@神戸ユニバー


Aグループ首位の日テレと、2位INACの一戦。
毎回激しい攻防になるカードですが、強い陽射しがピッチに照りつけ、消耗戦となりました。

2013年以降ベレーザに8戦未勝利となっているINACの、この一戦にかける意気込みと、女王の座は譲らないといわんばかりのベレーザの風格。代表候補を多く擁する2チームは個々の力もあり、相手の出方を窺いながらの駆け引きも巧みで、この試合も見応えがありましたねドキドキ



スタメンは…

【INAC】

    大野忍  京川舞

鮫島彩            中島依美

   杉田妃和  チョソヒョン

 守屋都弥 田中明日菜 甲斐潤子 近賀ゆかり

       武仲麗依

いつもはサイドバックの鮫島選手がサイドハーフに入り、守屋選手がサイドバックへ。
2トップは大野選手と京川選手。京川選手のFWは、今季初めて。

【ベレーザ】

   田中美南  籾木結花

長谷川唯       三浦成美

    中里優 阪口夢穂

有吉佐織 土光真代 岩清水梓 清水梨紗

     山下杏也加



CBの村松選手は負傷中で、岩清水選手と中央で組んだのは土光選手。
右サイドにはU-20代表候補の三浦選手が入りました。


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どちらも最終ラインが高く、ボールを保持しながら攻守の切り換えが速いという共通点のある2チーム。
精度やタイミングなど、選手間のあうんの呼吸と技術ではここ数年ベレーザが上回っている印象です。特に中盤の完成度が明暗を分けている印象でしたが、この試合ではINACはサイドの裏を積極的に狙う姿勢も見え、真っ向勝負というよりは相手ありきで勝負にこだわる姿勢も見えました。
ただ、最後の局面はしっかりとリスクマネジメントもできていたベレーザ。特に鮫島選手と守屋選手、清水選手と、同サイドでスピードを制し合う駆け引きは見応えがありました。



4分 ベレーザ 籾木選手のロングパスを裏で受けた田中(美)選手が抜け出しますが、シュートはGK武仲選手が飛び出してブロック。

14分 ベレーザ 阪口選手の縦パスを左サイドの深い位置で受けた田中(美)選手。キープして落とすと、籾木選手が左足ダイレクトで合わせますが。武仲選手が正面でキャッチ。

15分 ベレーザ 有吉選手のパスを縦のスペースで受けた籾木選手が左足ダイレクト。ボールは浮いてしまいます。

17分 ベレーザ 中盤から、中里選手のミドルシュートは浮いてしまいます。

23分 ベレーザ ゴール前中央で受けた籾木選手が3人を引きつけて左サイドへパス。走り込んだ長谷川選手の左足のシュートはクロスバーの上へ。

ベレーザが自在にボールを回し、なかなか奪いどころを定められないINAC。しかし、給水タイムをはさんで流れが微妙に変化。

28分 INAC 左サイドの低い位置でボールを持った大野選手から、ゴール前に抜け出した中島選手へ絶妙のスルーパス。決定的な場面でしたが、オフサイドの判定。ベレーザのラインコントロールが光ります。

32分 ベレーザ INACの左サイドのスローインに有吉選手がプレッシャーをかけ、こぼれ球を籾木選手がコントロールし、すかさずシュート。ファーサイドを狙ったシュートはわずかにクロスバーの上。

37分 ベレーザ またINACのスローインにプレッシャーをかけたベレーザ。こぼれ球を清水選手が中央で拾い、間髪入れずにシュート。枠を捉えていましたが、武仲選手が鋭い反応で弾きます。

43分 INAC 近賀選手から絶妙のロングボールがゴール前の京川選手に通り、頭で後ろにそらしますが、ミートせずGK山下選手が難なくキャッチ。

44分 INAC 人数をかけて押し込むINACの時間帯が続きます。右サイドで中島選手のクロスは三浦選手が中央でクリア。

陽射しはピッチの温度を確実に上げ、スタンドもかなりの暑さに。
球際はどちらも激しく、頭も体力も消耗する前半戦だったと思います。


「前半はすごく暑くてしんどかったです。相手が勢いを持ってプレッシャーに来る中で、それを回避しながらビルドアップが上手くいかない時間もありました。ただ、チャンスは作れていたので、点は取れると思っていたので、焦らずにいこうと思っていました」(中里選手)


HT ベレーザ
三浦成美→隅田凛
土光真代→上辻佑実

右SBの清水選手が土光選手の位置(CB)に入り、隅田選手が右SBへ。上辻選手が右SHに入ります。清水選手のCBは初めて見ましたが、森監督(ベレーザ)はその意図をこう話していました。

「カップ戦は普段試合に出ていない選手を試していることもあり、土光を起用しましたが、彼女も先週胃腸炎になってしまったんです。本人もできるということだったので出してみたんですけれど、やはり試合中に顔が青白くなってきたので代えました。ちょうど土光が(胃腸炎で)休んでいた時に、紅白戦で(清水)梨紗を真ん中(CB)において、(隅田)凛が右SBという形をやっていたんです。梨紗のCBも悪くないと思うんですよ。相手の攻撃を(空中戦などで)跳ね返すのは上手くないかもしれないけれど、読みの速さがあるし、特にINACとの試合はグラウンダーのボールが多くなるので、彼女の良さが出しやすかったこともあります」(森監督)


52分 INAC 守屋選手のロングパスに抜け出した鮫島選手がマイナス気味に折り返し、フリーの京川選手が走り込んで迎えた決定機。
「良いボール過ぎて、軸足に当たってしまいました。身体の向きが悪かったです」(京川選手)
と、出した左足はミートせず。軸足に当たって浮いたボールを身体を捻って打ちますが、これは山下選手の反応スピードが一枚上手でした。

陽が落ちてピッチは陰に入り、一気に涼しくなりました。

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56分 INAC カウンターから、中島選手が長いドリブルで中盤のラインでボールを運び、右サイドをオーバーラップした近賀選手へ。近賀選手が中に折り返し、走り込んだのは杉田選手。しかし、ダイレクトで合わせたシュートはミートせず、クロスバーの上へ。

59分 INAC 大野忍→増矢理花

61分 INAC 入った増矢選手が早速ドリブルでアクセントをつけ、INACがCKを獲得。天性の”感覚”をピッチで表現する増矢選手のプレーはやはり見ていてワクワクしますね。前を向かせたら怖い選手だということは相手も分かっているため、ファウルを誘える強みもあります。
CKを蹴るのは中島選手。山なりの長いボールに甲斐選手がファーで合わせ、逆サイドの田中明日菜選手が角度を変えて、INACが先制。サッカーボール1-0

田中(明)選手は、今季カップ戦も入れて、3ゴール目。
「CKはずっとファーで狙っていたんですが、なかなかボールが来なくて。あの場面ではニアに行きました。(甲斐)潤さんの折り返しが良い形できたので当てるだけでした」

一方、先制される試合は今季もほとんどなかったベレーザ。この失点について阪口選手はこう話していました。
「前半は上手くはまっていない感じはあったんですが、後半はわりと良くなって、いつもの感じが出てきた矢先の失点でした。ただ、流れの中のパスワークで崩された失点ではなくて、セットプレーで一本やられただけなので、ダメージはそれほど大きくなかったです。セットプレーも取られたくはないんですが、仕方がないとすぐに切り替えられたのは良かったです」

その言葉通り、残り30分を切って先制されても攻め急ぐなどの焦りは見えません。30分間あれば十分に決定機を量産できるという自信も、マイペースを貫ける強みですね。

74分 ベレーザ 長谷川唯→植木理子

ベレーザが押し込む時間帯が続き、INACにもカウンターのチャンスが増えます。

79分 ベレーザ 植木選手が左サイドの高い位置で受けると、2人に囲まれながら間をドリブルで抜けてシュート。しかし、これはサイドネット。

79分 INAC 鮫島彩→高瀬愛実
京川選手が左サイドに入り、高瀬選手がトップへ。

81分 ベレーザ 上辻選手のミドルシュートはバーの上へ。

81分 ベレーザ 隅田選手が右サイドでキープし、引きつけて落としたボールを、フリーで受けた阪口選手がワンタッチでクロス。まさにピンポイントクロスでした。合わせたのは植木選手。ゴールの右上を揺らし、植木選手の4試合連続ゴールで同点に。サッカーボール1-1

86分 INAC ソヒョン選手が左サイドに展開。守屋選手が左サイドをドリブルで運び、クロス。高瀬選手が囮になり、ファーサイドの増矢選手がフリーで走り込み、ワントラップからシュート。完璧なタイミングでしたが、シュートのコースが少し甘くなり、反応の鋭い山下選手の守備範囲でした。

89分 ベレーザ 籾木選手のキックを、ファーサイドで岩清水選手が合わせますがバーに弾かれます。こぼれ球を中里選手が、回り込んでミドルシュート。枠を捉えていましたが、杉田選手が身体を投げ出して弾き出します。


ここで試合終了。



酷暑の消耗戦で、前半は得点こそ入らなかったものの白熱した攻防が続きました。
後半は陽が落ちて気温も下がりましたが、前半の疲労の蓄積もあったのか、後半20分を過ぎると長谷川選手(ベレーザ)、鮫島選手(INAC)と、足を攣る選手が続出。運動量の多い2人が足を攣ったことも、厳しい試合だったことを証明しています。

試合を振り返って、松田岳夫監督(INAC)。
「暑さの中でも、戦うのは当たり前のことですが、運動量の部分はチームとして出せたと思います。連敗してチームの流れが良くない時は、ただ繋ぐだけになってしまったり、切り換えも遅く、アグレッシブさに欠ける傾向があったので。そういう意味では、『動きながらサッカーをする』というところを次に繋げたいです。
(杉田妃和選手の評価について)
彼女は今、すごく積極的にプレーしていますし、精度も高まってきている。ただ、今日はまったく(ダメ)でした。周りがあれで良いプレーだと評価するなら、彼女のことを分かっていないということだと思います。本当はもっとできるし、あれぐらいのプレッシャーの中なら確実にボールを止めて展開できるはずです。ただ、彼女の中にも見えないプレッシャーがあったのかもしれないです。今日はチームがスピードを上げすぎたりミスが多くなった要因はそこにあるのかなと。
(個々の選手の良さは試合の中でチームとして出せるようになってきましたか?)
普段の練習で見ていても、彼女達が秘めている出せない能力はすごくあるんですよ。でも、試合で出せない。スイッチをこちらで押さないと、今はできないんですよ。それは、怒ることだったり(メンバーを)外すことかもしれない。そうなって初めて、彼女達は力が少し出せるようになる。でも、スイッチを持っているなら自分で押さないと。スイッチが何なのかは人それぞれです。メンタル的な問題もあるし、『サッカー好きなの?』とか『本当に勝ちたいと思っているの?』とか『サッカーを楽しんでいる?』とか、聞くことで押されるスイッチもある。そういうものが、何にもないならまだいいんです。こちらが染めていけばいいんですから。でも、小さくてもいろんな思いがそれぞれにあって、それに頑固にこだわりすぎて変わっていけない。今はそういうのをすごく感じていて、今このチームが一皮むけないといけないところです。でも、変わったこともあります。今までは若手がベテランに遠慮することが多かったんですが、それは徐々に消えてきた。今年に入って(杉田)妃和もそうですし、(守屋)都弥も自信を持ってやれるようになってきた。周りの選手がそれに気づけば、引っ張られていったりもするので。チーム内で競争して、刺激し合うことは一つの解決策かなと思います」(松田監督)

澤選手と海堀選手の引退、川澄選手の移籍と、主力が抜けていきチームの変化は小さくない中で、世界を経験したベテランと若い選手たちを融合させながらのチーム作りは簡単なことではないのだな、と実感させられます。

今季初めて、トップ(FW)のポジションをこなした京川舞選手。
「くさびを受けてからタメをつくるところと背後を狙うところのメリハリを意識しましたが、もっと背後を狙えたかなと。サイドでは見えないところから相手が来たりするので、半身で受けることや、間で受けることを常に意識しています。良い位置で奪えた時は攻撃の質も上がるので、もっと高い位置で奪っていきたいです」(京川選手)

スタミナという点では、中島選手と守屋選手の運動量とキレが光りました。守屋選手は特に終盤、長い距離をドリブルして作った決定機が素晴らしかったです。
「しっかり食べていても、2部練で体重が落ちてしまう」と話すのは中島依美選手。実質プロでサッカーに集中できる環境で、朝と午後の2部練習も可能なのは成長著しい若手には大きなアドバンテージですね。

一方、リーグ屈指の完成度を見せているベレーザも、さらなる進化を求めています。

「この大会はなるべく若い選手を経験させている中でも、負けていない。それは悪くないと思います。実戦で肌で感じる中で得るものは大きいので、たとえ半分(45分間)でもプレーするということはすごく大事です。今日は、前半から相手の勢いがあったし、後半の頭も勢いがあったので。ただ、それがずっとは続かないだろうという予想はあって、後半が勝負という狙いはあったので。うちは若くて走れる選手が多いのは強みです。
(4試合連続ゴールの植木選手の活躍ぶり)
今日も1回か2回チャンスはあるかな、と思いましたけれど、ああいう場面で決めるのはやはり『持っている』のかな。(ドリブルで2人を相手に仕掛けた場面について)怖いもの知らずで、すごくいいなと思います」

下部組織のメニーナと二重登録で出場している植木選手は、まだ16歳。前節までの3試合は残り10分間前後でゴールを決め、この日は20分間で2度の決定的なチャンスを迎え、うち1点を決めるという恐ろしい決定力を発揮してグループAの得点ランクトップに。

2試合連続で植木選手のゴールをアシストした阪口選手。
「ファーに美南が引っ張ってくれていたのが見えたので、ニアに速いボールを蹴ったら何かが起こるんじゃないかと思ったら、彼女がやってくれました。ボールを持った時に分かりやすく後ろに動き出してくれるから、その点はすごく助かる動きです。今日は唯の(足を攣る)アクシデントもありましたが、(植木選手は)相手が疲れている時間帯に入ってくるので、パスは出しやすいです」(阪口選手)

植木選手のゴール後の表情も初々しくて良かったですね。ゴール後の表情や仕草も、選手の個性が表れるところだと思います
個人の力で決めたゴール(ドリブルからのシュートや、相手のクリアミスを見逃さずに決めるなど)なのか、味方のアシストから決めたゴールなのかによっても喜び方は変わると思いますが…
個人的には、阪口選手のゴール後の表情も好きです。自分のゴールと同じぐらいにアシストの喜びや、味方への祝福があります。試合を決定づけるゴールを多く決めている割に、自分のゴールへの喜びはかなり控え目な気もしますが
そういう瞬間にもチーム力が表れるものだと思います。

また、足を攣ってしまった長谷川選手ですが、ポジションにとらわれずにゲームを作るという点で、前半は運動量で群を抜いていたと思います。また、サイドバックの有吉選手は勝負どころを見極めたプレスやキラーパスなど、攻守に渡って効いていました。また、ファーストディフェンダーとして素早い切り換えを見せ、シュートの意識も高かった籾木選手。

「ボールを奪われた後はすぐ切り替えて相手を囲むことができれば、リズムができるので、まず自分が守備にいって、剥がされても2度追いすることは常に心がけています。守備は狭い方に追い込むことを心がけています」(籾木選手)

代表で一緒にプレーすることも多い2チームは選手間の交流も多く、試合後はお互いを意識したユニークなコメントも多くなります。

たとえば、先制ゴールを決めた田中明日菜選手は、同じ関西出身で小~中、TASAKI、代表と長く共にプレーする阪口選手を「師匠」と慕っているのは有名な話ですが。その阪口選手が今季、CKからゴールをかなり決めていることについて

「めっちゃ意識しています!(笑)」

と目をキラキラさせていました。それを受けて、阪口選手。

「その割には私にマークついていませんでしたね?(笑)でも、気迫は感じましたよ。INACの守備の集中した感じが、いつもやっているチームとは違うなと感じました。だからこそその上をいって決めたかったんですが。怒濤のCKの場面CKが続いた場面)で決めたかったですね」

と。
ちなみに田中(明)選手は、試合前に、シアトルの川澄選手が2点を決めたことを知ったそうで、

「負けていられへん!と思って。絶対に点を取ってやろうと思っていました。1得点なので悔しいです真顔

と。明日菜選手はCBで川澄選手はFWですが、ポジションは関係ないそうです(笑)

お互いにこういう刺激を与え合えるのも、良いことですねメラメラ


花花花花花



グループAの他会場では、ジェフLがコノミヤに2-0で勝利し、3位に。グループBはベガルタLが新潟Lを1-0で下し、首位。浦和Lは長野を4-3で下して2位に。

敗れたものの、横山選手が今季2度目のハットトリックを決めて、カップ戦の得点ランクを独走中(4試合で7得点)です。
また「見に行きたい」と思わせる選手が今季は何人かいて、週末が楽しみですデレデレ

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