変わらず、試合終了。





長野は、横山選手が厳しいマークに遭いましたが、その分、サイドの児玉選手、大宮選手、トップ下の齊藤選手が献身的なプレーでリズムを作り、フリーになった中盤の國澤選手が前線に飛び出す場面も多く見られました。
シュート数は長野Lが14、仙台Lが7。長野Lのシュートで終わる攻撃が、流れを引き寄せた印象もあります。


仙台Lは特に前半、左の中野選手、右は坂井選手のサイド攻撃からのクロスボールが効いていました。流れの中からの決定機は多くない中で、クロスからの精度と決定力が高ければ、違った結果になっていたかもしれません。
千葉泰伸監督は課題と手応えも話していました。

「プラン通りに行っていた中で、横山選手も抑えられてはいましたけれど、最後の最後でやられてしまいました。ただ、それよりも、決定的なチャンスを決めきらないとサッカーは勝てないので。何度かあったチャンスを一つでも取っていれば勝ちにつながったゲームだと思います。何人かいるFWは全員特徴が違いますし、それを生かすような攻撃ができつつあるので。厳しい戦いが続きますが、(グループBで)残り3試合ありますので」(千葉監督)


マッチアップする機会も多かった國澤選手(長野)と川村選手(仙台)、背番号「6」対決と両選手のゴールシーンは見ごたえ十分でした。ただ、最後の横山選手のシュートはやはり鳥肌ものでしたね。これだけゴールを量産していると、いとも容易くゴールを決めているように思ってしまうかもしれませんが、実は難易度の高いゴールが多いですよね。中でも、今日のゴールは今季のベストゴール候補に挙がりそうです。

本田監督も決勝点について
「試合前から、相手GKのポジショニングが高いということは話していました。あの場面で打ったのは、彼女の戦術理解度の高さだと思います」
と話していました。

戦術理解度といえば…
横山選手は常にオフサイドラインを見ながら相手DFと駆け引きし、パスの出し手にも正確なタイミングを要求する場面が1試合に数回見られます。

今日は厳しいマークの中で苦しみましたが、ユニフォームを引っ張られても倒れず、最後まで粘る姿勢も良いですよね。世界を見渡せば、「演技も実力」と言われるサッカーもあるだけに。


そして、攻撃に特徴がある長野ですが、守備陣の踏ん張りも忘れてはいけませんね。

キャプテンで、ディフェンスリーダーの坂本選手。

「やはりチームとしては攻撃が特徴ですし、そういう姿勢をみなさんは見に来てくれていると思うんです。その特徴はもっと出していきたいですし、そのスタイルを生かすために、後ろの選手がどれだけ頑張れるかだと思います。光を浴びることは少ない縁の下の力持ちかもしれないですが、そこにいて、チームに安心感を与えられる選手になりたいです。輝く選手を輝かせるために、足元を見ながらコツコツやる選手も必要だと思うので。後ろがしっかりしたチームを作っていきたいと思います」
(代表に2人選ばれたことについて)選手一人一人が評価されているなというのは、いろんな選手が試されているという点でも感じます。チャンスはあると思いますし、自分も狙っていきたい。横山はこれからもどんどん引っ張っていってもらいたいですし、國澤も、今回が初(の代表招集)ですけれど、実力はチーム(長野)の全員が認めています。代表で得たことをチームに還元してほしいですし、チームとしても2人に頼っている部分が大きいので、2人がいない中でどれだけできるか、一丸となって表現していきたいです」(坂本選手)

キャプテンとしての責任感と、個人としての代表への強い思い。代表に新たに選ばれている選手たちの存在が、刺激にもなっているんですね。

そして、見事な同点弾を決めた國澤選手。

「(同点弾の場面)五嶋選手からボールがきて、(DFに)引っかかったかなと思ったんですけれど、下がスリッピーだったこともあってかミスになって。最後はボールに触るのに必死だったんですが、なんとかゴールに届いて良かったです。(勝利は)パルセイロの守備が全員で前からはめにいく守備の仕方をするので、チームの守備がはまった結果だと思います。
(なでしこジャパンに初招集され、率直な気持ち)
選ばれたことを聞いた時は、嬉しさよりも、『大丈夫かな?『という不安が率直な気持ちでした。守備的なポジションですし、守備面は特に要求されると思うので応えていきたいです。しっかり身体をぶつけることや、しつこく寄せにいくところは出していきたい。私は、横山みたいにドリブルが上手いとかボールがキープできるわけでもなくて、特に目立つプレイヤーでもないと思うんですけれど。この選出は、パルセイロレディースの今シーズンの結果があってこそだと思うので、パルセイロの誇りを持って精一杯やってきます」(國澤選手)

中盤での存在感は、この試合でも抜群でした。代表メンバーに選ばれて注目もされる中でプレッシャーもあったと思いますが、試合には平常心で臨んでいたとのこと。緊張はしないタイプなのだそうです。頼もしいですね。本田監督は國澤選手の持ち味についてこう話しています。

「國澤は呼ばれるべくして(代表に)呼ばれたと感じています。代表で求められるものとチームで求められるものは違うと思いますけれど、彼女の守備範囲の広さと、ボールを奪取する力はなでしこジャパンでも十分通用すると思うので、勇気をもってプレーしてほしいと思います」(本田監督)

最終ラインから最前線まで顔を出す運動量や、「得点も取れるボランチ」としての期待も。スウェーデン遠征でも持ち味を見せてほしいですね。



一方、最後の最後で勝利が手元からするりと抜けてしまったような感じもあった仙台。
攻撃では高さを生かしてセットプレーでのターゲットになり、積極的なオーバーラップでもチャンスを演出したサイドバックの坂井選手。

「上がるチャンスは何度かあったんですけれど、クロスの精度で、しっかり味方をめがけてピンポイントで蹴れていれば、もっと得点シーンを増やせていたと思います。
(最終ラインの横山選手との駆け引きについて)
センターの北原(佳奈)と横山選手が残るということで、私も上がるチャンスを見計らいながらも横山選手を気にしてポジションを取っていたんですけれど。結構ボールを集めてこられて、苦しい展開になってしまいました。今回勝っていればもっと優位に決勝リーグに駒を進められたと思うので残念です。残り3戦を勝ってしっかり決勝トーナメントに進みたいと思います」

代表経験のある坂井選手もまた、今後代表候補になる可能性のある選手だと思いますし、注目していきたいですね。

カップ戦はリーグ戦で出場機会の少ない選手を積極的に起用するチームは多く、実戦経験が選手たちの成長を促していると感じます。
本田監督も、若手選手のモチベーションの高さと成長に手応えを感じているようでした。一方で、ベテラン選手のモチベーションを上げることの難しさにも触れていました。
「心」をマネジメントするのは大変ですよね。

来週から代表選手が不在となる中で、各チームがどのようなチームマネジメントを見せるのかにも注目です






昨日のカップ戦AグループはINACが伊賀に2-0と勝利でグループ2位をキープ(首位日テレより1試合多い)。
今日はグループAがコノミヤ vs 日テレ、グループBは湯郷ベル vs 新潟Lの試合があります⚽️